
環境負荷の低減と製品価値の向上をいかに両立させるか。日本を代表する二つのグローバルブランドが、その難題に対する一つの解を提示した。
アシックスの「廃棄シューズ」を再定義、カリモク家具との革新的コラボが始動
カリモク家具株式会社は、同社のサステナブルブランド「Karimoku New Standard(KNS)」において、株式会社アシックスとの協業による新作家具を2026年1月17日より発売する。本プロジェクトの核心は、未使用のまま廃棄予定となったデッドストックやサンプル品のシューズを、家具のクッション材へと転換する試みだ。ブランドを象徴する「Castor Lobby Sofa」や「Polar Lounge Chair」にアシックスの技術が組み込まれ、新たな生命が吹き込まれた。
単なるリサイクルではない、機能性を追求した「ハイブリッド構造」の秘密
本取り組みが、巷にあふれるアップサイクル事例と決定的に異なるのは、廃棄素材を単なる物語としてではなく、実利的な付加価値に昇華させている点にある。アシックスの循環型シューズ「NEOCURVE」で培われた技術を応用し、粉砕されたEVAフォーム材をチップ状にして綿と混合した。さらに3mm厚のシート状に成形して積層する独自の二層構造を開発している。この構造により、従来の家具にはない適度な反発力と、沈み込みすぎない安定感の両立に成功した。特にPC作業など、長時間座り続けるビジネスシーンにおいて、身体の負担を軽減する実利的な機能を備えているのが最大の特徴と言える。
「理想 of 座り心地」を追求する、両社に共通するクラフトマンシップと哲学
このプロダクトの原点は、アシックス東京オフィスのミーティングスペースにおける「理想の座り心地」の探究にある。「健全な身体に健全な精神があれかし」を掲げるアシックスの人間工学と、創業以来「ハイテク&ハイタッチ」を追求してきたカリモク家具の製造技術。両者は未知の素材である「シューズの端材」を前に、幾度もの試作を繰り返した。素材が持つサステナブルな背景に甘んじることなく、あくまで家具として最高であることを問い続ける姿勢がある。この徹底した現場主義と妥協なき探究心こそが、異業種間のフィロソフィーを深く共鳴させた。
ビジネスパーソンが学ぶべき「ストーリーを機能に変換する」サステナブル戦略
今回のコラボレーションは、これからの時代のビジネスにおける環境対応のあり方に重要な示唆を与えている。まず環境に良いから買うという動機を超え、座り心地が良いから選ぶという機能的価値へ変換したことが、顧客への強力な訴求力となる。また、スポーツシューズの素材知見を家具に応用するという領域を越えた発想が、真のイノベーションを生むことを証明した。ブランドの社会的責任をコストではなく競争優位に変える戦略として、本事例は極めて示唆に富んでいる。アシックスとカリモク家具の挑戦は、サステナビリティがプロダクトの本質的な価値を底上げする新たなフェーズに入ったことを物語っている。



