経営理念の策定は4割、コンプライアンス方針未作成も半数超
Green(グリーン)とDigital(デジタル)を活用した中小企業の変革を目指すフォーバルGDXリサーチ研究所(東京・渋谷)は8月23日、中小企業のESG経営に関する調査結果を発表した。
企業統治(G)に着目した調査の結果、経営理念の策定やコンプライアンス体制の整備など、基本的な取り組みが遅れている実態が明らかになった。
調査によると、企業の存在意義を示す経営理念を策定している企業は41.5%にとどまった。また、コンプライアンス・倫理に関する社内方針を作成していない企業は54.7%に達し、半数以上が未整備という実態が浮き彫りになった。
これらの結果を受け、フォーバルGDXリサーチ研究所の平良学所長は、「企業の存在意義を示す経営理念を策定している企業が半数にも満たない、といった結果が示すように、今回のG(企業統治)においても中小企業の取り組みはまだこれから、という状態です」と指摘する。
税務の透明性確保についても、対応できていない企業が31.9%にのぼった。不正行為に関する社内方針を「定めていない」企業も42.5%と多く、対応の遅れが目立った。
認証取得、未着手企業が多数 ESG関連はわずか1%未満
外部機関による認証・認定取得状況を見ると、「一つも取得していない」企業が68%と最も多かった。取得が多い認証・認定を見ると、健康経営に関する認定・認証(健康優良法人認定等)が180社、DXに関する認定・認証(DX認定、DXマーク認証等)が99社、GXに関する認定・認証(ISO14001、KES等)が42社だった。
一方、今回のテーマであるESGに関する認定・認証(ESGマーク認証等)は8社と、わずか1%にも満たない結果となった。
業種別に見ると、建設業は他業種に比べ、税務の透明性確保や専門家活用が進んでいる傾向が見られた。2024年問題への対応など、業界全体で法令順守の意識が高まっていることが影響しているとみられる。
平良所長は、「世界中の投資家が注目をしており、大手企業はESGについての取り組みや発信を優先的に進めています。そして、ESG経営の対応は大手企業だけでなく大手企業のサプライチェーンに含まれている中小企業にも求められ、その流れは今後ますます加速していきます」と警鐘を鳴らす。
その上で、「まだ進んでいない中小企業のESG経営ですが、逆に早く取り組むことにより差別化できる可能性も秘めています。今回の研究レポートが今後の経営活動の一助となれば幸いです」と期待を込めた。
今回の調査は、2024年4月1日から5月31日にかけて、インターネットを通じて実施。全国の中小企業経営者990人から有効回答を得た。