
東証スタンダード上場の「unbanked(アンバンク)」(旧第一商品)が、金地金取引を巡り約13億4000万円の売上債権を回収不能としている問題で、同社は3月2日、大株主や取引業者らに対し約14億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
突如として持ち込まれたオーナー案件、会議室でやり取りされた刻印のない61キロの金塊、そして実態のないダミー会社。外部弁護士による調査報告書が暴いた、上場企業を食い物にしたいびつな取引の全貌に迫る。
波乱の老舗企業を襲った「13億円金塊持ち去り」事件
東証スタンダード上場企業であるunbanked(東京)を、巨額の未回収トラブルが突如として襲った。同社は1972年に設立された第一商品株式会社を源流とし、主に金地金事業を営む企業である。過去には商品先物取引などでの不適切営業で顧客からの損害賠償請求が相次ぎ、2020年には大規模な不正会計が発覚するなど、波乱に満ちた歴史を持つ。
その後、ネット上でお金の借り手と貸し手をつなぐソーシャルレンディングを展開する「クラウドバンク」などを子会社とし、事業を再編。2024年に「UNBANKED」へ、そして2025年に現在の「unbanked」へと社名変更を遂げ、再出発を図ったはずであった。
しかし、同社で約61キロ分もの金塊が持ち去られ、13億円超の代金が支払われないという前代未聞の事態が発生した。
3月2日、同社は大株主や金塊の販売先とされる業者など計6法人と関係者8人を相手取り、約14億円の損害賠償を求める訴訟を起こすに至っている。「本件に関与した可能性がある者も訴訟提起した」と同社が息巻くこの事件の裏には、上場企業をむしばんだオーナー案件の生々しい内幕が隠されていた。
会議室で繰り返された密室の30分!手提げカバンで運ばれる「刻印なき金塊」
事の始まりは2025年7月、各種コンサルティング業を営むAkatsuki Capital Works株式会社がunbankedの株式を取得し、筆頭株主として出現したことにある。そして、大株主から業務遂行担当者として送り込まれたY氏という人物が、突如としてスクラップ品の金地金取引を持ちかけたようだ。
刻印のないスクラップ品の金地金は、盗品や密輸品である疑義を払拭できないため、投資家向けの販売業者が対象とすることは一般的ではない。しかし、Y氏は「オーナーが保証する」と強引に推し進め、社内でオーナー案件と呼ばれるこの不透明な取引がスタートしてしまったのだ。
昨秋、unbankedの会議室では、30分に満たない異常な取引が幾度となく繰り返されていた。午前9時半ごろ、取引先の男性らが金塊の入った手提げカバンを運び込み、卓上に並べる。それは1本約1キロもある刻印のない金塊だ。unbankedの担当社員がそれを一つずつ鑑定機で調べ、純度と重量を計測して写真を撮る。確認が済んだ金塊は、ほぼ同時にやってくる別の取引先の女性にすぐさま引き渡されるという手口だった。多いときには金塊の数が32本にのぼり、1回の売買額が7億円を超えることもあった。
unbankedは、Y氏の指定する仕入れ先と販売先の間で金塊を同日中に転売し、1グラムあたり110円ほどの差益を稼ごうとしていたのである。
姿を消した61キロの金塊と「伝書鳩」を自称する男!ダミー会社の実態とは
危うい均衡は11月に突如として崩れ去る。11月19日と20日に実施された最後となる2回の取引において、unbankedは仕入れ先であるe社から合計約61キロ分の金塊を買い取り、およそ13億5000万円を支払った。しかし、それを転売した販売先のc社から、期日を過ぎても約13億4000万円の代金がいっこうに支払われなかったのである。
取引を主導したY氏は、仕入先や販売先の選定から取引日時に至るまで、すべてAkatsukiのオーナーの指示だとし、自分は伝書鳩に過ぎないと言い逃れをしている。支払いが遅れた際も「オーナー側で承認作業が漏れていた」などと不可解な言い訳を繰り返すばかりであった。
驚くべきことに、未収金発生後にunbankedの取締役らがc社の本店所在地を訪ねると、そこはシェアオフィスであり、利用契約すら結ばれていなかったことが判明している。さらにc社代表者の住所を訪ねても、まったく別の人間が住んでいるというもぬけの殻の状態であった。
ずさんな与信管理が招いた悲劇と大株主の反論!泥沼化する裁判の行方
上場企業でありながら、なぜこのような巨額の詐欺的スキームを防げなかったのか。外部弁護士による調査報告書が指摘する最大の失態は、驚くほどずさんな与信管理である。
本件取引を開始するにあたり、数億円規模の売掛金が発生することが明白であったにもかかわらず、関係する役職員全員が自社に存在する与信管理規程を完全に失念していたのだ。そのため、販売先であるc社について実地調査や興信所を使った十分な信用調査が行われず、インターネット上の簡単な検索だけで巨額取引を開始してしまったのである。
取引開始後も、支払いの遅延や期限当日のギリギリの入金など、与信への懸念を抱かせる事象が幾度となく発生していた。にもかかわらず、unbanked側は取引を停止するどころか、自社グループの貸付金を繰り上げ返済させてまでこの危険な取引に資金をつぎ込んでいた。筆頭株主の提案だから不利益はないだろうという甘い認識が、最悪の結末を招いたと言わざるを得ない。
今回、約14億円の損害賠償を求めて提訴された大株主のAkatsuki側は、自社のホームページ上で「損害賠償義務を負う理由はないため、全面的に争う」と徹底抗戦の構えを見せている。上場企業を食い物にした未曾有の金塊トラブルは、法廷という新たなステージで泥沼の様相を呈し始めている。



