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顔が違う新千円札。通貨変造の罪か、AIフェイクか?真贋と法的問題を考える

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いたずらをされた千円札がXで拡散
画像出典:財務省HP

10日現在、Xに投稿された一枚の千円札の画像が波紋を呼んでいる。Xでの当該投稿によると、お釣りとして受け取ったというその紙幣は、本来の北里柴三郎の肖像の上に別の不自然な顔が上書きされているのだという。

果たしてこれは実物を加工した通貨変造の重罪か、それとAIフェイクか。
本稿では、ネット上の議論を紐解きつつ、本件に潜む法的リスクについて警鐘を鳴らす。

 

紛糾する法的解釈――紙幣の加工は無期懲役の重罪か

画像が拡散されるにつれ、Xのリプライ欄では、この加工された千円札の法的扱いについて激しい議論が交わされた。

あるユーザーが「イタズラどころか無期懲役の重罪」と指摘すれば、別のアカウントも「正規の紙幣を加工したなら通貨変造罪にあたる。極めて重い罪だ」と警告を発している。これに対し、投稿主は「透かし、ホログラム等は確認した」「明日警察に届けさせる」と応じ、あくまで実在する紙幣であると主張している状況だ。

ここで冷静に法的な側面を整理しておく必要がある。X上で一部のユーザーが指摘している通り、日本において硬貨を意図的に傷つける行為は「貨幣損傷等取締法」によって明確に禁じられている。しかし、紙幣(日本銀行券)自体を単に破ったり落書きしたりする行為そのものを直接的に罰する法律は、実は存在しない。

かといって、紙幣への加工が許されるわけでは決してない。元の紙幣に手を加え、本物の紙幣として通用させる目的で外観を変える行為は、刑法第148条の「通貨変造罪」に問われる可能性がある。

さらに、別のユーザーが「市場に流通させ、不特定多数の手に渡らせた時点で事件性は認められる」と述べるように、変造されたと知りながらそれを支払いに使用すれば「偽造通貨等行使罪」が成立する。投稿主の家族のように、意図せずお釣りとして受け取っただけであれば罪には問われない。だが、不審な点に気付いた上で「警察や銀行に届けるのが面倒だから、自販機や他での支払いに使ってしまおう」と行使すれば、その瞬間に自らが重罪の対象に転落する危うさを秘めている。

 

不自然な境界線が示す違和感――これはAIによるフェイク画像なのか?

一方で、この騒動にはもう一つの見逃せない視点が存在する。それは「そもそもこの画像自体が、デジタル上で作成されたフェイク画像ではないか」という疑念である。

リプライ欄を注意深く観察すると、あるユーザーが「拡大してみると、明らかに顔の部分に不自然に貼り付けられていることがわかる」と冷静な画像分析を投稿している。また、他のアカウントからも「AI画像ではないか。本当の話なら大事件だが、ネタだとしたら悪質なフェイクニュースの拡散になりヤバい」と、本質を突く懸念が示されている。

昨今の生成AI技術や高度な画像編集ツールの進化は凄まじく、本物の新札の画像に別の顔を違和感なく合成することは、もはや専門家でなくとも容易に行える。投稿主は「本物のお札に落書きが貼り付けてある」と物理的な加工を主張しているが、写真の光源と顔部分の影の落ち方のズレ、あるいは背景の精緻な模様と顔の境界線の不自然さから、デジタル上で生成されたフェイク画像である可能性は十分に捨てきれない。

仮にこれが、SNS上でのインプレッション(表示回数)を稼ぐことで得られる収益を目的とした、いわゆるインプ稼ぎのためのフェイク画像であった場合、事態は別の深刻さを帯びる。国家の信用を担保する通貨に対して、社会的な不安や混乱を煽るような虚偽の情報を拡散する行為は、場合によっては「偽計業務妨害罪」などに問われる可能性もゼロではない。

 

私たちは情報とどう向き合うべきか――求められる冷静な対処

この騒動が我々に突きつけているのは、紙幣に対する悪質なイタズラへの怒りだけではない。真偽不明のショッキングな画像が、あたかも事実であるかのように瞬く間に拡散し、消費されていく現代のSNS社会の脆弱性そのものである。

X上では複数のユーザーから「銀行で無料で鑑定してもらえる」「警察に直接行くと没収されて損をするから、先に銀行に行くべきだ」といった実務的なアドバイスや憶測が入り乱れている。しかし、我々が最も警戒すべきは、確証のない情報に踊らされ、義憤に駆られて安易に「リポスト(拡散)」ボタンを押してしまうことなのかもしれない。

もし、読者の皆様が実際にこうした不自然な紙幣を受け取った場合は、決して支払いに使用せず、速やかに最寄りの警察署、または日本銀行の本支店に相談していただきたい。実物であれば、指紋などの証拠を保護するため、必要以上に触れないことも重要だ。

そして同時に、SNS上で人目を引くセンセーショナルな画像を目にした際は、一度立ち止まる冷静さが不可欠である。「これは本当に現実に起きたことなのか」「AIによる精巧なフェイクではないか」。自ら疑義を挟むリテラシーを持たなければ、我々自身が意図せずフェイクニュースの加担者となり、社会を混乱させる一翼を担ってしまう。通貨の変造が国家の根幹を揺るがす重罪であるのと同様に、真実を歪めるフェイク情報の安易な拡散もまた、社会の信頼基盤を破壊する凶器になり得ることを、我々は深く肝に銘じるべきである。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、エンタメ関係が多め。

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