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参政党の名前を使った『スイミー』無断改変、版元・好学社が異例の抗議声明

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参政党 「スイミー」無断利用で好学社が公式声明
Xに投稿されたとみられる画像。黒塗りされた部分は大きな魚の絵と本文。

世代を超えて読み継がれる児童文学の金字塔が、露骨な政治プロパガンダの道具としてSNSの波間に放り込まれた。オランダ出身の絵本作家レオ・レオニ氏が作画し、詩人の谷川俊太郎氏が名訳を施した絵本『スイミー』の意匠が、国政政党「参政党」の宣伝と思われる目的で無断模倣された問題である。

版元である株式会社好学社は8日、自社の公式Xを通じて「一切許諾を行っていない」とする抗議声明を発表した。義務教育の教材としても親しまれる名作の無断利用に対し、SNS上では怒りと波紋が広がっている。

 

参政党カラーに染められ、神谷宗幣代表の顔が合成された「名作」

問題の発端は、XやThreadsなどのSNS上で拡散された一枚の画像だ。青い海を背景に、無数の小さな魚たちが集まって巨大な魚の形を作っている構図は、明らかに『スイミー』の象徴的なワンシーンの模倣である。画像を最初に作成・投稿したのは熱心な支持者なのだろうか、文脈から判断するに支持者による投稿である可能性が高い。

しかし、その中身は原著が持つ温かなメッセージとは似て非なるものだった。魚たちは一様に参政党のシンボルカラーであるオレンジ色に染め上げられている。さらに悪質なのは、本来であれば一匹だけ黒い魚であるスイミーが位置する目玉の部分に、同党の代表を務める神谷宗幣氏とみられる顔写真がコラージュされている点だ。

画像の四隅には党のロゴマークが配置され、「小さな声が、未来をつくる。一人ひとりが日本。」といった同党の政治的スローガンへと文章も改変されている。芸術性は失われ、ただの政治プロパガンダの道具として作り変えられた形跡がそこにはあった。

 

単なる無断使用にとどまらない「著作者人格権」の侵害と生成AIの懸念

事態を重く見たとみられる出版元の好学社は、8日午前10時30分に公式Xで「当社は版元として厳重に抗議するとともに、厳正に対処してまいります」と、法的措置も辞さない強い意志を示した。

この行為は、他者の作品を勝手にコピーする複製権や翻案権の侵害にとどまらない。作品の根幹をなす色彩を変更し、特定の政治家の顔写真を合成し、特定の思想を付加する行為は、著作者が意図しない形での改変を禁じる同一性保持権(著作者人格権)を真っ向から踏みにじるものだ。ファシスト政権下で迫害を受け、自由と多様性を愛したレオ・レオニ氏の作品に、特定の政治色を強制的に上塗りする行為は、著作者への冒涜に等しい。

さらに、この画像がもし昨今普及している生成AIを用いて作成されたものであるとしたら、別の問題も浮上する。主要な画像生成AIプラットフォームの多くは、利用規約で既存の著作権を侵害するコンテンツの生成を禁じている。仮にAIツールが用いられていた場合、テクノロジーの悪用という点でもモラルが問われることになる。

 

日本維新の会による『鬼滅の刃』パロディなど、繰り返される政治の無頓着

SNS上の投稿によると、コンテンツ業界で長く働くユーザーからは「仮に許諾申請を出しても、政治利用は『元コンテンツのイメージを損ないかねない』ため概ねNGを食らうのが常識だ」という声が上がっている。同時に、一政党に限らず、政治家全体がパロディやオマージュに対して無頓着であるとの警鐘も鳴らされた。

実際、政治の側が人気コンテンツの集客力にタダ乗り(フリーライド)しようとして物議を醸した例は過去にもある。記憶に新しいのは、日本維新の会の事例だ。吉村洋文副代表と、当時同党所属だった光本けいすけ尼崎市議会議員の顔写真が並んだ街頭ポスターでは、背景に人気アニメ『鬼滅の刃』を彷彿とさせる緑と黒の市松模様があしらわれ、登場キャラクターの名言を模した「心を燃やせ!」というキャッチコピーが大きく印字されていた。さらに党のロゴマークも同作のタイトルロゴを真似た円形デザインに改変されていた。

有権者の目を引くためとはいえ、クリエイターが心血を注いで生み出した世界観や意匠を、法的な配慮も倫理的な躊躇もなく政治活動に流用する軽薄さは、今回のスイミー騒動と同根のコンテンツリテラシーの欠如を示している。

 

『おおきなかぶ』が滅私奉公に利用された戦時中の歴史的教訓

児童文学の政治利用という点においては、歴史を振り返るとさらに背筋の寒くなる事実がある。ロシア民話『おおきなかぶ』の戦時利用だ。

「みんなで力を合わせてかぶを抜く」という内容で現在の小学1年生の国語の教科書にも掲載されているこの物語は、第二次世界大戦中の1941年(昭和16年)から日本の国定教科書(ヨミカタ)に掲載された。しかし、当時の戦時下において、この物語は「個人の力ではなく、集団(国家)のために一丸となって尽くす」という滅私奉公の精神を子供たちに植え付けるために都合よく解釈・利用された経緯がある。

「なかなか抜けない大きなかぶ」は困難な戦況や敵国に見立てられ、「小さなネズミ(子供や非戦闘員)まで力を合わせなければ勝利(抜くこと)は得られない」という戦意高揚の論理へとすり替えられたのである。「欲しがりません勝つまでは」といったスローガンと共に、純粋な物語が国家の戦争遂行という巨大なイデオロギーに飲み込まれた歴史的教訓だ。

 

政治は物語をどう扱うべきか。求められる対応は

今回の『スイミー』無断利用も、手法こそ現代のSNSに置き換わっているが、根底にある物語の勝手な意味づけと政治動員という点では共通する危うさを孕んでいる。多様性を重んじる作品が、特定の政党のプロパガンダに改変され消費されることへの嫌悪感は、SNS上の猛烈な批判となって表れている。

好学社の声明発表からまだ時間が経過していないこともあり、8日現在、参政党の公式アカウントや神谷宗幣代表からの本件に関する公式な見解は確認されていない。
(8日夜、公式Xアカウントより、「当該画像について、弊党は一切関与しておらず、制作・投稿・拡散等を依頼、指示、許諾した事実はありません。」という文言を含む発表があった)

参政党側が今後、この画像の出処や拡散の経緯について事実関係をどのように確認し、社会に対してどのような説明を行うのか。著作権に対する姿勢のみならず、表現というものにどう向き合うのか、その見識が問われている。

(5月9日 一部更新)

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、エンタメ関係が多め。

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