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経済産業省、「グリーン鉄研究会」報告を発表 GX推進の具体策が明らかに

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経済産業省
経済産業省(PhotoACより)

経済産業省は1月24日、「GX推進のためのグリーン鉄研究会」の報告を発表した。この研究会は、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、鉄鋼業の脱炭素化と市場拡大を目指して昨年10月に設立され、全5回にわたる議論の末に具体策をとりまとめた。

鉄鋼業は日本全体の温室効果ガス排出量の約1割を占める産業であり、GX(グリーントランスフォーメーション)推進のカギを握る分野として注目されている。

 

鉄鋼業が直面する課題 – 巨額投資と高コスト

日本の鉄鋼業は、年間約1億3800万トンもの温室効果ガスを排出しており、産業部門全体の約38%を占める。特に高炉プロセスは、鋼材1トンの製造につき約2トンのCO₂を排出しており、脱炭素化が喫緊の課題だ。一方で、脱炭素技術の導入には巨額の設備投資が必要であり、特に初期段階では従来製品に比べて製造コストが大幅に上昇するという現実が立ちはだかる。

また、鉄スクラップの供給量は年間約4400万トンで、そのうち685万トンが海外に輸出されている。鉄スクラップを最大限活用することが求められているが、これだけでは国内の鉄鋼需要を満たすには不十分であり、引き続き鉄鉱石の還元プロセスを改善する必要がある。

 

グリーン鉄市場拡大の具体策 – 需要と供給を支援

研究会の報告では、グリーン鉄市場を拡大するため、需要側と供給側双方への支援が提案された。
まず、需要家への支援として、政府調達におけるグリーン鉄の優先使用が挙げられる。公共事業においてグリーン鉄の採用を義務化することで、市場需要を創出する仕組みだ。また、クリーンエネルギービークル(CEV)補助金に、グリーン鉄を利用した自動車製造業者へのインセンティブを付加し、利用拡大を後押しする案も提示された。

一方、供給側には技術革新が不可欠とされる。報告では、高炉水素還元技術の導入や革新的な大型電炉の開発支援が提案されている。これにより、従来型高炉と同等の性能を持ちながら、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する製造技術を実現することが目指される。政府は、設備投資の一部を補助する形で支援を行い、新技術の商業化を後押しする方針だ。

 

GX価値の訴求と国際連携の重要性

報告では、GX推進のためのグリーン鉄が持つ「GX価値」を国内外に訴求する必要性が強調された。具体的には、製品の環境負荷を数値化した「カーボン・フットプリント(CFP)」を活用し、世界基準のルールを整備することが求められる。経済産業省は、ISO(国際標準化機構)やworldsteel(世界鉄鋼協会)と連携し、CFPの算定ルールを策定することで、グリーン鉄が国際的にも低環境負荷製品として評価される仕組みづくりを進める考えだ。

さらに、建築物のライフサイクルアセスメント(LCA)手法を導入し、国の施策に反映させることで、グリーン鉄の使用拡大を図る方針も示された。こうした取り組みは、建築分野だけでなく、自動車や不動産業界にも波及し、国内外の需要家からの支持を得ることが期待されている。

 

脱炭素化と経済成長の両立へ

今回の研究会報告は、鉄鋼業における温室効果ガス削減の方向性と、グリーン鉄市場を拡大するための政策の枠組みを示すものだ。経済産業省は、この報告を基に具体策を進め、脱炭素化と経済成長を両立させる社会の実現に向けた取り組みを加速する意向を表明している。

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サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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