
稀代の経歴を持つ経営者が、AFPBB Newsの報道によると、日本経済の未来に警鐘を鳴らした。インド出身で、大手米菓メーカー・亀田製菓の会長CEOを務めるジュネジャ・レカ・ラジュ氏だ。
1984年に来日し、研究者としてキャリアをスタート。その後、数々の企業で要職を歴任し、2021年には亀田製菓のトップに就任した。同氏は、日本経済がかつての活気を取り戻すためには、マインドセットを変え、より多くの移民を受け入れるべきだと主張する。高度経済成長を遂げたかつての日本に憧れを抱き来日したジュネジャ氏。
しかし、近年の停滞に危機感を募らせているという。
「日本はハングリー精神を失った」
ジュネジャ氏は、日本経済の停滞の要因を「ハングリー精神の喪失」にあると12月15日のAFPBB Newsで分析している。
日本は、かつて世界を席巻した技術力と革新性は影を潜め、米国、韓国、中国の後塵を拝するようになった。1980年代後半には株式時価総額で世界のトップ10を日本企業が独占していたが、現在では1社もランクインしていない。
人口減少社会における労働力不足
高齢化と人口減少は、日本経済の大きな課題だ。今後50年で人口はほぼ3分の1減少すると予測されており、企業は深刻な労働力不足に直面している。ジュネジャ氏は、この問題の解決策として移民の積極的な受け入れを提言する。
「数の問題だけでなく、マインドセットや文化も重要だ。グローバル化が必要だ」と氏は報道で強調している。
移民政策の現状と課題
日本は近年、外国人労働者の受け入れを拡大しているものの、諸外国に比べれば依然として限定的だ。移民政策の転換には、社会統合、文化摩擦、財政負担といった課題も伴う。
総務省が発表した住民基本台帳人口動態調査によると、2024年1月1日時点の日本の人口は前年比86万人以上減少し、15年連続の減少となった。減少幅は過去最大だ。一方で外国人人口は332万人を超え、過去最大の増加幅を記録した。
外国人人材に対する期待と不安
ただ、SNS上では、移民受け入れに対する様々な意見が飛び交う。賛成派は、労働力不足の解消や経済活性化につながると期待する一方、反対派は治安の悪化や文化摩擦、社会保障の負担増などを懸念している。
実際に移民受け入れに積極的だった欧州各国でも、ここにきて移民・難民政策への風当たりは強くなり、右派政党の躍進に繋がっている。日本がこのまま安易に移民受け入れを進めることは欧州の二の舞になりかねない。慎重な姿勢が求められるのではないだろうか。
経済再生のカギを握るのは多様性だが……
ジュネジャ氏の提言は、日本経済が直面する課題を改めて浮き彫りにする。少子高齢化と人口減少が加速する中、移民の積極的な受け入れは避けられない選択となる可能性もある。多様性を尊重し、グローバルな視点を取り入れることが、日本経済再生の重要なカギとなる。このことを否定する人はいないだろう。ただ、現実は字義通り進むものでもない。
ジュネジャ氏が率いる亀田製菓は、「Rice Innovation Company」を掲げ、グローバル展開を加速させている。主力製品「柿の種」のインド版「カリカリ」の販売など、日本食の海外普及にも力を入れていることが知られている。
亀田製菓のように海外人材を巧みに活用し、企業価値の向上に成功する企業がある一方で、その試みに失敗し苦境に立たされる企業も少なくない。移民問題に関しては、先行する欧州各国が抱える深刻な現状を鑑みるに、一度踏み誤れば後戻りの難しい課題である。
ゆえに、その舵取りには冷静かつ慎重な判断が求められるだろう。