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大規模災害時の2次避難所としてスペースシェアリングの活用を/Airbnbは熊本地震、能登半島地震で先行実施

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災害写真(pixabayより)

能登半島地震の発災から2ヶ月が過ぎたが、石川県内にはまだ461ヶ所の避難所で10,072人を超える避難者が不自由な生活を余儀なくされている。

別の町や市の被災者を受け入れている「広域避難所」と一時的に被災者を受け入れる「1.5次避難所」には合計で800人を超す人が今も暮らし、旅館やホテルなどの「2次避難所」にも4,327人以上が避難している。

仮設住宅が整備され始めたが、避難者全員が入居できるまでにまだ時間がかかる。

プライバシーが保てる「2次避難所」の必要性は高まるばかりだ。災害時にこそ、すでに地域にある空室、空き家を活用した「スペースシェアリング」は出番の時ではないだろうか。(数字は3月28日現在)

天災は忘れないうちにやってくる!

明治から戦前に生きた物理学者で随筆家の寺田寅彦は「天災は忘れた頃にやってくる」と警告したが、最近は「天災は忘れないうちにやってくる」と言えるような状況だ。

全国各地で地震や土砂崩れ、洪水が襲い、その度に大量の被災者が避難所暮らしを強いられている。

天災が忘れないうちにやってきているのに、その対応策は大きく変わらず、被災者はまずは体育館や学校などの公共施設で長期間、不自由な暮らしをせざるを得ない。

そんなニュースを見るたびに、もっと改善策はないのかと憤ってしまう。

そういえば都市政策が専門で空き家問題に詳しい明治大学教授の野澤千絵さんから「洪水警報が出た時なら高台の空き家を避難所にして危険地域から避難してもらうという空き家活用もありますよ」と聞いたことがある。

地方でも都市でもどんどん増えている空き家を避難所にするというアイデアは、避難所問題と空き家問題も改善する一石二鳥のアイデアかもしれない。

避難所の空き家利用は能登半島地震でも

今回の能登半島地震でも石川県の隣県、福井県の北部にある坂井市は市内の空き家を被災者に無償貸与している。

物件は8DKと5DKの2軒の一戸建てで駐車場もある。家財道具もあり、着の身着のままでも生活が始められる。空き家というスペースをシェアし、避難所に使っている例である。

もちろん貸し出す空き家の耐震性や十分なメンテナンスが担保されていなければならないが、優良な空き家なら2次避難所として活用できる。

地元自治体や地域住民が日頃から空き家の状態を確認し、いざという時に避難所として使えるようにメンテナンスをし、身近な避難所として整備することはできないだろうか。

Airbnbは2012年から民泊施設を被災者に提供

スペースシェアリング業界を見渡すと、Airbnbは能登半島地震で石川県と連携し、石川県内の民泊施設(住宅宿泊事業法の届け済みの施設など)を2月13日から無料で提供している。

自宅の復旧や仮設住宅の入居までの間を暮らす2次避難所として提供するもので、最大29泊できる。Airbnbは2016年の熊本地震でも無料で民泊施設を避難所として提供した。

Airbnbが災害時に民泊施設を提供し始めたのは2012年10月。米国でハリケーン・サンディの被災者にホスト1400人が民泊施設を開放した。

その後も米サンディエゴの山火事の被害者や各地の洪水被害を受け入れた。

こうした支援はAirbnbがつくる非営利団体のAirbnb.orgが窓口となり、自治体などと連携し、大規模災害時に民泊施設を被災者に提供する枠組みだ。

自治体との連携進むスペースシェアリング企業

自治体との連携ではスペースマーケットが昨年8月にクラウド型公共施設予約管理システム「Spacepad」のサービスを始め、多くの自治体との連携を進めている。

Airbnb Japanも北海道清水町などと連携し、民泊事業を進めている。また多拠点居住をサポートしているADDressは多くの自治体と空き家活用などで連携している。

スペースシェアリング企業はすでに地域再生や空き家問題という社会課題の解決のために自治体との連携を広げ、深めている状況だ。

その連携を災害時の避難所づくりにも広げていっても良い。
その時、さまざまな課題はあるだろう。

①救援物資を届けたり、給水車を派遣したりする場合、被災者が民泊に点在すると作業量が増えてしまう②空き家ごとの住環境、耐震性、安全性などが異なると不公平ではないか③平常時の空き家の運営管理にどのように行政がかかわるべきか。

スペースシェアリング会社に任せるだけでいいのかどうか……、いくつも課題は思いつく。

被災者のQOL向上は待ったなしの社会課題

確かに被災時に被災者を1ヶ所に集めて避難所をつくった方がサービス提供はしやすいだろう。

だがプライバシーもなく、トイレも少なく、シャワー・風呂も完備していない避難所に長期間暮らさざるを得ない状況を被災者に強いている現状をなんとか改善しなければ、21世紀の先進国とはいえないだろう。

高齢な被災者が多い地方の自然災害では、災害関連死も増えている。発災直後の被災者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)を高めることは待ったなしの社会課題である。

新たに作るのではなく、そこにある空間をシェアし、活用するというスペースシェアリングの考え方は避難所づくりでも極めて有効だろう。

膨大な空き家を仮設住宅として使うことができれば、使用後に壊してしまう仮設住宅の量を減らすこともできるかもしれない。

官民が知恵を出し合い、テクノロジーや民のノウハウで被災時の課題を解決する道を探るべきだろう。天災は忘れないうちにやってくるのだから、急がねばならない。

(このコラムは、筆者が所属するスペースシェア総研のコラムを修正・加筆した)

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ライター:

Gemba Lab代表、経済ジャーナリスト 1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修了。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京経済部次長を経て、2005年編集委員。17年Gemba Lab株式会社を設立。東洋大学非常勤講師。著書に『2035年「ガソリン車」消滅』(青春出版社)、『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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