
お笑いタレントの有吉弘行が、9月21日放送のJFM系ラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』で語った「がっかりした飲食店」エピソードが波紋を呼んでいる。
行きつけの店での不愉快な体験を吐露し、「もう二度と行かない」「サインと写真を燃やしてくれ」とまで言い放った有吉。その率直な語りはリスナーを沸かせた一方、SNSでは“特定班”が動き出し、店や関係者に火の粉が及ぶリスクが取り沙汰されている。毒舌芸人・有吉が直面する“炎上社会”の現実とは――。
行きつけの店でまさかの仕打ち
有吉が語ったのは、プライベートで奥さまや子どもと訪れた行きつけの飲食店での出来事だった。ネットで調べた開店時間より早く到着し、店の前で「何時からですか?」と確認すると、スタッフから返ってきたのは「はぁ?」「あぁん?」と不機嫌な返答。家族で足を運んだ特別な日であるにもかかわらず、ぞんざいな態度に面食らったという。
その後も不運は続いた。17時開店のはずが5分遅れでようやくシャッターが開いたが、「お待たせしました」の一言もない。店内に入ると、トングを倒してしまった有吉に対し、「おい!それ倒さないでよ!」と強い口調で注意。奥さまも思わず引いてしまうほどの接客ぶりだった。
ところがスタッフが有吉本人だと気づいた途端、態度は豹変。「あ、有吉さん!気づかなくて、すみません!」と急に低姿勢でペコペコと謝罪を繰り返す。その露骨な変わり身に有吉は失望し、「二度と行かない。サインと写真を燃やしてほしい」とまで語った。味は「とにかく美味しい」と評価しながらも、接客態度の落差が決定的な不信につながった形だ。
ラジオだからこそ語れる“毒舌”
テレビ番組での有吉は、決して飲食店や商品の悪口を言わない。『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)のMCとして長年番組を支えてきたのも、スポンサーや幅広い視聴者に配慮した“ソツのなさ”があればこそだ。
しかしラジオは違う。ファンが耳を傾ける場であり、本音や毒舌を安心して披露できる空間だ。今回の「がっかり店」トークも、いつもの“有吉節”の延長にすぎなかった。
実際、有吉はラジオで何度も過激な発言を放ち、ネット記事化されてきた。2014年には能年玲奈(現・のん)について「洗脳されてるんじゃないか」と語り波紋を呼んだほか、AKB48メンバーへの辛辣なコメントも繰り返してきた。テレビでは抑えられる舌鋒が、ラジオでは解き放たれる。それがファンには魅力であり、時に炎上の火種にもなる。
“特定班”が動き出すネットの怖さ
ところが、現代の情報社会ではラジオの毒舌はそのままでは済まない。番組放送後、X(旧Twitter)や掲示板では「どこの店か」を推測する書き込みが相次いだ。
「この条件ならあの店では?」
「有吉のサインがある店って、ここしか思いつかない」
仮に本当にその店だったとしても、接客への不満は有吉の主観であり、第三者が制裁を加える理由にはならない。ましてや無関係の店が「候補」に挙げられて被害を受ける可能性もある。ネット民の“特定欲”は強く、善意のつもりが個人攻撃へと転じることは少なくない。
過去にも有吉は『有吉ゼミ』で紹介された料理に「まずそう」とコメントし、「作った人に失礼」と批判されたことがある。冗談半分の一言が、当事者に大きな影響を及ぼすのは芸能人ならではの宿命だ。
賛否入り混じるSNSの声
SNS上では今回の件をめぐり、共感と批判が錯綜している。
「芸能人とわかって態度を変えるのは最悪。がっかりするのも当然」
「有吉の発言は正直すぎる。でも店の特定が始まるのは危険」
「家族と一緒に嫌な思いをしたのは気の毒だけど、公共の電波で店批判は影響力が大きすぎる」
2019年には女性タレントへの「ブスいじり」がハラスメントではないかと批判されトレンド入り。2025年夏には『有吉の夏休み』で野呂佳代の体型をいじったことが議論を呼んだ。毒舌芸人としての一言が、時代の空気に触れるたびに“炎上”へと変わるのだ。
ビートたけしとの対比に浮かぶ課題
有吉が敬意を寄せるビートたけしは、『バカ論』で「嫌なら二度と行かなければいい」と語り、不満を表に出さないスタンスを示している。店や相手の商売を否定せず、静かに距離を取る“思いやり”が、長く第一線に立ち続けてきた背景にある。
一方の有吉は「やられたらやり返す」型の毒舌を武器にしてきた。2011年の東日本大震災直後の発言が「不謹慎」と叩かれたこともあり、時代や世論の空気を読む力がますます求められている。
毒舌芸人に必要な“振り子の理論”
有吉の毒舌は芸風の核だが、それだけでは「意地悪な成功者」という烙印を押されかねない。ビートたけしが映画制作で語った“振り子理論”――暴力的な作品の次には愛をテーマにする――にならえば、毒舌と同じくらい“いい人エピソード”を積み重ねることが求められる。
ファンは毒舌を楽しみたい一方で、人間味や優しさにも触れたい。両者を振り子のように行き来させることで「毒舌だけど憎めない芸人」としての地位を保つことができる。今回の「がっかり飲食店」発言も、振り子の片側に大きく触れた出来事だったと言えるだろう。
まとめ
有吉弘行の「行きつけ飲食店」トークは、ラジオならではの本音の小話であり、ファンにとってはおなじみの毒舌だった。しかしSNS時代には、その一言が“特定班”を刺激し、当事者や無関係な店に火の粉が及ぶ危険がつきまとう。
過去の炎上発言の数々も踏まえれば、有吉に求められるのは「毒舌」と「思いやり」のバランスだろう。振り子のように両極を行き来し、時に優しさや包容力を示すことで、毒舌芸人としての魅力を次世代へとつなげることができるはずだ。