
半導体レーザ技術を強みに持つ東証グロース上場のQDレーザ(神奈川県川崎市、代表取締役社長:大久保潔)は、経済産業省・中小企業庁が推進する「100億宣言」に参画したことを7月9日に発表した。現在の売上高13.1億円(2025年3月期)から、10年以内に売上高を100億円超に引き上げるという「10 by 10 to 100」ビジョンを掲げている。
技術系スタートアップ発のディープテック企業が、明確な成長目標を政府施策と結びつける象徴的な動きとして注目される。
「100億宣言」とは何か
「100億宣言」は、中小企業庁が2024年に創設した成長促進施策で、企業が自発的に「売上高100億円」を目標に掲げ、成長計画を公表するものだ。宣言企業には、税制や補助金などの優遇制度に加え、経営者ネットワークへの参加、専用ポータルでの情報発信などの支援が提供される。
本制度は、これまでの小規模事業者支援とは異なり、一定の事業基盤を持つ中堅企業層に重点を置いた成長投資型の政策といえる。政策設計としては、低成長に陥った国内経済において、突破力のある企業群を重点的に支援するという意味で、方向性は正しい。
実際、本制度の対象となる企業群は、補助金・融資・官民連携の新たな潮流に乗る“投資先”としても期待が高まっており、補助金申請や成長戦略支援を行うコンサル業界にとっては、新たなビジネス機会にもなりつつある。実際に、中小企業成長加速化補助金の取得支援を目指して、最近は界隈が騒がしかった。
これまで100億企業成長ポータルでは、2025年6月9日までに申請のあった1500社のうち、事務局の確認が終わった311社を公表していた。
「100億宣言」 業績と経営の変革が後押し
QDレーザの「100億宣言」には、足元の業績回復と経営体制の刷新という追い風がある。2025年3月期決算では、売上高が前年比5%増の13.1億円と過去最高を記録。レーザデバイス事業は前年比20%増、営業利益ベースでは242%増と大幅な改善を果たした。特にDFBレーザや小型可視レーザが堅調に推移し、受注残高も3億3,500万円と過去最高水準に達している。
2024年度には創業メンバーの一人である大久保潔氏が社長に就任。中期経営計画では「黒字化の必達」と「成長可能性の追求」を両立させる方針を掲げ、量子ドットレーザの商用展開を起爆剤とした非連続成長も見据える。既存製品群による黒字化を土台に、視覚情報デバイスなど新領域への投資を継続する構えだ。
ディープテックで日本の未来を照らす
大久保社長は、「人の可能性を照らせ」という理念のもと、次世代の情報社会基盤を担う量子ドットレーザの社会実装に意欲を示している。グローバル大手企業からの引き合いも増えており、技術・製品ともに着実な前進を続けているという。政府の「100億宣言」制度とシンクロするかたちで、民間技術と官の支援の接点が生まれた意義は大きい。
制度を使いこなす企業にこそ、10年後の日本経済を支える責任が託されている。
これまで上場企業で100億宣言をした企業はこちら(2025年7月10日現在)
大倉工業株式会社
- 証券コード: 4221
- 上場市場: 東京証券取引所 プライム市場
CaSy(カジー)
- 証券コード: 9215
- 上場市場: 東京証券取引所 グロース市場
室町ケミカル株式会社
- 証券コード: 4885
- 上場市場: 東京証券取引所 スタンダード市場
Ridge-i(リッジアイ)
- 証券コード: 5572
- 上場市場: 東京証券取引所 グロース市場
ナベル株式会社
- 証券コード: 6282
- 上場市場: 東京証券取引所 スタンダード市場
日本フォームサービス株式会社
- 証券コード: 7869
- 上場市場: 東京証券取引所 スタンダード市場