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第24回)「サステナブルデザイン」で空間を環境配慮型に

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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株式会社 乃村工藝社サステナブルデザインラボ部長後藤慶久
乃村工藝社 サステナブルデザインラボ 後藤慶久氏

建設内装事業は、環境に大きな影響力を持つ業界であると言われています。世界の二酸化炭素(CO2)の40%は建設・内装など「空間事業」から排出されており、欧米諸国ではいち早く改善に取り組んでいます。例えばオランダやデンマークでは建築時のCO2排出量の上限規制が始まっており、これまでのように経済合理性やデザインだけを考えた建築は難しくなっています。建築や内装の分野では、環境に配慮した取り組みとして「サステナブルデザイン」も取り入れられるようになりました。

サステナブルデザインとは、人間の活動が​地球環境に負荷をかけずに、将来にわたって良い社会と自然環境を維持していくことを目指した取り組みのことです。乃村工藝社でも環境配慮の取り組みとして空間のサステナブルデザインを推進しています。

オランダではサステナブルデザインの先進事例も

世界の先進的な事例を見ると、例えば、オランダの建築家集団「MVRDV」が設計したオランダ・アムステルダムの「VALLEY」があります。VALLEYは住宅、オフィス、商業スペースなど、複数の用途が組み合わさった複合施設です。コンピューターを活用した自動設計技術により廃棄物が出ない建材の使い方が徹底され、太陽光パネルの設置や高性能断熱材が使用されるなどエネルギー効率も改善しています。

ビル全体に緑化されたバルコニーや屋上庭園もあり、これが都市のヒートアイランド現象の緩和や空気質の改善に寄与しています。デザインに環境に配慮した仕組みを取り入れることで、ビル不動産価値が上がり、経済的なメリットも増えています。まさに「三方良し」の事例と言えます。

Valley
2022年にオランダ・アムステルダムで建設されたValley
© Ossip van Duivenbode

建材や内装素材で排出されるスクラップを再生

乃村工藝社では、定量的な技術研究をしながら、当社の強みであるクリエイティビティとデザインの力を駆使して、クライアント、サプライヤー、そして空間を体験したユーザーの皆さんに環境課題を身近に感じてもらうよう努めています。

その活動の一つが2023年に発表した「SCRAPTURE」という「捨てるから繋げる」をテーマにしたアート・ファニチャーです。これは、建材や内装素材で排出されるスクラップを再生し、家具としてリユース(再利用)するプロジェクトです。透明なビニールをバルーン状に成型し、その中に、カーペット片、プラスチック片、古釘などの建材の廃棄物を封入、私たちが普段みようとしてこなかった不要なモノ=廃棄物をデザインし、付加価値を高めています。

SCRAPTUREは現在さまざまなイベントに出展しています。自動車関連のイベントでは自動車工場から出る廃材を封入し、モノ作りの過程で出る未利用資源について考えるきっかけを生み出しました。先日はタイ・バンコクのイベントに出展し、文化の違う国で新しいモノ作りの在り方について交流してきました。

SCRAPTURE
SCRAPTUREはさまざまなイベントに出展

国内外で建物の環境配慮の推進強まる

こうしたイベントは華やかですが、瞬間的にモノの消費が消費され廃棄されるという負の側面があります。しかしSCRAPTUREは中身を入れ替えることで、継続的にメッセージを発信していけます。そしてバルーン製なので、空気を抜いて小さく畳めば、移動に関わるCO2排出も軽減できるという設計になっています。(※)

※参照:SPECIAL INTERVIEW | 乃村工藝社

環境に配慮した建物などの空間事業を増やし、CO2排出を減らす動きは国内外で強まっています。EU(欧州連合)では30年にすべての建物を対象に、原材料の調達や製造、廃棄までを環境の観点から評価し、報告することが義務付けられる予定です。日本でも、国土交通省が旗振り役となり22年に「ゼロカーボンビル推進会議」を設立しました。環境課題は地球全体のテーマであり、私たち乃村工藝社など一部企業の取り組みだけでは不十分です。私たちは空間のサステナブルデザインを通じてメッセージを発信することで、企業や個人に環境配慮への意識を根付かせ、より良い未来を作っていきたいと考えています。

SDGs新時代を読むの他の連載は以下から見ることができます。

SDGs新時代を読む

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ライター:

クライアントであった欧米のファッションメゾンが2020年あたりから、環境配慮を先進的に進めていた影響で空間の環境分野について深くかかわり始める。素材メーカーとの商品開発、環境起点のプロジェクト開発、社内外での啓蒙セミナーなどに従事し、空間創造事業におけるサステナブル・デザインを実装するために活動を続けている。

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