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「FUNAI」ブランド消滅 船井電機を破産に追い込んだ「負の連鎖」

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船井電機のHP
船井電機のHPより

かつて北米市場で高いシェアを誇った船井電機が10月24日、東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。主力のテレビ事業が低迷する中、2021年に買収した脱毛サロン「ミュゼプラチナム」が巨額の広告費未払いを抱え、グループ全体を揺るがす事態に発展。これが決定打となり、資金繰りが悪化していた船井電機はついに力尽きた。

本稿では、栄光から一転、破綻へと至るまでの船井電機の凋落の軌跡を辿り、その原因を紐解いていく。

かつての「世界のFUNAI」 栄光と挫折

1951年に創業した船井電機は、トランジスタラジオの製造販売を皮切りに、ビデオデッキやDVDレコーダーなど、時代のニーズを捉えたAV機器を次々と世に送り出してきた。北米市場では、OEM供給を通じて低価格帯で高いシェアを獲得。「世界のFUNAI」として、その名を知られる存在となった。

しかし、2000年代に入ると、韓国・中国メーカーの台頭により、価格競争が激化。船井電機は苦境に立たされることになる。活路を見出そうと、国内ではヤマダ電機と組んで「FUNAI」ブランドの液晶テレビを展開するも、販売は伸び悩んだ。

迷走の始まり 脱毛サロン「ミュゼ」買収の誤算

業績が低迷する中、船井電機は2021年、出版事業などを手がける秀和システムホールディングス傘下に入る。そして、再生の切り札として期待されたのが、秀和システムホールディングスが買収した脱毛サロン「ミュゼプラチナム」だった。

皮肉にも、ミュゼプラチナムは巨額の広告費を投じて知名度を上げていた。電車内や駅構内など、至る所で広告を目にした人も多いだろう。しかし、その一方で、顧客とのトラブルや強引な勧誘など、負の側面も囁かれていた。

結果的に、この買収は、船井電機を破滅へと導く「負の連鎖」の始まりだった。ミュゼプラチナムは、すでに経営不振に陥っており、多額の広告費未払いを抱えていたのだ。

内部統制の甘さが露呈 破綻への「負の連鎖」

船井電機HPのニュース
24日現在、更新がされていない。社内の動揺が伺える。船井電機のコーポレートサイトより

ミュゼプラチナムの広告費未払い問題は、やがてグループ全体を揺るがす事態へと発展する。2024年に入ると、広告代理店が、連帯保証人である船井電機に対して、約22億円の債務履行を求める訴訟を起こす。さらに、船井電機は、この訴訟とは別に、ミュゼプラチナムへの広告費支払いを求める訴訟も起こされており、経営はますます窮地に追い込まれた。

一連の騒動の中で、船井電機の内部統制の甘さも露呈した。役員交代が相次ぎ、経営体制は混乱を極めた。親会社の秀和システムホールディングスも、効果的な支援策を打ち出せず、グループ全体を統治する力が欠如していたと言わざるを得ない。

船井電機破綻が突きつける教訓

今回の船井電機の破産は、かつての名門企業が時代の変化に対応できず、迷走の末に終焉を迎えた象徴的な出来事と言えるだろう。その背景には、多くの企業が直面する課題が浮き彫りになっている。

日本メーカーの国際競争力の低下は指摘するまでもない。かつて家電業界をリードした日本企業も、グローバル競争の波に呑み込まれつつある。技術力や品質の高さだけでは、生き残ることは難しく、変化への対応が遅れた企業は、市場から淘汰される厳しい現実を突きつけられている。

また、異業種進出の難しさも挙げられる。異業種への進出は、新たな収益源の確保や事業ポートフォリオの転換といった点で有効な戦略となり得る。しかし、異なる業界の特性やビジネスモデルを理解しないまま、安易に進出すれば、大きなリスクを伴うことを、今回の船井電機の事例は如実に示している。

企業統治の重要性も言えるだろう。企業統治の不備は、不正会計や経営判断のミスなど、企業にとって致命的な問題を引き起こす可能性がある。企業は、透明性と公正性を確保し、健全な経営を行うための仕組みを構築しなければならない。

「世界のFUNAI」として、一時代を築いた船井電機。その名は、家電業界の歴史に刻まれると同時に、企業経営における教訓として、長く語り継がれることになるだろう。

【船井電機の社員が受けた衝撃。破産後はどうなるのか?】(続報は以下の記事で)

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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