ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

株式会社キミカ

https://www.kimica.jp

〒104-0028 東京都中央区八重洲2-4-1住友不動産八重洲ビル8F

03-3548-1941

法人情報

名称株式会社キミカ
代表者名笠原文善
住所〒104-0028 東京都中央区八重洲2-4-1住友不動産八重洲ビル8F
URLhttps://www.kimica.jp
業種化学工業
電話番号03-3548-1941
資本金1億円
社員数173名 (キミカグループ 計378名)
設立1941年5月

SDGs

  • 01. 貧困をなくそう
  • 07. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 12. つくる責任、つかう責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 14. 海の豊かさを守ろう
  • 15. 陸の豊かさもまもろう

法人メッセージ

株式会社キミカ技術開発本部 本部長 常務の宮島千尋さん

海の恵みで持続可能な事業に取り組むSDGsのフロントランナー

国内アルギン酸製造のオンリーワン企業・株式会社キミカは、太平洋戦争の気運が高まる1941年、未利用資源の有効活用を目的として創業。長野県出身の創業社長 笠原文雄氏は、文系でありながら独学でコンブやワカメなどに含まれるアルギン酸の工業的製造方法を研究、後に東京大学から工学博士の学位を授与され、「アルギン酸の父」と呼ばれるまでになりました。日本で初めてアルギン酸の工業的生産に成功したキミカは、その後80年にわたりアルギン酸の専業メーカーとして操業を続け、品質の向上や安定供給に努めてきました。今回は、技術開発本部 本部長 常務の宮島千尋さんに、キミカにおけるサステナビリティやSDGsに対する取り組み、ステークホルダーエンゲージメントなどについて話を伺いました。

海の豊かな資源を大切にしたいという強い想いで創業

――

御社は、海の豊かさを大切にする事業をされていると伺っています。御社の事業や強みについてお聞かせください。

宮島

長野県には海がありませんが、意外にも海藻産業に携わる企業は長野県に多いのですね。海の物を大切に使おうという思いは、持たざる者のほうが強いのではないでしょうか。戦前、房総半島の海岸に打ち上がる大量の海藻は、食べても美味しくないことから食用にはならず、燃やしてヨードや加里(カリウム)の原料にするくらいしか使い道はありませんでした。長野県出身だった創業社長は、海藻がただ燃やされて灰になっていく様子を見て、とてももったいないと感じたのだと思います。未利用の海藻資源を無駄なく有効に活用するという創業社長の思いを実現し、発展させていったのが、弊社のアルギン酸事業です。

戦後、GHQが日本の復興のために、弊社へアルギン酸の製造技術を公開するよう命じたことがありました。資源の少ない日本において、自国で調達できる海産物を利用したアルギン酸事業は戦後復興にふさわしいということで、これを国内に広めることをGHQが推奨したのです。弊社が開示した技術を使っていろいろな企業が参入したのですが、当時はアルギン酸の需要がそれほど大きくなかったので、苦労して作ったアルギン酸は大して売れず、どの企業もすぐに撤退してしまった。やはり他人から教えられた技術を導入して始めた商売では、長続きしなかったのでしょう。

一方、弊社にとってのアルギン酸は自分たちで生み出した事業、創業社長にとってはわが子のような存在でしたから、苦しい中でも諦めませんでした。とにかく生き残るために、必死になっていろいろな用途開発にチャレンジし、売り先を見つけてきました。ここが他のサラリーマン社長とはスタンスが違ったのだと思います。以来、弊社は今日までの80年間この事業を続け、成長させ続けています。

アルギン酸の作り方から活用法まで、一つ一つ自分たちで考え、お客さまと一緒に汗をかいて築き上げてきました。これが今の弊社の一番の強みだと思います。

株式会社キミカの80周年のロゴ
アルギン酸製造オンリーワン企業株式会社キミカは創業80周年

持続可能な事業の原点は、最低限の原材料でアルギン酸を製造すること

――

戦後、日本の復興に必要な社会貢献度の高い技術を開発されてきた御社は、事業の目的そのものがサステナブル経営につながっているように拝察します。改めて、御社のサステナビリティやSDGsへの取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

宮島

もともと、未利用の海の資源がもったいないというところから事業がスタートしています。当時は資金も豊かではありませんでしたので、ぜいたくな材料や機械をふんだんに使うのではなく、最低限の設備と原材料でアルギン酸を作ってきました。そうした弊社の取り組み自体が、今になって振り返るとサステナブルという言葉で表現できるようになったのだと思います。

アルギン酸の製造工程で行うろ過は、お金をかけて重厚なろ過設備や使い捨てのろ過助剤を使えば精度が高くなり、水溶液の見た目は水のように透き通ります。資本力に勝る同業他社は、そうした設備を使ってピカピカのアルギン酸を作っていました。一方、弊社の作るアルギン酸の水溶液は透明ではなく、他社製品よりも濁りがあったので、同業他社と比較されて悔しい思いをすることがありました。しかし、水溶液を濁らせている成分は、実用的には何の影響もないもので、例えば食品に使っても、食品の物性に全く影響を与えません。アルギン酸の主要な用途であるパンや麺、チーズソースなどは、その食品自体が透き通っていないのですから、アルギン酸が透き通っている必要は全然ないのです。その濁りを除くことに血眼になって、採算度外視でエネルギーと資源を無駄遣いする必要はありません。

弊社では、ろ過設備の代わりに、電力もろ剤も使用しない浮上・沈降分離法を用いてきました。この製法では、地球の重力や浮力だけしか利用しません。海藻とアルギン酸の混ざった液体を大きなタンクにためておけば、自然に重い物は沈み、軽い物は浮いてくるので、中間にアルギン酸の清澄層が現れるという仕組みです。
弊社が他社のようなろ過設備を導入しなかったのは、当時それだけの資金力がなかったという要素が大きいのですが、今振り返れば余計なコストや資源を消費しない方法を突き詰めた結果であり、リーズナブルで持続可能性が高い製法になっていたというわけです。
そして結果的に、弊社と差別化するために高コストな製法で過剰品質を追っていた他社は不採算が重なって撤退を余儀なくされ、国内のアルギン酸市場では弊社がオンリーワン企業となったのだと思います。

サステナビリティと原料の安定供給を両立させた南米チリでの取り組み

宮島

創業社長は、房総半島の沿岸に打ち上げられた海藻を原料にして事業を開始しました。しかし、日本は戦後の高度成長期を迎えて人件費が高騰し、海藻のコストにも大きく影響するようになりました。また自然環境が変化して沿岸の海藻資源も減っていき、弊社の事業規模で使用する量をまかなえなくなりました。アルギン酸事業を継続していくためには、海藻を調達することが最も重要なテーマになりました。

そこで世界中を調査した結果、南米チリの海藻が最も扱いやすく、アルギン酸の含有量も高いということが分かりました。以後、当社の主原料はチリの海藻にシフトしています。ところが、1980年代に大規模なエルニーニョ現象が発生し、チリの沿岸に温かい海水が押し寄せ、海藻が一斉に枯れてしまうという事件が起きたのです。当時チリの海藻は現地の商社を通じて購入しており、原料調達は彼らからの情報だけが頼りでした。

当時日本にはアルギン酸メーカーが3社あり、いずれもチリの海藻に依存していたので、チリ沿岸の海藻が全滅したという知らせを受けてパニックが起きました。逼迫した海藻を各社が取り合い、品質を問わずに買い漁った結果、品不足だけでなく品質クレームも起きるなど、お客さまに大変なご迷惑をおかけする騒動になってしまいました。
実際にはチリの海岸は南北に4,000キロもありますから、後によく調べてみたら枯れていたのは一部の限られた海域だけだったということがわかりました。商社を通じて手に入る情報はわずかで、我々はそうした不確かな情報に振り回されていたわけです。

そんなことで事業の屋台骨が揺らいでは危険だということで、一番大事な原料調達を人任せにするのはやめ、自分たちで原料を確保する体制を取りました。現地で海藻調達力のある人物に起業資金を提供して、弊社のために海藻を輸出する会社を立ち上げ、海藻の安定的な調達を可能にしました。原料海藻の収穫まで自社でコントロールしているアルギン酸メーカーは、世界でも弊社だけです。

チリに立ち上げた海藻調達会社は、当用買いの多い他の業者と違って、「いつでも」「誠実に」「安定的に」海藻の買い付けを行っています。この方針によって、海藻を集める漁民たちに安定した収入を得ていただくことができるようになりました。現地では、「安定した生活を送るにはキミカと取引したほうがいい」と言われるほどの信頼を獲得しています。

弊社では、基本的に生きた海藻を刈り取ったものは使いません。自然に寿命を終えた海藻はきれいに岩から剥がれますから、その後すぐに次世代の海藻が着生できます。しかし、人為的に海藻を刈り取る場合、切りやすい茎の部分を刈ってしまうため、岩場に張り付いた根だけがいつまでも残り、次の海藻が育つことができません。こういう荒れた岩場が増えていけば資源の枯渇につながります。弊社はそうした現地の情報も踏まえ、サステナビリティを意識した購買活動を行っています。

海藻残渣も捨てることなく、飼料・肥料・土壌改良材などに有効活用

宮島

また、弊社では「海藻資源を無駄なく有効に利用する」という創業の精神を大切にしていますので、アルギン酸を抽出した後の海藻残渣も捨てずに、有効利用することを考えてきました。

初めは鋳物を加工する際の粘結材に使用していました。砂を固めて作る鋳型に弊社の海藻粉末を混ぜると、高温の金属を流し込んだ時に鋳型が膨張したり収縮したりするのを受け止めるクッションとして働くため、鋳物の加工性が良くなるというものでした。自動車のエンジンを加工する時などに使われていたそうです。

その次に、エノキダケの栽培に活用されました。エノキダケはボトルの中に培地となるおがくずを詰めて、そこに種菌を植えて育てます。この培地の中に弊社の海藻粉末を混ぜておくと、菌糸の活性が上がって太いエノキダケが生え、ひと瓶あたりの収量が従来の約4倍にも上がったそうです。エノキダケの生産量日本一の長野県で農協に採用されて評判となり、開発当時は取り合いになるほどの大人気商品になりました。海藻粉末の商品名はケルピーというのですが、当時営業と一緒に長野県に行った時には、「ケルピーの会社の人が来た!」と方々の農家さんにもてなされ、「ケルピーのおかげで、こんなにいい作業場が建ちました。」と感謝の言葉をたくさん伺いました。それぐらい農家の人たちにとっては素晴らしい素材になっていたようです。

現在でも、海藻残渣は農業用の肥料や土壌改良材、あるいは養殖魚や家畜に食べさせる餌として有効活用しています。海藻はミネラルが豊富で、肥料に使うと植物の生長を促すことが知られており、例えばコマツナのような葉物野菜は大きく太く立派な作物が育ちます。
チリでは、ワイン用のブドウ畑にまいています。もともと砂漠の国で土の保水力が低いので、弊社の海藻粉末をまくと非常に良い土壌改良材になります。しかも、ブドウの糖度も上がるということです。

SDGsの達成に向けた取り組みに、さまざまな表彰を受ける

宮島

チリでは、30年以上お世話になっている工場の地元に救急車を寄贈しました。海外に進出して頑張っている日本企業を応援するという政府のODAを活用し、チリ大使館と連携して、日産の四輪駆動の救急車を贈りました。現地郊外の道路はまだまだ未舗装で険しい地形の場所も多いので四輪駆動車が重宝され、出動回数も非常に高いということです。

またその2年後には、救助工作車も寄贈することができました。埼玉県で活躍していた消防車両をリフォームしたものでしたが、日本の車両は新車でなくてもかなり性能がいいので、現地ではものすごく喜んでくださいました。チリのハイウェイでは大規模な交通事故が頻繁に起きており、高機能な救助工作車が多くの人命救助に貢献していると聞いています。

さらに、これまでに挙げた活動以外にも、弊社では海藻資源の保全活動、太陽光発電(千葉プラントに1,424平米の太陽光パネルを設置)、環境負荷の小さい新型エアコンプレッサーの導入や、照明のLED化などにも取り組んでいます。

総じて、SDGsの目標のうち「1. 貧困をなくそう」、「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「12. つくる責任 つかう責任」、「13. 気候変動に具体的な対策を」、「14. 海の豊かさを守ろう」、「15. 陸の豊かさも守ろう」に貢献しています。

sdgs1: 貧困をなくそう
SDGs1. 貧困をなくそう
sdgs_icon_07
SDGs7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
sdgs12
SDGs12.つくる責任 つかう責任
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」
SDGs13.気候変動に具体的な対策を
SDGs14海の豊かさを守ろう
SDGs14.海の豊かさを守ろう
sdgs15
SDGs15.陸の豊かさも守ろう
宮島

以上のようなさまざまな活動を評価していただき、おかげさまで昨年までにいくつもの賞をいただくことができました。

2020年12月21日には、第4回「ジャパンSDGsアワード」における特別賞「SDGsパートナーシップ賞」を受賞しました。本賞は、内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が、SDGsの達成に向けて優れた取り組みを行う企業・団体等を表彰するものです。

ジャパンSDGsアワードロゴ
宮島

2021年11月4日には、第30回食品安全安心・環境貢献賞を受賞しました。本賞は、日本食糧新聞社の主催、農林水産省・環境省の後援で、社会から求められている自社の存在意義を把握して社会的責任を明確にし、SDGsを視野に入れて事業を展開している企業を表彰 するものです。

2021年11月24日には、第22回グリーン購入大賞において「大賞」と「環境大臣賞」を同時受賞しました。本賞は、グリーン購入ネットワークが、環境省・経済産業省・農林水産省等の後援を受けて、持続可能な調達(消費と生産)を通じて脱炭素・SDGs・サーキュラーエコノミーを実現する取り組みを表彰するものです。

2021年11月25日には、第9回環境省グッドライフアワードにおいて「環境大臣賞優秀賞」を受賞しました。本賞は、環境省が主催して「環境と社会によい暮らし」や「社会をよくするSDGsを体現する取り組み」を表彰する制度です。本業の事業活動である「アルギン酸の製造・販売」の過程におけるさまざまな活動が「グッドライフな取り組み」と評価されました。

弊社では、今後も本業の事業活動を通じて、SDGsの達成に貢献し、人と地球に優しい会社を目指してまいります。

株式会社キミカ技術開発本部 本部長 常務の宮島千尋さん

◎企業情報
株式会社キミカ
https://www.kimica.jp
代表者:笠原文善
所在地:〒104-0028 東京都中央区八重洲2-4-1
住友不動産八重洲ビル8F
TEL:03-3548-1941 FAX:03-3548-1942
設立:1941年5月
従業員数:173名 (キミカグループ 計378名)

cokiの取材・寄稿にご協力いただける企業・団体を募集

ステークホルダーへの想い

お客様へ

弊社のアルギン酸がコンビニエンスストアを中心とした加工食品で頻繁に採用いただくようになったのは、この20年ほどです。それ以前も食品用にはご利用いただいておりましたが、消費者に食品添加物は良くないというイメージが強くあり、食品メーカーも物質名表示の必要な添加物を避ける風潮がありましたので、あまり採用例は増えませんでした。

しかし、近年は食品表示法が整備されたこともあり、使った添加物は全て表示することが義務づけられたため、アルギン酸以外の添加物ももれなく表示されるようになりました。その結果、アルギン酸の有用性や安全性が改めて認めてもらえるようになり、広く採用されるようになりました。

 

地域社会へ

千葉プラント近隣の住民の皆さま

現在工場の建っている土地は、もともとは漁師さんの網を干す場所だったそうです。他県から移り住んだ創業者がその場所で新しい事業を始めるにあたって、地元の方々から有形無形の温かいご協力をいただいたと聞いています。

 

その後も80年の長きにわたり千葉プラントの操業にご理解とご協力をいただいている地域住民の皆さまに感謝の意を表すべく、弊社では地域清掃のボランティア活動(草刈りやゴミ拾い)を実施しています。

 

千葉プラント所属の社員だけでなく、東京本社の社員やその家族・友人も駆け付け、参加者同士の交流を深めると同時に、ボランティア活動の大切さを学んでいます。コロナで逼迫する医療体制を支えるため、地域の感染症指定医療機関への寄付も行っています。

 

アルチの地域社会

アルチとは、チリにある弊社の現地法人です。「Alginatos Chile(アルヒナートス・チレ:チリのアルギン酸メーカーの意)」を略して、「Alchi(アルチ)」と呼んでいます。

 

アルチは、もともと農業や畜産業以外に大きな産業のなかったパイネという町にアルギン酸の工場を建て、長年多くの従業員を雇用するかたちで地域に貢献してきました。

 

さらに、日本大使館と共同で地元の自治体・消防署などに救急車、救助工作車、AEDの寄贈を行い、人命救助に役立てています。

 

また、チリは近年水不足が続き、井戸水が涸れてしまう地域が増えているそうです。工場の近隣にも上水道の整っていない地域があって、飲み水の確保に悩まされているということから、飲料水の無償提供も行っています。

未来世代へ

弊社は今後、アルギン酸を使って人の健康を守り、痛みをやわらげ、命を助けることを目標に、医療分野で社会に貢献していきたいと考えています。医療分野に求められる品質基準や製造管理のハードルは高く、一朝一夕には成し遂げられません。それでも弊社は世界唯一のアルギン酸専業メーカーとして果敢にチャレンジし、いずれその高い目標を克服して、より良い未来を切り開いていきたいと思います。

ライター:

1964年生まれ、群馬県出身。国立群馬高専卒。専攻は水理学と水文学。卒業後、日刊紙『東京タイムズ』をはじめ、各種新聞・雑誌の記者・編集者を務める。その後、映像クリエーターを経て、マルチメディア・コンテンツ制作会社の社長を6年務める。現在は独立し、執筆と映像制作に専念している。執筆は理系の読み物が多い。 研究論文に『景観設計の解析手法』、『遊水モデルによる流出解析手法』、著書に科学哲学啓蒙書『科学盲信警報発令中!』(日本橋出版)、SFコメディー法廷小説『科学の黒幕』(新風舎文庫、筆名・大森浩太郎)などがある。

タグ