![USAIDとは?](https://coki.jp/wp-content/uploads/2025/02/usaid-image.jpg)
トランプ政権がアメリカの国際開発局(USAID)の解体を進めている。この動きに対し、米政府職員の労働組合が訴訟を起こし、連邦地裁が一部差し止める事態となった。
本記事では、USAIDの役割、トランプ政権の狙い、そして解体の影響について詳しく解説する。
USAIDとは? その役割と意義
国際支援を担うアメリカ政府機関 USAID(United States Agency for International Development)は、1961年にジョン・F・ケネディ大統領によって設立された。冷戦時代における国際的な影響力を高めるため、また発展途上国の支援を目的として創設された。
活動の範囲
USAIDは60カ国以上に拠点を持ち、年間約1万5000件のプロジェクトを200カ国以上で展開している。その活動は、次のような広範な分野にわたる。
- 人道支援(紛争・災害時の食糧・医療支援)
- 貧困削減(教育や雇用支援)
- 感染症対策(エイズ、マラリア、エボラなどの予防と治療)
- 環境保全(気候変動対策、持続可能な農業支援)
- 民主主義支援(選挙監視、法制度強化)
年間予算と国際的な影響
政府データによると、アメリカは2023年に国際援助として680億ドル(約10兆円)を支出しており、そのうちUSAIDの予算は400億ドル以上にのぼる。
これは、アメリカの年間政府支出総額の0.6%に相当し、イギリスの対外援助額の約4倍にあたる。
なぜトランプ政権はUSAIDを解体しようとしているのか?
「アメリカ・ファースト」と対外支援削減
ランプ大統領は、就任以来「アメリカ・ファースト」の方針を掲げ、国外への財政支出を減らす姿勢を強めてきた。USAIDはその象徴として、度々標的とされてきた。
トランプ氏とマスク氏の批判
トランプ大統領は、USAIDの支出が「納税者の負担になっている」と主張し、組織の廃止を訴えている。側近のイーロン・マスク氏もUSAIDについて自身のSNSで、「USAIDは腐敗しており、修復不可能だ」と批判し、政府効率化の一環として閉鎖を推し進めている。
USAIDの解体計画と労働組合の反発
職員削減と組織統合
トランプ政権は、USAIDの職員約1万人のうち、290人を除く全員を解雇・休職処分とする計画を進めている。加えて、USAIDを国務省の一部門として統合し、独立機関としての機能を事実上廃止する方針を打ち出している。
労働組合の訴訟
この動きに対し、米政府職員の労働組合「AFGE」と外交職員団体「AFSA」は、ワシントンの連邦地裁に訴訟を提起。「USAIDの解体は憲法違反であり、議会の承認なしには不可能だ」と主張している。
連邦地裁の一時差し止め命令
2025年2月7日、ワシントンの連邦地裁は、USAID職員2200人の有給休暇命令を一時差し止める判決を下した。これは、労働組合の請願を受けたものであり、今後の司法判断が注目される。
USAIDが解体した場合の影響とは?
国際支援の停滞
USAIDは、ウクライナの戦争被害者支援やアフリカの感染症対策など、幅広い国際援助を行っている。仮にUSAIDが解体されれば、こうした支援が滞り、数百万人の生活に影響が出る可能性がある。
米国の国際的な影響力低下
アメリカは、世界最大の国際援助国として外交的影響力を確保してきた。USAIDの縮小は、同盟国との関係に影響を与え、中国やロシアといった国々が国際支援の主導権を握る可能性もある。
国家安全保障への影響
民主党議員や元USAID長官らは、USAIDの削減が国家安全保障を危険にさらすと警告している。過去には、シリアの刑務所で米国の援助が停止した結果、数千人のイスラム過激派戦闘員が解放される事態が発生したという。
今後の展望
トランプ政権は今後もUSAIDの解体を進める意向を示しており、議会や司法の判断がカギを握る。連邦地裁が労働組合の訴えを認めた場合、トランプ政権の計画は頓挫する可能性がある。一方で、共和党が議会多数を維持する限り、USAIDの大幅な縮小は避けられないだろう。
また、米国の国際的な立場がどのように変化するのか、今後の動向に注目が集まる。