
鳥取県米子市の老舗和菓子店「清月」で製造された「いちご大福」を食べた23人が、腹痛や下痢などの症状を訴えた。江戸時代の風情を今に伝える城下町で長年親しまれてきた菓子店の一品が、思わぬ形で注目を集める事態となった。米子保健所は3月4日、問題のあった尾高町店と道笑町店の2店舗を5日間の営業停止処分とし、衛生管理の徹底を指導している。
いちご大福による集団食中毒 何が起こったのか
米子保健所によると、3月3日と4日、鳥取県と島根県の4グループ・計23人が腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状を訴えた。通報を受けて調査を進めたところ、共通して食べた食品が「いちご大福」のみであることが判明。同保健所は、この和菓子が原因の食中毒と断定した。
さらに、一部の患者と従業員の便からノロウイルスが検出され、食品の製造過程で何らかの衛生管理上の問題があった可能性が浮上している。ノロウイルスは感染力が非常に強く、食品取扱者が適切な手洗いや消毒を徹底しなければ、食品を介して容易に広がるリスクがある。
いちごを介した食中毒のリスクと注意点
いちごは、食中毒のリスクを伴う食品の一つだ。特に冷凍いちごを介したノロウイルス感染の事例は過去にも報告されている。海外では、冷凍ベリー類が集団感染を引き起こしたケースもある。生食が多いため、取り扱いや保管の衛生状態が重要になる。
また、いちごは水分を多く含むため、保存状態が悪いとカビが生えやすくなる。湿気の多い場所に保管した場合、カビが繁殖し、アフラトキシンと呼ばれる毒素が生成されることもある。この毒素は肝臓に有害な影響を及ぼす可能性があり、適切な保存管理が不可欠だ。
営業停止処分の目的と店舗側の今後の対応
問題となったいちご大福は、「清月」の尾高町店および道笑町店で販売されていた。米子保健所は、感染拡大防止と再発防止のため、これらの店舗に3月4日から8日までの5日間の営業停止処分を命じた。
この期間中、店舗側は衛生管理体制の再点検を行い、従業員の健康管理を徹底する必要がある。特に、食品取扱者の健康チェックや作業場の徹底消毒、食品の仕入れ・保管方法の見直しなどが求められる。また、消費者の安全を確保するため、製造工程の改善や衛生基準の再確認が不可欠となる。
伝統の味を守る「清月」 その歴史と銘菓
「清月」は、城下町米子で80年以上続く老舗の和菓子店だ。白壁土蔵や旧商家が立ち並ぶ風情ある町並みに溶け込み、長年地元住民に親しまれてきた。初代の志を受け継ぎ、現在は二代目当主が和菓子職人として腕を磨き続けている。
この店の代表銘菓には、栗をまるごと包んだ「まるた栗」、芋焼酎をふんだんに使った「焼酎かすてら」などがあり、その繊細な味わいが評判となっている。近年では洋菓子の製造にも力を入れ、時代に合わせた菓子作りを展開している。
また、食の多様化に対応するため、近年ではアレルギー対応の和菓子や健康志向の商品開発にも取り組んでいる。地元産の素材を活かしながら、伝統と革新を融合させることに力を入れている点も、清月の特徴の一つだ。
食品業界と消費者の反応
SNS上では、「地元の名店なのに残念」「衛生管理を徹底して再開してほしい」といった声が寄せられている。一方で、「どの店でも食中毒のリスクはある。今後の対応を見守りたい」といった冷静な意見も少なくない。
今回の食中毒事件は、食品業界全体にとって衛生管理の重要性を再認識させる出来事となった。食品を扱う事業者は、日常的な衛生対策の徹底に努めることが求められる。また、消費者も、購入する食品の製造元や衛生管理体制を意識することが大切だ。
今後、清月がどのような再発防止策を講じ、顧客の信頼をどのように回復していくのかが注目される。食の安全を守ることは、単なる衛生管理だけでなく、企業のブランド価値にも直結する。地域に根付いた老舗として、どのように信頼回復を進めていくのかが問われるだろう。