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「経営のプロ」のハズの経営コンサルタントが倒産してしまう理由

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プロなのに経営できない理由

2024年、「経営コンサルタント業」の倒産件数が過去最多の154件に達したことを1月10日、東京商工リサーチが開示した。この事実は、一見矛盾しているように映るかもしれない。経営のプロフェッショナルとして顧客企業を支えるはずのコンサルティング会社が、なぜ自らの経営に失敗してしまうのか。その背景を探ると、コンサル業界が抱える構造的な課題が浮かび上がる。

参入障壁の低さが招く競争の激化

コンサルティング業界は参入障壁が低い。多くの場合、資格や許認可が不要で、個人レベルの事業としても始めやすい。このため、特に近年は新規参入が相次いでいる。しかし、参入の容易さは競争の激化を招く。顧客側のニーズは複雑化しており、事業再生、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援、M&A支援といった専門性が求められる分野でのサービス提供が必要だ。

単なる経営アドバイスではなく、具体的な成果を示すことが求められる時代になっている。

専門性の欠如が淘汰を加速

こうした高度な専門性に対応できないコンサル会社が淘汰されているのが現状だ。東京商工リサーチのデータによると、2024年に倒産したコンサル会社の約66%が「不況型倒産」に分類される。これは、景気低迷や顧客ニーズの変化に対応しきれず、事業が立ち行かなくなったケースが多いことを意味する。

顧客の課題に適切に対応できないコンサル会社は、次第に市場からの信頼を失い、契約が途絶える。その結果、資金繰りが悪化し、倒産に追い込まれる。

属人的な経営体制のリスク

加えて、経営コンサルティング業界には属人的な要素が強く、事業の成否がコンサルタント個人の経験、人脈、カリスマ性に依存するケースが多い。特に小規模なコンサル会社では、優秀な人材を確保し、育成する余裕がないため、代表者一人の能力に依存することが多い。

その結果、代表者の健康状態やキャリアの変化が会社の業績に直結するリスクがある。

具体事例:急成長が招いた失速

実際に2024年に破産手続きを開始した北浜グローバル経営株式会社は、中小企業向けの補助金申請支援を手がけ、事業を拡大していた。しかし、急成長に伴い人件費などの経費が膨らみ、資金繰りに行き詰まった。同社の負債総額は約20億5,300万円に上り、2024年のコンサル会社の倒産事例としては最大規模となった。

小規模事業者が直面する課題

また、倒産したコンサル会社の多くは、従業員数が5名以下の小規模事業者であることが特徴だ。こうした企業は、資産背景が乏しく、経営基盤が脆弱であるため、売上不振に耐える余力が限られている。

さらに、近年はデジタル技術の進展によって、顧客企業自らがデータ分析や戦略策定を行うケースが増え、コンサル会社に依存する必要性が薄れてきている。これもまた、従来型のコンサル会社が淘汰される要因の一つだ。

今後の生存戦略

業界の専門家は、今後のコンサルティング業界で生き残るためには、以下の要素が鍵になると指摘している。第一に、特定の分野で高い専門性を持つこと。第二に、顧客企業の経営陣と信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを構築すること。そして第三に、デジタル技術を駆使し、顧客に即した具体的なソリューションを提供できる体制を整えることだ。

未来予測:AIとデジタル技術がコンサル業界を変革する

コンサルティング業界の未来を考える上で、AI(人工知能)とデジタル技術の進展は避けて通れないテーマだ。特に、AIは今後のコンサル業務の効率化と精度向上に大きな影響を与えると見られている。

例えば、AIを活用したデータ分析ツールは、従来は専門家が時間をかけて行っていた作業を瞬時に処理し、精度の高いインサイトを提供できるようになる。これにより、コンサル会社は顧客企業の課題をより迅速かつ的確に把握し、解決策を提示できるようになる。

また、チャットボットや自動化されたレポート作成ツールの導入により、基本的なアドバイス業務が自動化され、コンサルタントはより高度な課題解決に集中できるようになる。これにより、業界全体の生産性が向上し、顧客に対する付加価値も高まるだろう。

しかし、AIの導入によって競争は一層激化する。AIを活用できる企業とそうでない企業の間で、業界内の格差が広がる可能性がある。特に、小規模なコンサル会社がAI導入の遅れによって市場から取り残されるリスクは無視できない。

今後のコンサル業界では、単に専門知識を提供するだけでなく、AIを活用して具体的な成果を顧客に示すことが重要になる。業界の未来は、いかにして最新技術を取り入れ、自社の競争力を強化するかにかかっている。

実績と特色が鍵を握る

結局のところ、「経営のプロ」とされるコンサル会社でも、自らの経営課題に対応できなければ生き残れない。顧客ニーズが高度化する中で、どのように自社の競争力を強化するかが、コンサル業界の未来を左右する。実績と特色を打ち出せない企業は、厳しい淘汰の波に飲み込まれていく運命にある。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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