フジテレビの人権尊重の姿勢はジャニーズ問題を無視し続けた頃と何一つ変わっていなかった
中居正広氏の女性トラブル報道が波紋を広げている。27日、CM降板や番組収録中止といった影響に加え、被害者女性とされる元フジテレビアナウンサーに関する港浩一社長の発言の矛盾が発覚。
フジテレビの対応の難しさが浮き彫りになっている。
女性トラブル報道のおさらい
事の発端は、2024年12月19日発売の「女性セブン」によるスクープ。記事によると、2023年に中居氏と芸能関係者の女性との間でトラブルが発生し、中居氏が約9000万円の解決金を支払ったという。中居氏の代理人弁護士はトラブルの存在と示談金の支払いを否定していない。
広がる影響:CM降板、番組収録中止
この報道を受け、12月27日、ソフトバンクは迅速な対応を見せた。当初は静観の構えを見せていたものの、SNS上での批判の高まりを受け、中居氏が出演する「ペイトク店長」篇のCM放送を中止。反町隆史氏が出演する「スマホデビュー」篇など、他のCM素材に差し替えられた模様だ。
さらに、既に撮影済みだった中居氏出演の新CMについても、放送を見送る方針を固めたと報じられている。日刊ゲンダイの取材に対し、ソフトバンクは「今後のCMは非公表」「今回の報道についてコメントする立場にない」と回答している。
TBS系「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」「THE MC3」の収録も中止となっている。今後の放送も不透明な状況だ。
港社長の虚偽説明疑惑
被害を受けた女性は、文春オンラインの取材に対し、中居氏を「加害者」と呼び、フジテレビにも責任があると主張。
SNSでフジテレビの元女性アナウンサーと噂されるこの女性は、事件が起きてからSNSで体調不良により仕事を休んでいることを明かしていたが、フジテレビが社をあげてこの問題を隠蔽しようとした説が浮上している。というのも、同社の港浩一社長は2023年10月27日の定例会見でこの女性アナウンサーについて「快方に向かい、復帰する予定」と説明していたのだ。しかし、いまになれば、女性はその後も復帰できずに苦しみ、そのまま2024年8月にフジテレビを退職しているワケである。
港社長が昨年10月の段階で女性アナウンサーの情報をどこまで知って語ったのかは定かではないが、とても快方に向かっているとは思えず、フジテレビの虚偽説明疑惑が浮上したといえる。
また、昨年は中居氏が敬愛したジャニー喜多川の性加害問題が発覚し、社会問題化していた時期である。港社長は同日の会見のなかで、ジャーニーズ問題へのテレビ局の対処について、以下のように言及してもいた。
「再発防止特別チームの調査報告書で「メディアの沈黙」が指摘されたことを受け、この問題に対する当社の検証番組を、『週刊フジテレビ批評』の特別版として、先週土曜日に放送した。
今回の調査で、性加害、特に男性に対する性加害についての認識が著しく低かったことが分かった。また、旧ジャニーズ事務所に対する気遣いや配慮などが報道にあったことも認めざるをえない。未成年に対する性加害という重大な問題、人権問題に対する感度の鈍さは、被害に遭われた方々の心情を考えると、報道機関として深く反省している」。
いまとなってみれば、何を深く反省したのかを聞いてみたいものだ。
フジテレビ社内におけるタレント接待の実態
元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏は、「ピンズバNEWS」の報道で、フジテレビ社内ではタレント接待が慣習化していると他メディアで証言。「大物タレントと仲良くなれるかで出世が決まる」とし、自身もスポンサーへの接待を強要された経験があると明かしている。
SNS時代の危機管理の難しさ
元テレビ東京の社員で広報専門家の下矢一良氏は、中居氏の危機対応は法的には万全でも、SNS時代には不十分だと指摘。スポンサーや世論への配慮の必要性を強調し、「被害者が納得したか」「一般の理解を得られるものか」が基準になったと分析している。
また、下矢氏は、港社長が問題を把握していた可能性が高いと推測。「社長も知っていた」となれば引責辞任は避けられないとし、フジテレビの広報対応は非常に困難な状況にあると指摘する。
フジテレビ、そして中居氏の今後は
中居氏の女性トラブルは、CM降板や番組収録中止など、既に大きな影響を及ぼしている。今後の芸能活動は不透明な状況だ。また、フジテレビも港社長の虚偽説明疑惑やタレント接待問題で厳しい立場に置かれている。この問題が、今後の芸能界にどのような変化をもたらすのか、注目が集まっている。
じつは、フジテレビの港社長は、先に紹介した昨年の定例会見で、テレビ局の使命と社会的責任について以下のように語っていた。
「番組出演などにおいて、魅力あるタレントが多く所属する旧ジャニーズ事務所に対して徐々に特別視するような空気ができあがっていたこと、それが性加害を見逃した背景にあることも否定できない。私たちテレビ局には、公共的使命と社会的責任がある。今回の検証を踏まえ、放送局としての使命と人権尊重のための責任を果たしていきたいと考えている。」
1年経ってわかったこと。フジテレビの人権尊重の姿勢はジャニーズ問題を無視し続けた1年前と何一つ変わっていないということだった。
フジテレビの港社長は次回の定例会見で何を語るのか。注視したい。