
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が全世界興行収入で1000億円を突破し、日本映画として初めて大台に到達した。国内興行収入は379億円前後で推移しており、歴代1位の前作『無限列車編』を上回るかどうかが焦点となっている。一方で、この歴史的ヒットは映画館の興行状況だけでなく、アニメ産業や関連ビジネスに幅広い影響を及ぼすとみられる。作品の勢いが今後どこまで続き、国内市場にどのような変化をもたらすのか。その見通しを探った。
『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』1000億円突破の余波
アニプレックスが発表した興行データを報じたAV Watchなどによると、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の全世界興行収入が1063億円を超え、日本映画として初めて1000億円の大台に到達した。国内興行収入は379億円前後で、歴代1位の前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の約404億円にはまだ届いていない。しかし、なお劇場公開が続いており、今後の動向によっては記録更新の可能性もある。
国内興行の鍵となる“二段階目の需要”
国内興行収入の行方を左右するとみられるのが、公開直後の勢いに続いて発生する“二段階目の需要”だ。初動はファン層が中心となるが、作品内容の評価がSNSや口コミで広がることで、後から鑑賞する層が増える傾向がある。とくに本作は、無限城編三部作の第1章という位置づけのため、続編への期待が鑑賞を後押しするとの見方もある。
一方で、映画館側からは「『鬼滅の刃』は幅広い年齢層の支持を受けており、平日のレイトショーでも一定の稼働が見込める」との声が聞かれる。つまり、リピーター層に加えてファミリー層も取り込めれば、興行収入の上積みが期待できる構図だ。
三部作による中期的な興行戦略
無限城編が三部作として展開されることは、国内の映画館にとって大きな追い風になり得る。シリーズ作品は上映期間が長期化しやすく、座席を安定的に確保しやすいためだ。とりわけ、2024年の「柱稽古編」から鑑賞需要が途切れず続いている点を踏まえると、2026年ごろまで関連興行が持続する可能性がある。
さらに、三部作という形式そのものが国内市場の活性化につながるとの見方もある。単発のヒット作品に依存せず、複数年を視野に入れた“中期興行”の成功事例となることで、アニメ映画が年間興収の柱として定着する可能性があるためだ。
関連市場への波及効果
本作のヒットは、映画館の収益にとどまらず、周辺産業にも効果を及ぼす見通しだ。『鬼滅の刃』シリーズはこれまでも作品ゆかりの地を訪れる「聖地巡礼」が盛んであり、地方自治体は観光需要の増加に期待を寄せている。また、百貨店や商業施設での期間限定イベント、コラボ商品、劇場限定グッズの展開など、関連ビジネスが拡大する可能性も高い。
実際、2020年公開の『無限列車編』では関連商品が大きく売り上げを伸ばした例があり、今回も同様の動きが起きるとの観測がある。こうした消費の広がりは、映画興行と連動して産業全体の底上げに寄与すると考えられる。
アニメ産業全体の国際基準化を後押し
全世界興行収入が1000億円を超える規模のプロジェクトが成立したことで、アニメ制作体制への影響も見逃せない。海外市場でも高い評価を受けることで、制作スタジオが技術投資や人材育成を進めやすくなるためだ。また、海外配信を軸にした出資体制や収益設計の見直しが広がれば、国内アニメ産業の国際競争力の強化につながる。
無限城編のような大規模作品の成功は、国内スタジオが世界市場で勝負するための指標にもなる。制作規模の大型化や上映方式の多様化が進めば、アニメ産業全体の“国際基準化”がさらに加速するとみられる。
国内興行の行方は年末動員が焦点
前作の国内興収404億円超を超えるかどうかは、年末以降の観客動員が大きな分岐点となる。冬休みシーズンは毎年ファミリー層の需要が増える傾向があり、口コミ評価が安定すればリピーターと新規層の両方で興行収入が伸びる余地がある。
ただし、同時期には邦画・洋画の大作が相次ぐ見込みで、スクリーン確保やロングランの可否など、興行環境の変化も無視できない。さらに、無限城編の続編情報の発表時期が興行成績に影響を及ぼすとの指摘もあるため、配給側と映画館の戦略が最終的な記録達成の鍵を握ることになりそうだ。



