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来場者が早朝から殺到し、万博会場で入場競争が常態化

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閉幕まで残り1か月――。大阪・関西万博は今、最大の盛り上がりと最大の混乱を同時に迎えている。シルバーウィーク初日の会場には21万8000人が詰めかけ、熱気とともに怒号やため息も飛び交った。「『並ばない万博』のはずじゃなかったのか」。

建設遅延や費用膨張、猛暑対策の不備、さらには公式キャラクターをめぐる騒動まで、数々の波乱に揺れ続けてきた夢洲。祭典の終幕が近づく今、その裏側に積み重なった矛盾が一気に噴き出している。

 

入場競争が日常化した「朝の修羅場」

夢洲の朝は、もはや“修羅場”だ。午前6時、駅前には既に長蛇の列が伸び、始発前から通用門に人影がある。9時の入場を目指し、ゲートが開けば人の波が雪崩れ込む。

警備員の「走らないでください」という声は虚しく響き、人気パビリオンを目指して小走りに駆ける姿があちこちで見られる。
「6時半から並んで、やっと大阪ヘルスケアパビリオンの当日予約ができた」
「1時間並んでイタリア館に入れた」
そんな声が安堵と疲労をにじませる一方で、午前中で列が締め切られるパビリオンも多く、午後には「5時間待ち」が当たり前の世界。会場を覆う熱気と焦燥は、祝祭のはずの空間を一転して競争の舞台に変えてしまった。

 

「並ばない万博」はどこへ消えたのか

かつて「並ばない万博」を掲げた理念は、いまや幻だ。大屋根リングの下は休憩を求める人であふれ、ベンチは早々に埋まり、地面に寝転ぶ姿が珍しくない。

さらに来場者の苛立ちを募らせるのが予約システムだ。「複雑すぎる」「操作が分からない」との声は高齢者だけでなく若者からも上がり、スマートフォンに慣れた世代ですら手を焼く場面がある。当初の理念と現実の乖離は、もはや誰の目にも明らかだった。

 

騒動の連鎖が招いた不信感

思えば万博は、開幕前から波乱の連続だった。海外パビリオンの建設は大幅に遅れ、開幕に間に合わない施設も出た。会場建設費は当初の1850億円から2350億円へと膨らみ、「負担は誰が背負うのか」と批判が噴出した。
この夏を直撃した猛暑では、熱中症搬送者が急増。急きょミストや簡易シェルターが増設されたが、後手に回った印象は拭えなかった。さらに公式キャラクター「ミャクミャク」をめぐる騒動も記憶に新しい。限定グッズを求めた来場者が炎天下で倒れ、オンライン抽選ではシステム障害が発生。「公平性に欠ける」との不満がSNSを席巻し、運営への不信感は強まった。

 

「駆け込み万博」が生む熱狂と疲労

それでも今、会場には全国から人が押し寄せている。「終わる前に一度は行きたい」という思いが、人々を駆け足で夢洲へ向かわせる。
「評判は悪かったが、一度は見たくなった」
「予定が合わず、この時期になった」
そんな声が並び、初めて訪れた来場者の多くは大屋根リングのスケールに驚き、各国パビリオンの活気に感動する。だが一方で「人混みがすごすぎてもう来たくない」と疲弊した表情を浮かべる人も少なくない。9月13日にはフランス館のナショナルデーで通路が封鎖され、怒鳴り声や子どもの泣き声が響き渡った。夢の舞台は、時に忍耐を試す修行場と化している。

 

未消化チケットと「その先」に残る課題

協会によると、9月15日時点で入場券販売は2142万枚に達し、累計来場者数は1900万人。単純計算で240万分が未消化となっている。通期パスを差し引いても「使い切れないチケット」が一定数出る見通しだが、払い戻しは行わないというルールだ。

購入者からの不満は避けられず、最後の1か月にさらに混雑が加速する可能性もある。
「未来社会の実験場」を掲げた大阪・関西万博。しかし、その背後では建設遅延、費用膨張、猛暑対策の不備、グッズ騒動、そして今の混雑と、数々の問題が積み重なった。閉幕の瞬間を迎えるとき、華やかな展示に隠れた教訓をどう語り継ぐのか。国際博覧会を再び日本に呼ぶとき、この総括を避けてはならない。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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