NHKも関与? 言論封じ込めとHIV支援問題を追う
![USAIDについて報道しない自由を行使するマスメディア](https://coki.jp/wp-content/uploads/2025/02/WHITE-HOUSE-USAID-RELEASE-TOP.jpg)
アメリカの主要対外援助機関である「米国国際開発局(USAID)」をめぐる解体・閉鎖騒動が、世界的な波紋を広げている。SNSでは「#USAID」の投稿が250万件を超える勢いとなっているが、日本のメディアはほとんど報じていない。
その背景には、USAIDが6千人を超える公認ジャーナリストに2億6800万ドル(約350億円)を支払い、同時に保守的で独立系のメディアを黙らせるために数百万ドルを投じていた事実が発覚したことがある。
トラステッド・ニュース・イニシアティブ(TNI)とは
さらに、2020年3月には、ビッグテックとレガシーメディアの間で「トラステッド・ニュース・イニシアティブ(TNI)」と呼ばれるパートナーシップが結成され、「偽情報神話を確実に阻止するために協力する」と合意していた。
実際には「偽情報対策」と称した情報検閲や言論弾圧が行われていた疑いが強く、TNIにはNHKも参加していたとされる。
トランプ大統領とイーロン・マスク氏がUSAID閉鎖を推進
USAIDは1961年の設立以来、世界100カ国以上で医療支援や食料支援、教育支援など幅広い活動を展開してきた。しかし、2025年に2期目の大統領に就任したドナルド・トランプ氏は「海外援助は無駄だ」と主張。さらに、トランプ氏から「政府効率化省(DOGE)」のトップに指名された実業家イーロン・マスク氏は、USAIDを「腐敗したウジ虫の塊」と呼び、閉鎖を強く推し進めている。
AP通信によると、トランプ政権は1万人以上いるUSAID職員を約300人まで削減する計画を示し、多くのスタッフが休暇扱いとされ、業務へのアクセスも遮断された。
2月4日には公式サイトが一時閲覧不能となり、翌日、海外駐在職員に「30日以内の帰国」を命じる通知が掲載された。2月7日には、連邦地裁が差し止め命令を出し、一時的に計画は停止されたものの、今も混乱が続いている。
ジャーナリスト買収と情報検閲の疑惑 NHKはTNIに参加か?
ホワイトハウスの声明などによると、USAIDはこれまでに6千人を超える公認ジャーナリストに約2億6800万ドル(約350億円)を支払っていたことが明らかになった。同時に、保守的で独立系のメディアを黙らせるために数百万ドルを投じていたことも発覚し、言論封じ込めの疑惑が浮上している。
さらに、2020年3月には、ビッグテック企業とレガシーメディアが「偽情報神話を確実に阻止するために協力する」として、「トラステッド・ニュース・イニシアティブ(TNI)」を設立していた。表向きは「偽情報対策」を掲げていたが、実際には都合の悪い情報の検閲や言論弾圧を行っていたとの批判がある。このTNIには日本のNHKも参加していたとされるが、NHK側はこれについて公式な説明を行っていない。
海外支援の「無駄遣い」とHIV支援の是非
![USAIDの無駄について ホワイトハウスHP](https://coki.jp/wp-content/uploads/2025/02/WHITE-HOUSE-USAID-RELEASE.jpg)
ホワイトハウスは2月3日に発表した声明の中で、USAIDが「指定テロ組織と関係のある非営利団体への支払い」「グアテマラのLGBT活動支援への巨額の出費」「武漢研究所関連の研究費提供」など、多額の資金を無駄にしてきたと批判。
確かに、ホワイトハウスのHPで開示された浪費と濫用の一例は強烈だ。
・「セルビアの職場とビジネスコミュニティにおける多様性、公平性、包摂性を推進」するために150万ドル
・アイルランドでの「DEIミュージカル」制作に7万ドル
・ベトナム向け電気自動車に250万ドル
・コロンビアの「トランスジェンダーオペラ」に4万7000ドル
・ペルーの「トランスジェンダー漫画」に3万2000ドル
・グアテマラの性転換と「LGBT活動」に200万ドル
・エジプトの観光に600万ドルを寄付
・監察官が調査を開始した後でも、指定テロ組織と関係のある非営利団体に数十万ドルが支払われる
・武漢研究所の研究に携わっていたエコヘルスアライアンスに数百万ドルを寄付
・「シリアのアルカイダ系戦闘員に何十万食もの食事が届けられた」
・発展途上国における「パーソナライズされた」避妊具の印刷への資金提供
・「アフガニスタンでの前例のないケシ栽培とヘロイン生産を支えるために使われる灌漑用水路、農機具、さらには肥料」に数億ドルを投じ、タリバンに利益をもたらしている。
見ているだけで眩暈がするリストだが、このご時世、DEIやLGBTQなどの支出が多くの人にとって無駄に映るだろうことは明らかであり、反ESGとなったグローバル潮流のもと、わかりやすい「やり玉」にあがってしまっていることは間違いない。そして、筆者が見ても、無駄でないとは言い切れない……。しかし、同時に、南アフリカへの資金援助も凍結されることが決まった。
USAIDの資金によって支えられてきた南アフリカのHIV支援は、世界最大規模の感染者数(800万人超)を抱える同国にとって生命線であった。周辺国のザンビアやマラウイでも国民の1割以上がHIVに感染しているとされ、USAIDの医療支援が途絶えれば深刻な事態を招くことが予想される。
トランプ大統領やマスク氏は、USAIDの「LGBT関連支出」を問題視しているが、HIV治療支援がそこに含まれるのかどうかは明らかにされていない。
共和党内でも意見が分かれる 「必要な支援は復活」への期待
共和党内でもトランプ大統領はやりすぎという意見がでている。ロイターの報道によると、トランプ政権はUSAIDを国務省に統合する案も検討しているが、議会の承認なしに機関を廃止することは難しい可能性があるとのこと。元USAID長官のアンドリュー・ナツィオス氏は、MSNBCのインタビューで「早期警告システムを失うことで、アメリカ自身が代償を払う」と警告している。
また、ある共和党議員は「過剰な支出は見直すべきだが、必要な人道支援まで完全に削るのは誤り」と指摘。特に南アフリカのHIV支援については、「必要なプログラムだけを選別し、再び予算を確保するべきだ」という声も強まっている。今後、USAIDの廃止後に人道支援の一部を復活させる可能性もあり、政権の方針次第で大きく展開が変わる見込みだ。
報道されない理由と今後の行方
USAIDの解体問題が世界的に大きな話題になっている一方で、日本のメディアはほとんど報じていない。その背景には、USAIDからの資金提供疑惑や、NHKを含むTNIへの参加が影響している可能性がある。SNS上では「なぜ日本だけ沈黙しているのか」と疑問を持つ声が広がっており、今後メディアの報道姿勢が変わるのかどうかも注目されている。
また、USAIDの廃止によって、各国で停止される支援のうち「本当に必要なもの」がどのように扱われるのかも焦点となる。トランプ政権の進める改革の行方と、それに対する議会の対応に今後も注視が必要だ。