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川崎重工、潜水艦裏金問題で12億円所得隠しへ

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川崎重工 サステナビリティ HP
川崎重工のコーポレートサイトの サステナビリティ より

川崎重工業(川重)が海上自衛隊の潜水艦乗組員らに物品・飲食代を裏金から支出していた問題で、大阪国税局が約12億円を「交際費」とみなし、経費として認めないと指摘した。川重はこれを受け、修正申告する方針だ。

2023年3月期までの6年間が対象となり、約12億円の全額が所得隠しと認定される見通し。川重は追加の税金負担を見越し、費用として約6億円を計上している。「税務調査に関わる内容は回答を控えるが、修正申告は年度内にしたいと考えている」と報道されている。

この問題は、川重の神戸工場で潜水艦の検査・修理を担当する「修繕部」が、遅くとも約20年前から下請け数社に資材などの架空発注を繰り返し、裏金を作成していたことが発覚したものだ。海自側が発注した修理などの防衛予算の一部が裏金化されていたことになり、国税局はその使途を調査してきた。

40年前から続く不正取引の実態

毎日新聞の報道によると、川重による架空取引は約40年前から行われていたという話もでている。当初は業務に必要な物品の購入だったが、約20年前からは海自隊員への私物提供にも使われていたことが明らかになったとのこと。提供された物品には、家電製品やゲーム機、釣り具なども含まれていたという。海自側の要求が次第にエスカレートし、癒着を深めていたとみられる。

川重は6月に外部有識者による特別調査委員会を設置し、不正の実態を調査。週内にも調査結果を公表する見通しだ。不正資金の一部は、取引先が協力会社を使って帳簿に計上しないよう操作していたとみられる。

癒着の構図と組織風土改革への課題

潜水艦の修理では、海自隊員らが数ヶ月にわたり川重社員と共同作業を行う。川重の宿泊施設に滞在して業務を進める特殊性から、両者に仲間意識が生まれ、癒着が広まったとみられる。供与を受けた海自隊員は相当数に上るとみられるが、調査委は具体的な人数までは特定できなかった模様だ。防衛省は7月、防衛監察本部による「特別防衛監察」の実施を表明し、潜水艦の乗組員ら約1500人を対象にしたアンケート調査などを実施している。

川重の橋本康彦社長は20日、神戸新聞社の報道で、「不正をしたくてもできない仕組みをつくる」と述べ、組織風土の改革にも取り組むと強調したことが伝わっている。裏金問題の調査報告については「年内の公表を目指す」とも言及している。

エンジン検査不正問題の概要

潜水艦裏金問題に加え、川重は商船向け大型エンジンの検査データ改ざん問題も抱えている。8月に発覚したこの問題では、燃費データを改ざんしていたことが明らかになった。橋本社長はこれらの問題について、「コンプライアンス体制の不十分さを突き付けられた」と説明。数値を書き換えられないよう自動化したり、データを触ればすぐに分かる仕組みを導入するなどの再発防止策を挙げた。また、不正がないか監査する際は、当該部門の資料ではなく別部門の社員が作成した資料を用いるとした。

防衛事業での不正防止については、11月1日付で社長直轄の「防衛事業管理本部」を新設。ガバナンスやコンプライアンスを一括して監査する体制に変更した。「守秘義務を守りながら、われわれ自身が厳しい目を持って管理していく」と述べている。不正を許さない組織風土の構築については「時間がかかる」としつつ、「トップが身をもって示すことが大事」と強調。人事制度も強化し、「何か不正があったとき、うみを出した方がいいと思える仕掛けをつくる」と述べた。一連の問題に対する自身の責任については「発表するタイミングでお伝えする」と述べるにとどめた。

SNS上の反応と今後の展望

一連の不正問題を受け、SNS上では批判の声が上がっている。「日本の海防の要である潜水艦の建造・保守に関わる企業でこのような不正が行われていたとは驚きだ」「癒着体質を根絶しないと再発防止は難しいのではないか」といった意見が多数見られる。

また、「三菱も含めて過去の接待は全て税務処理し、潜水艦乗員の福利厚生は国が費用を出すべき」という意見や、「公共事業の赤字受注と過剰な黒字はどちらも問題。地方自治体レベルでも調査が必要」といった指摘も見られる。

潜水艦建造は、川重と三菱重工の2社のみが行える特殊な業界だ。防衛省は毎年度1隻ずつ潜水艦を発注し、2社は隔年で交互に建造している。価格競争がないこの状況が、不正の温床になった可能性も指摘されている。今後、旧型艦の退役と新規建造が続く中で、防衛産業における透明性と公正性の確保が改めて求められている。不正の全容解明と再発防止策の実効性が問われることになるだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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