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「薬を渡して終わり」からの脱却。100坪の巨大ジム併設「サクラクリニック」が目指す、地域医療の“第3の役割”

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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クリニックの中に100坪ものジム。経営の常識を覆す、ある医師の挑戦

サクラクリニック 野田泰永院長
野田泰永院長(医療法人春陽会サクラクリニックより提供、以下同)

名古屋市天白区。閑静な住宅街の一角に、一見すると総合病院のような佇まいの建物がある。医療法人春陽会「サクラクリニック」だ。3階建ての堂々たる施設には、1階に内科・循環器内科を中心とした診療所、2階に介護保険適用の通所リハビリテーション(デイケア)、そして3階には100坪を超える巨大な運動施設「健康増進クラブ ファイト!」が広がっている。

医療・介護・運動をワンストップで提供するこの場所には、月間延べ1400人もの患者が訪れる。なぜ、個人のクリニックが巨大な「運動の場」を運営するのか。そして、地域の人々はこの場所にどのような価値を見出しているのか。循環器外科医としてのキャリアを持ちながら、「薬を出すだけの『お薬屋さん』にはなりたくない」と語る野田泰永院長に、27年にわたる挑戦について聞いた。

 

経営のセオリーを無視してでも作りたかった「完結型」の環境

地域医療の現場において、100坪ものスペースを運動施設に割くことは、経営のセオリーからすれば異端と言えるだろう。その広さがあれば、病床を増やして入院患者を受け入れることも、診察室を増設して回転率を上げることもできたはずだ。しかし、野田院長はあえてその「一等地」を、患者が汗を流すための運動施設にした。その背景には、彼が長年抱き続けてきた医師としての葛藤がある。

野田
「私は元々、心臓血管外科医として大学病院や国立病院で勤務していました。心臓や血管の手術というのは、命に直結する仕事であり、やりがいも大きい。しかし、開業医として地域医療に戻り、生活習慣病の患者さんと向き合う日々の中で、ある種の虚無感に襲われるようになったのです」

高血圧なら血圧を下げる薬を出し、糖尿病なら血糖値を調整する薬を処方する。次回の診察で数値が安定していれば、「お薬が効いていますね、このまま続けましょう」と言って診察を終える。標準的な医療行為として、それは決して間違いではない。しかし、野田院長は自問自答を繰り返した。「私は一体何をしているんだろう?これではまるで、薬を右から左へ渡すだけの『お薬屋さん』ではないか」と。

薬で見かけ上良くなっても、根本原因である生活習慣が変わらなければ、本質的な解決にはならない。「1日1万歩歩きましょう」「食事に気をつけましょう」とアドバイスをしても、次の診察で患者から返ってくるのは、「今月は暑くて歩けなかったよ」「一人だと続かないんだ」という言葉ばかりだったという。

「がんばれと伝えるだけの『言いっぱなしの医療』では、人は変われないと痛感しました。だったら、医師である私たちが環境を用意するしかない。それが、私がたどり着いた答えでした」

診察室でアドバイスを受け、その足で3階に上がって運動をして帰る。あるいは、診察がない日でもここに通って汗を流す。この「完結型の医療環境」こそが、野田院長が目指した「健康を創造する場所」の姿だったのだ。

健康増進クラブ「ファイト!」
 

スタッフも多能工化。組織としての厚み

この施設を支えているのは、ハード(設備)だけではない。そこで働く人の配置にも、野田院長の経営哲学が反映されている。サクラクリニックには、国家資格を持つ管理栄養士が常駐しているが、彼女たちの役割は単なる栄養指導にとどまらない。中には、栄養士の資格に加え、「健康運動指導士」という運動指導のプロフェッショナル資格を併せ持つスタッフもいるのだ。

医師による医学的な管理、管理栄養士による食事のアプローチ、そして健康運動指導士による身体機能の改善。これらがひとつのチームとして機能することで、患者一人ひとりに最適な健康へのルートを提示できる。人材を単なる機能として扱わず、その可能性を広げることで組織全体の付加価値を高める。サクラクリニックの強さは、人への投資にも表れている。

 

患者の声が気づかせた「コミュニティ」としての真価

順調に利用者数を伸ばし、地域の健康拠点として定着していたサクラクリニックだが、数年前、施設の存在意義を問い直される出来事があった。感染症対策の一環で、運動施設「ファイト!」を一時的に閉鎖せざるを得ない状況になった時のことだ。

ある日、野田院長は定期通院に訪れた一人の男性から、思いがけない言葉を投げかけられる。「先生、『ファイト!』はいつ再開するんだ。あそこは俺たちにとって『不要不急』なんかじゃない。必要な場所なんだ」

その言葉には、切実な響きがあった。野田院長自身、あくまで医学的なリハビリや運動療法の「機能」を提供する場所として運営しているつもりだった。しかし、患者たちにとっての「ファイト!」は、単に体を動かすだけの場所ではなかったのだ。

「同じ世代の仲間が集まり、『今日は調子が良いね』『ここが痛いよ』と話し合い、お互いの元気な顔を確認し合う。そこでの他愛のない会話や交流こそが、彼らの生活の一部であり、社会とのつながりそのものだったのです」

「ファイト!」が閉鎖されるということは、単に運動ができなくなるだけでなく、社会的なつながりを断たれ、孤立することを意味していた。心身の健康を維持するためには、身体的な機能向上だけでなく、社会的な居場所が必要不可欠である。「ここは不要不急ではない」。患者からの悲痛な訴えは、野田院長に地域医療の「第3の役割」を気づかせるきっかけとなった。

「私が作ったこの場所は、単なる運動施設ではなく、地域の人々が孤立せずに生きていくための『コミュニティ』だったのだと確信しました。この経験を経て、私は以前にも増して、『地域の人々の人生そのものを支えるインフラになる』という覚悟が強まりました」

サクラクリニック外観
サクラクリニック 外観
 

「守る」から「創造する」へ。広がる事業展開

こうした経験を経て、サクラクリニックの理念は進化した。かつて掲げていた「大切なものを守る」という言葉から、現在は「健康を創造する」というより能動的なメッセージへと変化している。健康とは、病気ではない状態のことではない。自分の足で歩き、人と関わり、前向きに何かに取り組める状態を、自らの意思で作り上げていくことだ。

「病院は病気になってから行く場所」という固定観念を壊し、人が人らしく生きるための活力をチャージする場所へ。サクラクリニックにあるのは、最新の医療機器だけではない。そこには、人と人をつなぎ、未来への希望を紡ぎ出す、温かな「地域の絆」が存在している。

サクラクリニック『ウィズマインド』
▲クリックすると、野田先生のインタビューの完全版を読むことができます▲

野田院長が提唱する「健康余命」を延ばすための具体的メソッドとは?「1年後の500万円より、80歳での5億円」。野田院長が説くユニークな健康投資の考え方や、日本人の死因の多くを占める「血管死」を防ぐための具体的な医療ノウハウについては、医療系メディア『ウィズマインド』の特集記事をご覧ください。
特集記事:『「健康余命」という新しい物差し。病気を治す場所から“人生を創造する”場所へ――サクラクリニック27年の挑戦

ウィズマインドは、あなたの悩みに寄り添った美容クリニック・医療機関を発見するために、医師・スタッフの「想い」をお届けするメディアです。

【クリニック情報】
医療法人春陽会 サクラクリニック
院長:野田 泰永(のだ やすなが)
所在地:愛知県名古屋市天白区一つ山2-6
URL:https://www.sakura-cl.com/
診療科目:内科、循環器内科、消化器内科、リハビリテーション科
「健康を創造する」を理念に掲げ、医療・介護・運動をワンストップで提供する地域医療のモデルケースとして注目を集めている。

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ライター:

Webライターとして活動。主にエンタメ系、サステナビリティ関連の記事などを扱っています。

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