フジテレビは先日行った会見が、一部のメディアに限定され、しかもテレビカメラ非同席であったことに対する批判を受け、改めて「やり直し会見」を実施した。透明性や説明責任を果たすべきテレビ局としての姿勢が問われており、視聴者や取引先からの信頼回復が急務となっている。
港前社長が語った責任と謝罪
このやり直し会見の冒頭、港浩一前社長、嘉納修治会長が辞任を発表。会見の登壇者は他に、フジ・メディアHDの金光修社長、遠藤龍之介フジテレビジョン取締役副会長(日本民間放送連盟会長兼務)の4名。
一連の不祥事で視聴者や広告主、取引先に与えた多大な迷惑と心配について深く謝罪した。さらに、フジテレビ代表取締役社長とフジメディアホールディングスの取締役を辞任した経緯に触れ、「ガバナンスを機能させられなかった責任は私にある」と重い口調で反省の弁を述べている。
港氏によると、この不祥事には「人権への認識不足」が根底にあり、当事者である女性の心身のケアやプライバシー保護を最優先にするあまり、適切な社内連携や番組出演継続の判断が不十分だったという。第三者委員会の調査対象となっていることを認め、全面的な協力で真相究明と再発防止に努める姿勢を示した。
清水新社長の就任表明と信頼回復への決意
翌日付でフジテレビ新社長に就任する清水健次氏も同席し、「信頼回復なくしてフジテレビに未来はない」として、改めて視聴者をはじめ広告主や出演者、制作会社など幅広い関係先に謝罪した。清水氏は「人権は誰もが持つ基本的な権利であり、これを侵害する行為は決して許されない。再発防止策の徹底と厳正な対処を進める」と強調。社員一同の意識改革とガバナンス強化が急務であることを訴えた。
同氏は「フジテレビには情熱をもって番組づくりに臨む仲間が大勢いる。ゼロからスタートする覚悟でこの危機を乗り越え、新たな未来を築く」との意欲を示し、社内外に向けて協力と支援を呼びかけた。
清水賢治新社長とは
新社長となる清水賢治(しみず けんじ)氏は、1961年1月3日生まれのアニメプロデューサー・実業家で、慶應義塾大学法学部を卒業後、1983年にフジテレビへ入社した。編成局編成部に配属されるや否や、その手腕を発揮し「Dr.スランプ アラレちゃん」「ドラゴンボール」「ちびまる子ちゃん」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「幽☆遊☆白書」など、数多くの大ヒットアニメを手がけてきた。
さらに、ドラマ「ショムニ」「美味しんぼ」「容疑者Xの献身」「世にも奇妙な物語」などの人気作にも携わり、プロデューサーや企画担当として成功を収めている。
編成の要職を歴任した後、出向先のスカパー・ウェルシンクでも制作に携わるなど、その活動領域は幅広い。2012年にメディア推進局長、2013年に総合開発局長、2014年にフジテレビ執行役員総合開発局長を歴任。2022年にはフジ・メディア・ホールディングス専務取締役に就任し、2025年1月28日付でフジテレビ代表取締役社長に就任することが決定している。
国内アニメ史を語る上でも欠かせない人物とされ、数々のアニメ・ドラマ作品での功績が認められている。
第三者委員会の設置と独立調査の狙い
続いてフジテレビおよびフジメディアホールディングスは、23日に両社の臨時取締役会を開き、第三者委員会の設置を正式決定したと発表した。第三者委員会は日本弁護士連合会のガイドラインに基づき、利害関係をもたない弁護士のみで構成され、3月末をめどに調査報告を提出する予定だという。
フジテレビ関係者によれば、当初は社内調査案もあったが、「身内による甘い評価に陥るリスクが排除できない」という理由から、独立した委員会を組織するに至ったとのことだ。23日の会見までは第三者委員会の設置が明確に示されず、「曖昧な説明が不信感を招いた」とも謝罪した。
不祥事の詳細:女性への配慮不足とガバナンス問題
不祥事の発端は、2023年6月に中居氏と呼ばれる人物が女性へ不適切な行為をした可能性があるという報告だった。フジテレビ側は当初、女性の体調面の回復を最優先とした結果、社内共有や正式な調査が後手に回ったと説明。さらに、その女性が番組復帰を強く希望していたことや、事案の性質上「極めてセンシティブな問題」であると判断し、公表を極力避けようとしたとしている。
しかし、中居氏が司会として出演する番組を継続させたことは、結果的に「問題を軽視しているのではないか」との批判を浴びた。フジテレビは「人権侵害の疑いがある以上、速やかに調査と再発防止策を検討すべきだった」と今回の会見で認め、「人権意識の不足やガバナンスの欠如」といった組織的問題が背景にあったことを重ねて謝罪した。
編成幹部Aと中居氏の関係報道、社内調査結果を説明
一部週刊誌報道によると、社員Aが中居氏と女性の会食を取り持った可能性が指摘されている。これについてフジテレビ社内で聞き取り調査を行ったところ、社員Aは当該食事会の設定や参加を否定しており、LINEやメール履歴からも関与を示す証拠は見当たらなかったという。
ただし、社員Aが同じ年に中居氏所有のマンションで行われたバーベキューに女性を誘っていた事実は認められており、「タレントや関係者との会食の在り方を十分に検証してこなかった責任がある」として、今後の第三者委員会による調査に全面協力する方針だ。フジテレビおよびフジメディアホールディングスは「利害関係を持たない委員らによる客観的な事実解明と再発防止策の提言を待つ」としている。
再発防止策とグループ全体への影響
港氏は「人権コンプライアンスの徹底と企業風土の刷新を図るため、第三者委員会の提言を踏まえた上で、できる限りの施策を講じていく」と表明。新社長となる清水氏は「視聴者や広告主をはじめ、多くの方の信頼を取り戻すまでの道のりは厳しいが、フジテレビの未来のためにも避けて通れない」と語った。
すでにCM出稿の停止や見直しを検討する広告主も出ているとの情報もあり、グループ全体に不安が広がっている。ただし、フジテレビ経営陣は「独立企業としての各社の運営を尊重してほしい」と強調し、混乱を最小限に食い止めたい考えだ。
後編に続く:記者たちからの質疑応答へ
この日のやり直し会見は冒頭の謝罪と経緯説明で終了し、続いて行われた記者との質疑応答はさらに具体的なやり取りとなり、現在も進んでいる。
後編では、その詳細について取り上げる予定である。今後、フジテレビが第三者委員会の調査結果をどのように受け止め、どのような具体策を打ち出していくのか、引き続き注目が集まる。後編に続く。