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妻殺害で元長野県議に懲役19年 東京高裁も控訴棄却、無罪主張退ける

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裁判所
PhotoACより

東京高裁は10月1日、長野県塩尻市で妻を殺害した罪に問われた元長野県議・丸山大輔被告(51)の控訴審判決を言い渡した。一審・長野地裁の懲役19年を支持し、弁護側の控訴を棄却。無罪を訴え続けた被告に対し、裁判所は「合理的疑いは残らない」として犯行を認定した。間接証拠を積み重ねて有罪とした裁判の行方、そして「刑が軽すぎる」との世論の声に注目が集まっている。

 

 

判決の日、東京高裁の法廷で

10月1日午前、東京高裁の法廷に緊張が漂った。裁判長が「主文。被告人を懲役19年に処する」と告げた瞬間、傍聴席から小さなざわめきが起きた。長野県塩尻市で2021年に妻を殺害したとして殺人罪に問われた元長野県議・丸山大輔被告(51)。一審と同じく懲役19年という重い判決が言い渡され、弁護側の控訴は退けられた。

傍聴に訪れた人々は、深くため息をつきながら判決理由を聞き入っていた。被告は最後まで無罪を訴えてきたが、その主張は高裁でも受け入れられなかった。

 

事件の概要 塩尻市の酒蔵で起きた惨劇

事件が起きたのは2021年9月29日の未明。塩尻市の自宅兼酒蔵の事務所で、妻の希美さん(当時47歳)が命を落とした。司法解剖の結果、死因は首を圧迫されたことによる窒息死。警察は殺人事件として捜査を進め、翌年、夫である丸山被告を逮捕した。

丸山被告は2015年に県議に初当選。自民党県議団に所属し、22年の逮捕時は2期目の現職だった。地元では真面目な政治家として知られていただけに、逮捕の一報は大きな衝撃を呼んだ。

 

一審判決 「間接証拠」の積み重ね

一審・長野地裁(2024年12月)は、丸山被告の供述の矛盾や現場付近での車両目撃情報など、複数の間接証拠を列挙した。

  • 事件前後に、被告の所有車とよく似た車が防犯カメラに映っていたこと
  • 被告が「議員会館にいた」とするアリバイ証言が曖昧だったこと
  • 妻を殺害する動機が「元交際相手との復縁」にあったこと

判決は「被告が犯人でなければ説明できない」と断定。妻の首を圧迫して窒息死させたと認定したうえで、「身勝手な思惑に基づく冷酷な犯行であり、相当厳しい非難に値する」と言い渡した。

 

控訴審の攻防 却下された新証拠

これに対し弁護側は控訴審で、新証拠8点の採用を請求。事件現場付近には第三者の足跡などが残されており、「被告を犯人と直接示す証拠はない」と主張した。さらに、「妻との関係は良好で、動機は存在しない」と反論した。

しかし東京高裁は、弁護側の新証拠はいずれも採用しなかった。裁判所は「合理的疑いは残らない」として、一審の判断を全面的に支持した。

 

息子が第一発見者に 心に刻まれた衝撃

事件をめぐっては、遺族に大きな心の傷を残した事実がある。倒れていた母・希美さんを最初に発見したのは、まだ若い息子だった。彼はすぐに父である被告に電話をかけたが、その相手が犯人だったとは夢にも思わなかっただろう。

「息子さんの心のケアを最優先にすべきだ」。ネット上では、この点を強調する声が相次いでいる。無罪主張を続ける被告に反省の色が見えないことも、世論の反発を強めている。

 

世論の反応  「19年は軽すぎる」

SNSやニュースサイトのコメント欄には、判決直後から多数の意見が寄せられた。

「間接証拠でも犯人を合理的に特定できれば有罪で当然」
「政治家という立場を考えればもっと厳罰にすべきだ」
「19年では軽すぎる。無期懲役が妥当だ」

中でも「刑の軽さ」に対する疑問が目立つ。日本の刑事司法は判例に基づき量刑が決まるため、殺人事件でも懲役15〜20年前後に収まるケースが少なくない。しかし被害者遺族や市民の感情からすれば、「人の命を奪ってたった19年」という違和感が拭えない。

 

政治家と刑罰への不信

さらに「政治家である以上、一般人よりも厳しい判決を出すべきだ」という意見もある。政治家には公金が投じられ、社会的影響力も大きい。もしその人物が殺人を犯した場合、国民の政治不信は一層深まる。

「罪を犯した政治家には刑期を3倍にすべき」「脱税や不正受給でも実刑に」といった声は、単なる感情論にとどまらず、司法制度全体への不信感を映し出している。

 

残された問い 「間接証拠」と量刑の妥当性

今回の裁判は、直接証拠が乏しい中で「間接証拠」を積み重ねて有罪とした典型例といえる。裁判員裁判制度の下で、市民感覚と法の論理がどのように折り合ったのか、注目すべき事案だ。

しかし同時に、「懲役19年は軽すぎるのではないか」という問いも残った。被害者の命を奪い、遺族に深い心の傷を残した罪の重さを、果たして現行の量刑基準で裁き切れるのか。社会の声は「もっと厳しく」という方向に傾いている。

東京高裁は最終的に、一審と同じ懲役19年を維持した。だが事件は裁判所の判決で終わりではない。残された家族の悲しみ、政治家への不信感、そして「人の命を奪った罪に見合う刑罰とは何か」という社会の問いは、なお続いている。

 

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ライター:

広島県在住。福岡教育大学卒。広告代理店在職中に、経営者や移住者など様々なバックグラウンドを持つ方々への取材を経験し、「人」の魅力が地域の魅力につながることを実感する。現在「伝える舎」の屋号で独立、「人の生きる姿」を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。​​https://tsutaerusha.com

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