
自民党総裁選の候補者討論で、ひろゆき氏が突如「英語で1分説明」を要求。林芳正氏と茂木敏充氏は流暢な英語で答え、高市早苗氏は短いフレーズ、小泉進次郎氏と小林鷹之氏は日本語対応にとどまった。さらに小泉陣営の“ステマ問題”にも直撃が入り、候補者の資質や姿勢が浮き彫りとなった。
異色の討論会の幕開け
9月27日夜、東京都内の特設会場。壇上に並んだのは、自民党総裁選に挑む5人の候補者だった。照明に照らされる中で静かに座るのは、小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、小泉進次郎。それぞれの顔には緊張感がにじむ。
この日の司会は異例だった。「2ちゃんねる」の開設者で“論破王”として知られるひろゆき氏が仕切る。「ひろゆきと語る夜」と題された討論は、自民党公式YouTubeチャンネルで生配信され、数万人がコメント欄からリアルタイムで参加。党内の政策論争が、ネット世代にも直接届く試みとなった。
冒頭から揺らいだ「ステマ問題」
討論の序盤、ひろゆき氏は視聴者のコメントを拾うかのように切り込んだ。
「コメント欄、“ステマ”って書かれてますけど。どう思います?」
会場の空気が固まった。直前に発覚した小泉陣営のステマ投稿要請。会見動画に好意的なコメントを依頼していた問題が、火種として残っていた。
小林氏は「再発防止が大切」と述べ、茂木氏も「フェアな議論を“one自民”で」と応じる。林氏は「小泉さんはそういうことをする人ではない。謝罪したのはリーダーの姿勢」とかばい、高市氏は「左に同じ」と短く答えた。
最後に口を開いた小泉氏は、深々と頭を下げた。
「最終的に私の責任です。知らなかったとはいえ、私の総裁選のために起きたこと。申し訳なく思います」
しかしコメント欄には「謝罪だけで幕引きか」「行動で責任を示すべき」との厳しい声が並んだ。冒頭から候補者の危機対応力が試される展開となった。
飛んだ“英語で1分説明”
討論が終盤に差しかかったとき、ひろゆき氏は再び会場を揺らす質問を投げた。
「日本をどんな国にしたいか、英語で1分以内に説明してください。もちろん日本語でもいいですよ」
会場がざわつき、視聴者のコメント欄には「来た!」「誰が答えられる?」と期待と皮肉が混じった声があふれる。
最初に応じたのは林芳正官房長官。ハーバード大仕込みの流暢な英語で「若者が未来を自分で選べる国に」と語り、落ち着いた存在感を示した。続いた茂木敏充氏も英語で、温暖化対策や国際協調を力説し、外相経験者らしい安定感を見せる。
高市早苗氏は「ワンフレーズです」と前置きし、「Japan is back」と強調。短いが記憶に残る一言だった。
注目されたのは小泉進次郎氏。コロンビア大学院修了という経歴から、英語での返答を期待する視聴者は多かった。だが小泉氏は「ひろゆきさんの提案に乗ってはいけない」と日本語で回答。日米同盟の重要性を訴えたが、英語は口にしなかった。小林鷹之氏も「正確さを期すため日本語で」とし、日本語で応答した。
SNSで広がる評価と失望
討論会から二日後、ひろゆき氏はX(旧ツイッター)でコメントした。
「英語で返さない小泉さん・小林さんは、話せないと思われても仕方ないよね」
さらに「高市さんは好印象。茂木さん、林さんは安定の英語対応」と評価を添えた。
SNS上では「林氏の落ち着きが光った」「小泉氏はなぜ避けたのか」と賛否が飛び交った。「語学力より政策内容が大事」という擁護もあり、議論は「リーダーに必要なのは語学力か、誠実な説明責任か」というテーマへと広がった。
候補者の姿勢が問われた夜
今回の討論会は、ただの政策論争ではなかった。ステマ問題への直撃、英語での即興回答。突発的な質問にどう応じるかが、候補者の資質を浮き彫りにした。
英語で即応した林・茂木は国際的リーダー像を示し、高市は短い言葉で存在感を残した。小泉・小林の日本語対応は「慎重さ」とも「逃げ」とも受け止められた。
視聴者の目に映ったのは語学力の差以上に、予想外の場面での姿勢だった。誠実さ、危機対応、そして説明責任。リーダーに求められる資質は何かを問いかける夜となった。