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ホストクラブ「店舗ランキング」掲載再開へ JHCA新指針が示す業界健全化への次なる一歩

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JHCA ホスト自主規制解除

売掛金トラブルなどが社会問題化し、かつてないほどの変革期にあるホストクラブ業界が、年の瀬も押し迫った12月23日、大きな決断を下した。業界団体である「日本ホストクラブ健全化推進協議会(JHCA)」が、十月に制定したばかりの自主規制の一部緩和を発表したのだ。

この動きは単なる「揺り戻し」ではなく、行政との対話を経て業界が新たなフェーズに入ったことを示唆している。

 

JHCA自主規制緩和の全貌 外部サイトと自社サイトの明確な線引き

今回、関係者やファンの間で話題を呼んでいるのが、外部ポータルサイトにおける「店舗内ランキング」の復活である。JHCAは今年十月、改正風営法の施行や世論の批判を真摯に受け止め、売上至上主義からの脱却を掲げてランキング制度や数値広告を全面的に禁止したばかりだった。

それからわずか二ヶ月半での“解禁”。しかし、これは無秩序な競争への回帰ではなさそうだ。行政機関との協議や有識者を交えた勉強会を重ねた結果、JHCAは「健全な競争」の範囲を再定義したと捉えられる。

 

発表された新指針は合理的かつ現実的なものだ。外部ポータルサイト上での順位公表は認める一方で、金銭的な煽りに対する規制は依然として厳しい。「売上金額」や「来店組数」、「総工費」といった、金銭的要素を直接的に想起させる数値を強調することは引き続き禁止される。

さらに、外部サイト上では「代表」や「幹部」といった役職の記載も自主規制の対象として継続されるほか、グループ全体での順位を競う「グループランキング」の掲載も見送られた。

一方で、各店舗やグループが独自に運営する「自社サイト」においては、もう少し自由度が高く、店舗内だけでなくグループ内ランキングの順位表記も再開される。これは、公的な広告媒体(外部サイト)と、ファン向けの広報(自社サイト)を明確に使い分けるという、メディアリテラシーに基づいた判断と言えるだろう。

 

なぜ12月23日なのか?年末商戦と現場のモチベーション

なぜ、このタイミングだったのか。12月23日という日付には、業界特有の事情と、働く人々への配慮が透けて見える。ホストクラブにとって12月は一年で最も売上が動く書き入れ時であり、その締めくくりとなる年末営業は、ホストたちが年間の序列を決める「聖戦」とも呼ばれる時期。「年越しの瞬間にナンバー1でいたい」というホストと顧客の熱量は凄まじい。

この時期にランキング表記が復活したことについて、ある業界関係者は「行政側との粘り強い折衝の成果」と見る。「完全な締め付けは、かえってアングラ化(地下潜伏)を招く恐れがある。ガス抜きとして、エンターテインメントとしての順位争いは認めさせたい業界側と、金額の明示さえ防げればよいとする行政側の落としどころが、この年末に見つかった形だ」

現場のホストからは、仕事への意欲を取り戻したという声が多く聞かれる。

「ランキングがないこの二ヶ月間は、正直モチベーションの維持が難しかった」と語るのは、歌舞伎町の中堅ホストだ。「数字が見えないと、目標を見失う新人も多かった。順位が出ることで『負けたくない』という健全なプロ意識が戻ってくるなら歓迎だ」。

また、店舗運営者にとっても、高額な外部ポータルサイトへの掲載料に見合う集客効果(ROI)を確保するためには、ランキングというコンテンツが必要不可欠だったという経営判断もある。

 

「推し活」の透明化と健全化への期待

今回の変更は、ホストクラブに通う女性客、通称“姫”たちの心理にもポジティブな影響を与えそうだ。「担当(指名ホスト)をナンバー入りさせたい」という推し活心理は、ホスト通いのエンターテインメント性の根幹である。

ある女性客は「順位がわからないと、どれくらい応援すればいいのか分からなくて不安だった」と規制緩和を歓迎する。かつてのように「〇〇万円」という金額が露骨に示されることはなくなったため、今後は「順位」という名誉を目標にした、より純粋な応援の形が定着していく可能性がある。

金額が見えないことで過剰な支出を懸念する声もあるが、それは店舗側のコンプライアンス遵守とセットで解決していくべき課題だろう。

 

成熟するホスト業界の未来

JHCAは今回の措置について、会員店舗に対する強制ではないとしつつも、業界全体の社会的信頼向上を目指し、法令遵守と自主規制の徹底に取り組む姿勢を崩していない。特筆すべきは、今回の方針転換が「なし崩し的な緩和」ではなく、行政や有識者との対話プロセスを経て決定された点だ。

これはホスト業界が、単に「言われたから禁止する」という受け身の姿勢から、社会的なルールの中で「どこまでが許容されるエンターテインメントか」を自ら考え、交渉し、ルールメイクできる組織へと成熟し始めた証左と言えるだろう。全面禁止というショック療法を経て、業界は今、持続可能な運営モデルを模索し始めている。

健全化と文化の継承を両立させようとするJHCAの試みは、夜の街が社会と共存するための重要な一歩と言えるだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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