
「何を入れないか」という引き算の美学を貫き、素材本来の力を引き出す。そんな誠実な姿勢を持つ企業が、今度は「形」という制約を「食感」という価値へと転換させた。おやつ体験を再定義するスナックミーの挑戦が、食の未来に一石を投じている。
未活用の素材に宿る可能性。フードロスを「美味しさ」で解決する
株式会社スナックミーは2026年1月17日、アップサイクルの思想から生まれた新製品『しっとり仕立てのパイナップルケーキ』をオンラインストアで発売した。ベースとなるのは、同社の人気商品である『プレミアムドライパイン』だ。味は一級品ながら、製造過程で生じる形の不揃いな果実たちが今回の主役である。これらをきび糖シロップで煮詰め、クッキー生地に閉じ込めることで、単なるフードロス削減に留まらない、嗜好品としての完成度を追求した一品が誕生した。
独自製法「水分移行」の衝撃。他社の「訳あり品」と一線を画すプロセス
他社の多くが規格外品を安価なアウトレット品として処理するなか、同社の取り組みは一線を画している。特筆すべきは、ドライフルーツ特有の凝縮された甘みと水分量を、焼き菓子のテクスチャー設計に組み込んだ点だろう。あえてドライパインをシロップに漬け込み、その水分を生地へ移す工程を設けることで、従来の焼き菓子では到達し得なかった驚くほどしっとりとした口あたりを実現した。素材の個性を丁寧に引き出し、全く新しい食感へと昇華させるこのクリエイティビティこそが、同社のアップサイクルにおける核心といえる。
「引き算」が導く食の透明性。商品開発の背景にある誠実な哲学
この製品の背景には、同社が掲げる厳格な開発基準がある。食品表示のスラッシュ以降に記載される添加物を原則排除し、マーガリンやショートニング、異性化糖といった精製過程の不透明な原料を一切使用しない。商品開発担当者は「果実をただ入れるのではなく、生地となじませることで生まれる食感を大切にしました」と語る。素材の扱い方次第で広がる表現を、無理なく日常で楽しめる形にまとめる。この言葉が象徴するように、同社にとってアップサイクルは義務的な環境活動ではなく、素材と真摯に向き合った結果として導き出される美味しさの探求の延長線上にあるのだ。
現代のビジネスが学ぶべき、持続可能性を競争優位に変える力
スナックミーの事例は、持続可能性と収益性が、クリエイティビティによって高い次元で両立し得ることを示唆している。まず、未活用の素材を独自のストーリーと技術で限定プレミアム品へと再定義するブランディング力が特筆される。また、原材料の制限や規格外という制約を、かえって模倣困難な独自性へと転換する逆転の発想も無視できない。そして何より、二次原料に至るまで基準を遵守する徹底した透明性が、顧客との間に強固な信頼関係を築いている。同社は自らを「永遠のβ版」と称し、顧客のフィードバックを得ながら改善を続ける。デジタル発のメーカーとして、既存の枠組みに捉われないその歩みは、素材の行き先を変えるだけでなく、私たちの消費の在り方そのものを変えようとしている。



