
フランスの高級ブランド、エルメスが2024年12月期決算で市場予想を大きく上回る2ケタ増収を達成し、株価は急上昇。時価総額はついに3000億ユーロ(約48兆円)を突破し、欧州上場企業の中で4位に浮上した。LVMHやケリングなど競合が減収に苦しむ中で、エルメスだけが堅調な成長を続ける背景には、同社独自のビジネスモデルとブランド戦略がある。
エルメス、2024年決算で2ケタ増収を達成
米国版WWDによると、エルメス・インターナショナルは2024年12月期決算で売上高が前年比13.0%増の151億7000万ユーロ(約2兆4120億円)を記録。営業利益は8.8%増の61億5000万ユーロ(約9778億円)、純利益は6.8%増の46億300万ユーロ(約7318億円)と増収増益を達成した。
地域別売上動向
・日本:円安によるインバウンド効果もあり、現地通貨ベースで22.5%増(ユーロベースでは14.0%増)の14億3700万ユーロ(約2284億円)を記録
・米州:高額消費が好調で22.3%増の28億6500万ユーロ(約4555億円)
・フランスおよび欧州:現地顧客および観光客の需要で18.1%増の21億4700万ユーロ(約3413億円)
カテゴリー別売上
・レザーグッズ:21.5%増で主力セクターとして牽引
・プレタポルテ(衣料)・アクセサリー:それぞれ13.6%増
・香水・ビューティ:8.7%増
競合を圧倒 – LVMH・ケリングと比較して際立つ成績
LVMHやケリングは2024年の決算において減収を記録した。LVMH(第4四半期:24年10-12月)は前年比1.7%減、ケリングは「グッチ」の不調が響き24年12月期の売上高は12.1%減だった。これに対しエルメスは市場全体の減速をものともせず、同年度に2ケタ成長を達成している。
エルメスだけが市場減速を跳ね返した理由:独自戦略の強み
1. 高品質と職人技への徹底したこだわり
エルメスは、製品の約80%を自社工房で生産し、熟練職人が支える品質を徹底している。特にレザーグッズは職人1人が一貫して製作する「ワンアーティザンシステム」を採用しており、これが希少価値と顧客ロイヤルティを高めている。
2. 小売戦略と現地密着型マーケティング
デュマCEOは「地域ごとの顧客との関係構築こそ成長の基盤」と述べ、日本や中国など地域特性に合わせた旗艦店展開や限定商品を強化している。2024年は日本市場では新店舗効果により現地通貨ベースで22.5%増の売上を記録した。
3. 垂直統合とブランド独立性の堅持
LVMHなど競合が買収により多ブランド戦略を進める中、エルメスは「ブランド買収は逆効果」とし、自社生産体制を徹底。サプライチェーンを掌握することで、高品質維持と価格戦略の柔軟性を確保している。
4. 従業員への還元が生む組織力
2024年、好業績を達成した背景では、全従業員へ4500ユーロ(約71万円)の特別ボーナスを支給し、士気向上と生産性アップにつなげている。
株価も急騰:パリ市場で時価総額3000億ユーロにも
2025年2月14日、パリ市場でエルメス株は一時4.1%上昇し、上場来高値を更新
時価総額は3000億ユーロ(約48兆円)を突破し、欧州上場企業4位に浮上した。
今後の展望と課題:関税問題と価格改定
ロイターの報道によると、デュマCEOは、米国関税引き上げの影響について「引き上げられれば価格に転嫁する」と述べ、2025年には6~7%の値上げを予定しているとのこと。また、オートクチュールは2026年後半~2027年前半、スキンケア事業は開発中であることも明かした。
まとめ
エルメスは、職人技の維持、地域密着戦略、垂直統合、そして従業員への投資という4つの柱で競合を大きく引き離した。エルメスは市場減速下でも業績を伸ばし、ブランド価値を堅持したことが、株価上昇と時価総額3000億ユーロ達成につながっている。この結果は、経営理念と実行力が市場で通用することを証明するものだ。
今後もオートクチュールやスキンケア事業など新分野への展開が期待され、さらなる成長が注目される。