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エッグフォワードの助成金不正受給、年末に謝罪リリース開示も不正は「2度目」という確信犯っぷりを露呈

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エッグフォワード 不正受給問題を謝罪リリース

20億円近い助成金不正受給に関与したとして、労働局から社名公表されたエッグフォワード株式会社。 沈黙を貫いていた同社が、世間が年末の休暇に入った12月30日、ついに「ご報告」と題するリリースを発表した。

しかし、その中身は謝罪の体を成しておらず、むしろ同社の企業体質の腐敗をより鮮明に浮き彫りにするものだった。「販売代理店」を隠れ蓑にする卑怯な弁明、そして何より、ここにきて不正が「2度目」であるという衝撃の事実まで明らかとなっている。

なぜ彼らは、1年前の警告を無視し、暴走を続けたのか。

▼同社の不正受給に関する初報はこちら▼

 

「仕事納め」を狙った卑劣なリリース

エッグフォワード、謝罪文面
エッグフォワードのコーポレートサイトより。同社のニュース欄には、「新サービスの発表やアライアンス、メディア露出、あるいは今の私たちでも想像していないようなニュースでステークホルダーの方々を驚かせるだけでなく」云々とあるが、実際に同社のステークホルダーは今回の問題に愕然としているだろう……

まず指摘しなければならないのは、その発表タイミングの遅さだ。 労働局が不正を公表したのは12月19日。それから11日間もダンマリを決め込み、官公庁もメディアも機能停止する「12月30日」を選んで結果的にリリースを出している点。意図は明白と指摘されても仕方あるまい。

アメリカの政治やメディアの世界には、「Friday news dump(フライデー・ニュース・ダンプ)」という言葉がある。直訳すれば「金曜日のニュースのゴミ捨て」。 政府や企業が、不祥事や悪い決算、増税といった都合の悪い情報を公表する際、あえて人々の関心が薄れる「金曜日の午後」や「連休前」を選ぶ手法のことだ。 翌日が休みであれば新聞の購読率は下がり、テレビの視聴者も減り、追及する記者も不在になる。

「ゴミ(悪材料)は人が見ていない時にこっそり出す」という、広報戦略における一種の隠蔽工作的なテクニックとして知られている。

 

今回、エッグフォワード社が選んだ「12月30日」という日付もまた、このタイミングでの開示となっては意図の有無にかかわらず、「ニュース・ダンプ」を疑われても仕方あるまい。

「誠実かつ真摯に対応してまいります」という言葉とは裏腹に、世間の注目を少しでも逸らそうとするその姿勢からは、ステークホルダーに対する誠意は微塵も感じられない。

「代理店が売った」という責任転嫁の詭弁

今回のリリースで最も看過できないのが、以下の文言だ。

 

「弊社が企画実施し販売代理店企業が営業活動を行った研修において」

さらりと書かれているが、ここには「悪いのは現場で無理な営業をした代理店であり、我々はあくまで企画元だ」という責任逃れの意図が透けて見える。 しかし、助成金制度の実務を知る者からすれば、これは通用しない詭弁だ。

代理店が勝手に「助成金でキャッシュバックができますよ」などという複雑なスキームを開発できるはずがない。「実質負担ゼロ」「持ち出しなしで利益が出る」という商品設計(スキーム)を構築し、代理店に対して高額なインセンティブ(販売手数料)を餌にバラ撒かせたのは、間違いなくベンダーであるエッグフォワード自身だ。

自らが主導して構築した違法スキームで巨額の売上を立てておきながら、露見した途端に「代理店の営業活動」を強調し、トカゲの尻尾切りのように責任を押し付ける。この態度は、組織変革コンサルティング会社としてあるまじき無責任さのように映る。

 

これは「初犯」ではない「1年前の余罪」

そして、今回の事件を単なる「管理ミス」で済ませてはならない最大の理由がある。エッグフォワード社にとって、これは初めての不正認定ではないのだ。

「この会社、今回が初めてじゃないぞ」 「去年の記事が出てきた」

同社の目論見とは裏腹に、X上では、ユーザーたちによる“ファクトチェック”が瞬く間に拡散された。掘り起こされたのは、専門紙『労働新聞』が2024年12月12日付で報じた過去の記事だ。そこには、東京労働局など5労働局が、同社を今回と同様の助成金不正受給に関与したとして公表した事実が記されていた。当時の被害額は約3000万円。

この事実が意味することは極めて重い。つまり、彼らは一度「レッドカード」を突きつけられていたのだ。

 

7月の書き込みが示唆する「継続」の恐怖

ここで、一つの戦慄すべき可能性が浮上する。20億円という巨額の不正は、1年前の摘発以前に行われていた過去の遺産(余罪)なのか。それとも、摘発後もなお、彼らは手を染め続けていたのか。

その謎を解くカギとなる“証拠”が、就職・転職リサーチサイトのopenworkに残されていた。2025年7月30日に投稿された、元社員による退職理由の書き込みである。

「助成金の不正受給にかかわるスキームを提供しており、自身の道徳と反していた為。」

投稿者は、2020年以降に入社した中途社員。 注目すべきはその「日付」だ。この書き込みがなされたのは、最初の不正公表(2024年12月)から半年以上が経過した、2025年の夏である。

 

もし、会社が2024年末の時点で心を入れ替え、不正スキームを完全に撤廃していたならば、半年後の退職者が「不正受給にかかわるスキームを提供しており」と現在進行形のような表現で告発するだろうか?

この書き込みは、2024年の摘発後もなお、社内でこの「エッグいスキーム」が生き続け、現場の社員が道徳的葛藤を抱えながら販売を強いられていた可能性を、生々しく物語っている。

「再犯」か、それとも「隠蔽」か

 

もちろん、この口コミにある「提供」が、過去の契約の残務処理(隠蔽工作)を指していた可能性もゼロではない。常識的に考えれば、労働局の調査には時間がかかる。今回公表された30都道府県にまたがる大規模な不正事案は、おそらく1年前の時点で既に存在していた「氷山の一角(3000万円)」に対する、水面下の巨大な「本体(19.8億円)」であった可能性も高い。

さすがに、2024年の発覚後に「懲りずに新たに手を染める」ほど倫理観に欠除した企業だとは考えにくいからだ。

だが、仮にそれが「過去の案件の隠蔽」であったとしても、罪が軽くなるわけではない。 同社は1年前に最初の警告を受けた時点で、自らのビジネスモデルが不正であることを認識していたはずだ。まともなガバナンスが機能している企業であれば、その時点で「実は他にもこれだけの類似案件があります」と自ら調査し、当局に申告して膿を出し切るのが筋だ。

しかし、彼らはそれをしなかった。1年間沈黙し、あわよくば逃げ切れると考えたのか、あるいは当局の捜査が完了するまで「知らぬ存ぜぬ」を通したのか。いずれにせよ、この1年間の空白は、積極的な改善の期間ではなく、不都合な真実を隠し続けた「不作為の罪」の期間であったと言わざるを得ない。

 

「過失」ではなく「確信犯」

2025年夏の元社員による悲痛な告発。そして年末の駆け込み発表。これらの事実は、今回の件がうっかりや知らなかったでは済まされないことを証明している。これは、法の抜け穴を突くことが不正であると認識しながら、利益のためにあえて継続、あるいは隠蔽した「確信犯」的な犯行であると言わざるを得ない。

「人の可能性を最大化する」「社会課題の解決」。 キラキラした言葉でコーティングされた同社の経営実態は、1年前の警告すら無視し、代理店に泥を被せてまで利益を貪る、極めて利己的なものだった。 2年連続の不正認定。これはもはや「不祥事」ではなく、同社のビジネスモデルそのものが「不正」に依存していたことの証左ではないか。

当局は今回の再犯、そして隠蔽の疑いを重く受け止め、同社に対して、厳しい処分を下す必要があるだろう。

 

「代理店」への責任転嫁と、販売手法の麻薬性

一方で、あえて視点を広げれば、これはエッグフォワード一社だけの問題ではないとも言える。「助成金を使えば実質負担はゼロ」 このセールストークは、かつての携帯電話販売における「本体代金実質0円」や「高額キャッシュバック」と酷似しており、助成金支援ビジネスでは広く活用されてきた言葉である。

売り手にとっては、商品力で勝負せずとも「タダなら導入しようか」と契約が取れる魔法の杖。買い手にとっても、懐を痛めずに実績が作れる。「売りやすく、買いやすい」。この構造は、ある種の麻薬だ。エッグフォワードは、この麻薬的な販売手法に依存しすぎてしまった。本来は顧客企業の成長のためにあるはずの研修が、いつの間にか「助成金を取るための建前」へと主客転倒してしまった点に、ビジネスモデルとしての限界があったのではないか。

 

「魔法の杖」を捨てて、裸で戦えるか

同社にとって、今回のダメージは計り知れない。1年前の警告を無視し、巨額の不正が暴かれるまで放置した事実は、信用を根底から覆す。

だが、同社のコンテンツそのものまでが「無価値」だったとは信じたくない。 徳谷社長の著書『経営中毒』に心を動かされた経営者は多く、現場のコンサルタントたちの熱意に救われた企業も存在している。もし、エッグフォワードが本気で再生を志すのであれば、やるべきことは一つしかない。 助成金というドーピングをすべて断ち切り、複雑な還流スキームも代理店へのインセンティブも全廃することだ。「実質0円」という魔法が解けたあと、そこに適正価格でも買いたいと思わせる本物の価値あるサービスが残っているのかどうか。

とはいえ、19.8億円の不正と1年の隠蔽は、企業存続の是非すら問われる重大事案だ。 再生を語る前に、まずは当局による厳正な処分と責任の清算が不可欠である。公金を愚弄した代償は重く、「人の可能性」を再び語る資格は、その徹底的な禊(みそぎ)を済ませた先にしか存在しない。

 

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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