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【関西医科大】手術中にメーカー社員が患者の足支える 無資格X線問題で浮かぶ“医療現場の慣習”

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麻酔で眠る患者の身体に、医師でも看護師でもない人物が触れていた。

関西医科大学総合医療センターで発覚した、医療機器メーカー社員による“手術補助疑惑”。背景には、医療現場で長年続いてきた「立ち会い」という慣習と、密室化した手術室の危うい空気が見えてきた。

 

 

麻酔で眠る患者のそばで 誰も止めなかった手術室の違和感

手術室には、独特の静けさがある。

強い照明に照らされた空間で、医師たちは小さな声で指示を交わし、モニター音だけが一定のリズムを刻む。患者は麻酔で眠り、自分の周囲で何が起きているのか知ることはできない。

その閉ざされた空間での出来事が、今、大きな波紋を呼んでいる。

関西医科大学総合医療センターで2024年に行われた整形外科手術中、医療機器メーカー社員が患者の身体に触れ、医師を補助していた疑いがあることが明らかになった。

この問題を報じたのは朝日新聞だ。

朝日新聞によると、入手した複数の動画には、脊椎手術中とみられる場面で、医療機器メーカー「ニューベイシブジャパン」の営業担当者とされる男性が、患者の足を持ち上げたり、身体を支えたりする様子が映っていたという。

周囲には看護師らとみられる人物もいた。

つまり、その場では特段制止されることなく行われていた可能性がある。

 

「立ち会い」はなぜ行われるのか 医療現場の実情

今回、多くの人が疑問に感じたのは、「なぜメーカー社員が手術室にいるのか」という点だろう。

しかし、医療業界では、医療機器メーカーの担当者が手術室に入る“立ち会い”は珍しいことではない。

特に脊椎インプラントや人工関節などを扱う整形外科領域では、機器の構造や操作が複雑化している。メーカーごとに器具の仕様も異なり、新製品も次々と導入される。

そのため、営業担当者が手術室に入り、

「次はこの器具です」
「この角度で固定します」
「この部品を使います」

といった説明やサポートを行うケースは、以前から広く存在してきた。

ネット上でも、

「整形では普通」
「メーカーのほうが機械に詳しい」
「昔は珍しくなかった」

という医療関係者とみられる声が相次いでいる。

だが、今回問題視されているのは、“立ち会い”そのものではない。患者の身体に直接触れていた点だ。

 

「患者に触れた瞬間」 医師法違反の可能性

医師法17条では、「医師でなければ医業をなしてはならない」と定めている。

厚生労働省担当者も朝日新聞の取材に対し、

「医療従事者以外は診療の補助はできない。患者の身体に触れれば医療行為となり、医師法違反に当たる恐れがある」

と説明している。

つまり今回の論点は、“少し手伝っただけ”なのかどうかではない。

資格を持たない人物が、患者の身体に接触し、医療行為の一部を担った可能性そのものが問題視されている。

しかも手術中の患者は麻酔下にあり、自分の身体に誰が触れているのか確認することも、拒否することもできない。

だからこそ医療現場では、「誰が、どこまで行為を許されるのか」が厳格に区分されている。

その境界線が曖昧になれば、医療安全そのものが揺らぎかねない。

 

「動画が外に出た」という異常事態

さらに今回、医療関係者に衝撃を与えているのが、“手術室内の動画そのものが外部へ流出していた”という事実だ。

本来、手術室は極めて閉鎖性の高い空間である。患者情報や医療行為が含まれるため、撮影や映像管理には厳格な取り扱いが求められる。

しかし今回、朝日新聞が入手した動画には、メーカー社員とされる人物が患者の身体に触れている様子が映っていた。

つまり問題となる行為だけでなく、“その映像が外部へ流出していた”こと自体が、病院側の管理体制や内部統制に疑問を投げかけている。

ネット上でも、

「誰が撮影したのか」
「患者への説明はあったのか」
「なぜ動画が外部へ出たのか」

といった声が相次いでいる。

さらに朝日新聞は以前、ニューベイシブジャパン社長が社員らに対し、「違法行為の証拠写真を撮るな」とも受け取れるメールを送っていたと報じている。

メールでは、違反行為を撮影する行為について「姑息だ」「チームワークを乱す」といった表現も使われていたという。

こうした経緯もあり、今回の動画流出には、“内部告発”的な意味合いを感じる人も少なくない。

 

なぜ誰も止めなかったのか “慣れ”が生む危うさ

今回、多くの読者が最も強い違和感を覚えたのは、「周囲に人がいたのに、誰も止めなかったのか」という点ではないだろうか。

動画には看護師らとみられる人物も映っていたとされる。

つまり、その場では“異常”として扱われていなかった可能性がある。

ここに、医療現場特有の難しさがある。

手術室では、何よりも「手術を無事に終えること」が優先される。長時間に及ぶ整形外科手術では、現場は常に緊張状態だ。

その中で、

「慣れている人がやったほうが早い」
「この人のほうが機械を理解している」
「今は止めるより進めたほうがいい」

という“合理性”が優先される瞬間がある。

そして、その小さな例外が積み重なり、やがて“当たり前”へ変わっていく。

実際、コメント欄には、

「こういう行為は業界では普通」
「メーカーが透視装置を操作することもある」

という声も少なくなかった。

だが、“慣れている”ことと、“許される”ことは違う。

事故が起きていないからこそ、ルール違反が見過ごされ、常態化していく怖さもある。

 

無資格X線操作問題とのつながり

さらに問題を大きくしているのが、ニューベイシブジャパンをめぐる別の疑惑だ。

朝日新聞などによると、同社の営業担当者らは複数の病院で、無資格のままX線装置を操作していた疑いがあるという。

X線照射は診療放射線技師法で、医師や診療放射線技師などに限定されている。放射線は人体への影響も大きく、操作には専門知識が必要だ。

大阪府警はすでに同社本社などを家宅捜索しており、現在も慎重に捜査を進めている。

そして今回の“患者接触動画”も、その捜査過程で確認されたとみられている。

つまり今回の問題は、単なる一現場の逸脱ではなく、

  • 医療機器メーカーと病院の関係性
  • 手術室の閉鎖性
  • 医療安全
  • 内部統制
  • コンプライアンス意識

といった、医療業界全体の構造的課題にもつながっている。

 

「健康被害なし」では終わらない不安

関西医科大学総合医療センター側は、「本件に起因する健康被害は生じていないと判断している」と説明している。

もちろん、それは重要なことだ。しかし、多くの患者が不安を感じているのは、“結果”だけではない。

手術室は、患者が最も無防備になる場所である。その空間で、自分の知らない第三者が身体に触れていたかもしれない。

その事実自体が、医療への信頼を揺るがしている。

今回の問題は、「営業担当者が足を持った」という単純な話では終わらない。

日本の医療現場に残る“慣例”と、“密室化”した手術室の危うさを、社会に突きつけた問題として、今後さらに議論を呼びそうだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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