大和ハウス工業は13日、2025年4月から定年を65歳と67歳の選択制にすると発表した。労働力不足への対応が狙いだ。同日、報道各社のインタビューに応じた芳井敬一社長は「即戦力はすぐに採用できず、残ってもらうことに大きな意図がある」と述べた。給与や賞与は60歳までと同じ水準で、昇格の機会もある。同社は13年4月に定年を60歳から65歳に引き上げていた。
背景にある深刻な人材不足
大和ハウスは人材確保に向けて賃上げを続けてきたが、芳井氏は現状は業績に連動する賞与が年収に占める比重が大きいと指摘。今後、月給の比率を上げていく方針を示した。
高年齢者雇用促進法は、事業主に70歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入のいずれかの実施を求めている。多くの企業は再雇用制度を活用しているが、嘱託社員へと転換し賃金が大幅に引き下げられることが通例だ。大和ハウスは労働条件を引き下げずに雇用を延長し、他社への転職を防止しようとしていると考えられる。
70歳就業へ、企業の努力義務化進む
改正高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業機会確保のための努力義務が新設された。70歳までの定年延長、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、70歳まで事業主が実施・委託等をする社会貢献事業に従事できる制度の導入など、選択肢は多様化している。
SNSでは様々な意見が噴出
このニュースに対し、SNS上では様々な意見が飛び交っている。「60歳で定年したい」「動けるうちにリタイヤして余生を過ごしたい」といった声がある一方、「70歳まで働ける選択肢が増えるのは良い」「雇用契約または業務委託契約の選択肢があると良い」といった意見も見られる。
65歳以上就労者数の増加と人生100年時代
総務省の「労働力調査」によると、65歳以上の就労者数は年々増加し、2021年には912万人で過去最高を更新した。金融広報中央委員会の調査では、老後の生活資金源として「就業による収入」を挙げた割合が増加傾向にある。高齢者が働くことで、人手不足の解消、社会保障制度の担い手の増加といったメリットがある。
高齢者雇用の新たな形
大和ハウス工業の定年延長は、人生100年時代における高齢者雇用の新たな形を示すものだ。今後、他企業も追随する動きが出てくることが予想される。多様な働き方が求められる中、企業は従業員のニーズに応じた雇用制度の構築が求められている。