
2026年1月23日深夜、ABCテレビの長寿バラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』で放送された1本の依頼が、番組史上まれに見る規模の炎上へと発展した。放送後、少年の家庭内での役割を巡り「ヤングケアラー」「ネグレクトではないか」との批判が噴出。家族は激しい誹謗中傷と二次被害にさらされた。騒動が一度は沈静化に向かうかに見えた中、2月4日、出演家族の両親がInstagramを更新。再出発を宣言した声明は、事態の収束ではなく、むしろ不信と反発を再燃させた。本稿では、このInstagram更新を主軸に、炎上の構造とその後を検証する。
放送内容が突きつけた「長男が休みたい」という重い事実
依頼タイトルは「6人兄妹の長男を代わって」。広島県在住の当時12歳の少年が、「長男役が疲れた。1日だけ次男になりたい」と訴えた内容だった。番組では、霜降り明星 せいやが探偵として少年の代わりに家事と育児を1日体験。弟妹5人の世話、食事の準備、洗濯、おむつ替えなどをこなす少年の日常が映し出された。
番組は「家族を支える健気な長男」という感動路線で編集したが、視聴者の受け止めは大きく異なった。SNSでは、「長男が休みたいと言っている時点で、話し合いや協力が十分だったとは思えない」「子どもが休みたいと口にするほどの負担があったのではないか」といった声が相次いだ。
感動よりも先に、子どもの発した違和感が世論に共有された形だった。
「お米7合」発言が決定づけた演出への不信
炎上を決定づけたのは、せいやが少年に「まだ大人になるなよ」と声をかけた直後、母親が長男に向けて放った「お米7合炊いて」という一言だった。
温かな励ましの直後に突き付けられた日常の負担。その強烈なコントラストは、番組が狙った感動演出を一瞬で裏切る結果となった。
SNSでは、「演出だとしても、そう見せた時点で失敗」「感動の直後にまた長男に家事を任せる構図を流す神経が分からない」といった批判が噴出。この場面は切り取られ、象徴的な炎上画像として拡散された。
番組側が意図したのは「家事と育児の大変さの可視化」だったとされるが、視聴者が受け取ったのは「親の無自覚さ」と「負担の常態化」だった。
事態を重く見たABCテレビは、1月25日と26日に公式サイトで相次いで声明を発表。
「編集・構成上の演出によって、実際の生活全体像とは異なる印象を与えてしまった」「誤解を招いた点について深く反省している」と謝罪し、TVerでの該当回配信を即時停止した。
さらに1月30日には今村俊昭社長が記者会見を開き、「ヤングケアラーという社会課題に対する認識が十分ではなかった」「制作側として配慮を欠いていた」と頭を下げた。
一方で番組側は「捏造ややらせはない」と強調。しかし世論の不信は収まらなかった。「やらせでなくても、演出でそう見せた責任は消えない」という声が相次ぎ、謝罪自体が火消しにならない状況を生んだ。
SNSで進んだ特定と私刑、家族を直撃した二次被害
放送後、Xを中心に「ヤングケアラー」「育児放棄」「ネグレクト」といった言葉が急速に拡散した。放送前から番組公式サイトに掲載されていた依頼文も再拡散され、母親のInstagramアカウントが特定された。
過去投稿の「家事育児はできるだけしたくない」「3人目以降は予定外」といった表現は文脈を失ったまま切り取られ、「子どもを増やして長男に押し付ける親」と断定的に語られた。
さらに、元迷惑系YouTuberによる職場前での突撃動画、殺害予告、住所晒しが相次ぎ、学校では子どもたちが「炎上家族」とからかわれる事態も起きた。
母親が営む美容サロンは全キャンセル状態となり、食欲不振に陥るなど、家族のメンタルは深刻なダメージを受けた。
「虐待なし」判定でも消えなかった世論の違和感
児童相談所や警察の調査では、虐待やネグレクトの事実は認められなかったとされている。長男が週3回から4回のバスケットボールの習い事を続け、家族全体で家事を分担している実態も徐々に明らかになった。
しかしSNSでは、「法的に問題がないことと、子どもの心理的負担は別問題」「休みたいと訴えた事実は消えない」という声が根強く残った。
番組が編集で作り出した印象は、事後の説明では回収しきれなかった。テレビの演出が、家庭の評価そのものを固定化してしまった形である。
2月4日のInstagram更新が再炎上を招いた理由
騒動のピークから約2週間後の2月4日、出演家族の両親はInstagramを更新した。
これまで母親が運営していたアカウントで「このアカウントでは最後の投稿になります」と告知し、両親連名の新アカウントで長文声明を公開。謝罪と反省、個人情報拡散への危機感、「虐待」「ネグレクト」「ヤングケアラー」は事実ではないとの否定、再出発の決意がつづられた。
しかしSNSの反応は厳しかった。
「実際に長男が休みたいと言って依頼している以上、話し合いと協力が十分だったとは思えない」
「負担をかけていないとは思えない。まず認めて、今後どう改善するかを語る謝罪のほうが好感を持てた」
「子どもたちが本当はどう思っているかは、親ですら分からない」
「これだけの騒動を起こして、まだInstagramで発信を続けるのは図太いとしか言えない」
声明は火消しではなく、「自己正当化」「説明不足」と受け取られ、炎上を再点火させた。両親の言葉と世論の温度差は、最後まで埋まらなかった。



