おふたりは、中学時代からの同級生だとうかがいました。コンビを組む前後で、関係性に変化はありましたか？

それは変わりましたね。高野は中学の頃から割といじられキャラだったんですけど、俺はいじらなかったんで。かわいそうだと思って。

かわいそうってなんだよ。友達とは普通に仲良くしてましたよ。でもいじられたら言い返してたんで、それは今の形に近いと思いますね。お笑いも子どもの頃から好きでした。

ただ、その頃は高野と俺と仲良いやつの4人組で「この肉まん美味しいね」「今日あったかいね」とか当たり障りのない会話をしていて……。

つまんねえ4人組だな！（笑）

そういう4人組でしたね、本当に（笑）。高野とも「あの番組見た？」「あー、見た見た」とバラエティ番組の話をするくらいで、ボケたりツッコんだりはなかったです。

友達のなかには「こいつとコンビ組んでみたい」と思う人もいたんですが、高野を誘う気持ちはなくて。芸人になる前は、お互いに別の同級生を誘ってたくらいです。

では、そこからどのようにコンビ結成に至ったのでしょう？

ああ、それは誘ってないんですよ。まだコンビを組んでないです。

それ言いたがるよな。

どういうことですか？

話は遡るんですが、俺、大学3年生のときにそれまでずっと続けていた水泳を引退したんですね。大学も辞めて、今後はやりたかったお笑いをやろうと。

それで高野や地元の友達と飲みに行った日に「俺、水泳引退して大学辞めたわ。芸人やろうと思ってる」って話したんです。その帰り道、高野から電話がかかってきて近くの公園に呼ばれて。

……。

公園のベンチに座ったら、高野が急にモジモジしだして「お前の気持ちは受け取った」と（笑）。

それで「すぐに答えを出すのが誠意だと思うから言うけど、俺もお笑いやるよ」「そっか、お前もやるんだ」みたいな会話になったんです。

そしたら翌週くらいにお笑い養成所のパンフレットを持ってきて「一緒にいこう」って言われたので「コンビなんだ！？」と思って。

いや、俺はその飲み会で岸が誘ってくれたと思ってるから！少なくとも俺がお笑いやるって言ったら「はい」って感じだったじゃん。

俺にしてみれば、お笑いをやりたい気持ちはあったけど、教員免許を取ろうとしてたし、このまま学校の先生になっていくのかなって思ってて。だから「岸、よく言ってくれた！」って感覚でした。

コンビの関係性を、今はどう感じていますか？

同級生っていうのもあると思いますが、コンビ仲は悪くないです。
些細なケンカはちょくちょくしてるんですが、長続きはしないんですよね。

昨日とか、漫才中にツッコミでグーパンチされたんですよ。それで俺が「痛い痛い！」ってしてたら、終わった後に「舞台上で痛いとか言ってんじゃねえよ」って言ってきて。そっちがパンチしてきたくせに。

それで今度は岸が殴り返してきたんで、「胸殴るのはちげえだろ！」みたいなね。

（笑）。いいコンビ関係を続けられるのには、なにか理由があるのでしょうか？

腹くくってるだけだと思います。売れようが売れなかろうが、こいつとやってくしかないんだよなっていう。

そうっすね。同級生と組んだ時点で、解散したら他の人と組もうって考えにはならない気がします。

あとは、中学時代からやってきたふたりの歴史があるわけじゃないですか。だからノリを共有できるし、思い出も笑いに変えられるんですよね。

たしかに。それは強みだよね。

コンビってネタ以外のところも大きいと思うので。その意味では、これほど理解しあえる相手はいないのかなと思います。

まあ、これまでの歴史を無駄にしたくないだけですよ。

ここからは「感謝を伝えたい人」についてお聞きできればと思います。まず、高野さんはいかがでしょうか。

ひとりじゃなくてもいいですかね。いろんな人に感謝はあるんですが、まずは同じマセキ（芸能事務所）の三四郎さんです。

1番最初に売れていく背中を見せてくれた先輩ですね。ふたりとも僕らが1、2年目のときからずっとご飯や遊びに連れていってくれてますし、その後は番組にも呼んでくれて。

最近は「小宮さんの話を教えてください」というアンケートが来たり、その繋がりで出演させてもらうことも多いです。

でも最初に声をかけてくれたのは、相田さんだったよね。

そう。初めてお会いしたのは、僕らがまだ芸歴1年目の頃です。岸とふたりでお手伝いしてたライブに三四郎さんが出てて、相田さんが初対面だった僕らに「飲みいく？」って声をかけてくれたんです。

俺も高野も大学までずっと体育会系だったので、当時は、先輩後輩関係はちゃんとしなきゃって意識がかなり強くて。

俺らが1年生なら、相田さんは4年生かOBクラスの大先輩なので、初めはすごく緊張してましたね。

だから居酒屋で「好きなの食べろよ」って言われても、全く料理に手をつけられなかったです。それでひたすら相田さんの話に相槌打って聞き続けていたら、「お前らと飲みにいっても全然楽しくない！」と。

反省して次から「相田、この野郎！」みたいにツッコんだら笑ってくれて、このノリでいいのかと安心しました。相田さんは、芸能界は優しい場所だといち早く教えてくれた人でもありますね（笑）。

芸能界に入ったばかりの頃からよくしてもらっている先輩なんですね。

そうですね。さっきの話じゃないですけど、小宮さんとの間でも思いきりツッコんで生まれた成功体験がありました。

1〜2年目のお笑いライブで、僕が小宮さんからずっといじられ続けていて、「いい加減にしろよこの野郎！」「なんでお前が売れてるんだよ！」とかツッコんだら、お客さんにウケて小宮さんも大喜びっていう。

でも今思えば、あれは“怒りツッコミ”でもなく、ただのブチギレだったと思います。ウケた後、なんなら舞台からハケた後も怒ってましたからね（笑）。

ツッコんでも終わらないし、マジで長かったんだよ……。とはいえそんな感じで、僕をいじってくる小宮さんに応戦することでウケて爪痕を残せた、みたいなことが何度もあったんです。

入り口は相田さんでしたけど、今は相田さんにも小宮さんにもめちゃくちゃお世話になってますね。

三四郎さんのほかにも感謝している方がいるとのことで、その方のお話もうかがいたいです。

もうひとりは、きしたかののYouTubeチャンネルで企画や撮影、編集をしてくれている大河内ってやつです。

YouTubeは大河内が声をかけてくれて始めたんですけど、2022年にリニューアルして、ウソの動画広告を延々と見させられたり、漢検を受けるつもりが会場じゃなく“海上”に連れて行かれたり、生配信で電話番号や住所を晒されたりして……。

めちゃくちゃなことされて、人生を捻じ曲げられて有名になってきたんですよ、俺！感謝とは言いましたけど、変な感じですよ。

でも、今回はその感謝をちゃんと伝えた方がいいんじゃない？

人生めちゃくちゃにしてくれてありがとうって、おかしいだろ！
いや、でもそうか。個人情報をさらしてくれてありがとうか！！（笑）

実際、『高野さんを怒らせたい。』にリニューアルした影響は大きかったですね。最近テレビに呼んでもらっているのもYouTubeきっかけが多いですし、フワちゃんルートと同じYouTube芸人です。

そもそも大河内さんとYouTubeを撮り始めたのには、どんな経緯があったのですか？

大河内はもともとマセキの後輩で、僕らの1年後に入ってきたんですよ。芸歴は大河内の方が長かったんですが、僕らの方が年上だからか敬語で話していて、今もそんな感じですね。

大河内は、出会った頃からずっと高野のことを「面白い、タレント性がある」って言ってくれてて。

あいつが芸人を辞めてからも「ネタを一緒に考えさせてください」って来てくれて、3人でネタを作ってた時期もあるんです。

それ以降はたまに連絡をとる程度だったんですが、5年ほど経って「YouTubeやりませんか」と突然連絡がきました。

ABEMA『チャンスの時間』に出演したときの俺らの動画を見て、こういうきしたかのを見たい、でもその媒体がないから自分たちで作ろうと思ってくれたみたいです。

でも、当初はなかなか再生数が伸びなかったんですよ。

それで改めてYouTubeをきしたかののPRになる場所にしようと考えたときに、高野の良さである“怒りツッコミ”をわかりやすく伝えたいなと。そこで今のドッキリという形になり、再生数が伸びていきました。

特に2022年の夏に「ラヴィット!」に出させてもらって軌道に乗った感じはありますね。同じ2022年の秋頃には、再生数が初めて100万回を越えました。

岸と大河内の2人体制になってからあっという間に評価されたので、トリオがコンビになった途端に売れ出したような虚しさはありますけどね。

大河内さんなくして、YouTubeのヒットはなかったわけですね。

そうですね。企画もそうですし、動画撮影も編集も全部やってくれてるんで。

もしも大河内がYouTubeやめたいって言ったら、一旦止めはしますけど……。
他にやりたいことがあるって言われたら応援するほかないし、YouTubeは休止ですよね。

岸さんが思う「感謝を伝えたい人」はいらっしゃいますか。

さっき話に出たABEMAの『チャンスの時間』ですね。MCの千鳥さんはもちろん、スタッフの方々、関わってくださってる全員に感謝です。

というのも『チャンスの時間』だけは、僕らが売れてない時期からずっと定期的に呼んでくれていて。もっといえば、この番組にしか出演してない期間が長くあったんです。

本当に、メディアの仕事は全然なかったですね。たまに街で声をかけてもらえても絶対に「チャンスの時間見ました」でしたから。

でも『チャンスの時間』だけは、めちゃくちゃ愛してくれてる感じがあるんですよ。
少し前には、高野が婚約相手の親御さんに挨拶に行くのにも密着してくれました。

“超お笑い番組”だからそこの緊張感はありますけどね。収録では毎回、目の前の千鳥さんを笑わせたいってことに精一杯です。

スタッフさんも面白かったときは「よかったね」とか声をかけてくれるんですが、そうじゃないときは「お疲れさま」の一言に「次は決めてくれよ」って雰囲気を感じます。

それでも、変わらずに経験を積ませてもらえていることへの感謝は大きいですね。
自分たちを面白がって定期的に呼んでくれる人たちがいることで、精神的にも支えられたなと思います。

特に印象に残っていることはありますか？

作家の大井さんという方が飲み会の場を作ってくれたりとか、なにかと気にかけてくださって嬉しかったです。

あと、これはマジで嫌だったんで正直ありがたいとは言いにくいですけど……。日本で最初に新型iPhoneを買おうと表参道のアップルストアに4日前から並ぶ企画は、これまでで1番反響がありました。

そのときはTwitterで「#高野のiPhone」がトレンド入りしたんですよ。

でも紆余曲折あって、結局iPhoneを買えずに終わってますからね。スタッフさんも買えないことに全然気づいてなくて。ある意味、みんなで同じ方向を向いてくれる番組ではありますよね（笑）。

活躍を広げているおふたりですが、最近はどんなお仕事に楽しさややりがいを感じていますか？

うーん、楽しい仕事……。

まあそうか、ドッキリの仕事を楽しいって言っちゃうと、よくないもんな（笑）。

いや、自分の立場になって考えてごらんよ！何も知らないで行ったら変なことが起きて、はいOKですって帰されるんだから。

今はたしかに過酷な仕事も多いですけど、それを面白かったって言ってもらえたときは頑張ってよかったと思いますよ。あとはラジオ（TBSラジオPodcast番組『N93 ブタピエロ』）も楽しいですね。

「ブタピエロ」は作家さんやディレクターさんとも年齢も近くて、部活の先輩後輩が部室で喋ってるような雰囲気なんです。

俺がふざけて高野が笑ってるだけみたいなノリもあって、こんな楽しい仕事があっていいのかなって思うよね。しかもそれを「面白い」って言ってもらえるっていう。

そうですね。こんなに楽しくて人にも喜んでもらえるとかWin-Winじゃんって。今までが表参道に4日間並び続けるみたいな、自分のLoseで人にWinを与える仕事が多かったので（笑）。

……でも俺の憩いの場かと思いきや、こいつらはラジオでもドッキリを仕掛けてくるんですよ。「リスナーが暴走しちゃって」とか「がっかりだったね」とか言うな。お前らが仕込んでるんだから。

最後に、今後チャレンジしていきたいことをお聞かせください。

今はドッキリ系やガッツリお笑い系の番組が多いので、それ以外の番組でも呼んでもらえる芸人になりたいですね。

高野にはクイズ番組に出てほしいです。YouTubeで漢検企画もやってますし、高野って本当に漢字が得意なんですよ。

頭を柔らかくして考える“なぞなぞ系”のクイズだったら、岸も得意ですし。

クイズ番組だったら、めちゃくちゃ楽しみますからね、僕ら。本気で勝ちにいこうとするだろうし、ダメなときは本当に悔しがるし。そういうWin-Winの仕事もしていきたいですね。

あとは、おいしいものを食べて感想を言う、みたいな？

誰が見てえんだよ、俺らがおいしいものを食べてるところを。おいしいものを食わすな！毒でいいんだよ。人が食えねえものを食って「おいしいです」「いや、おいしいわけねえだろ！」でいいんだから、俺らは。