
4月に施行された水道法改正により、「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物)への関心がいよいよ本格化している。こうした中、安心・安全な宅配水「クリクラ」を提供する株式会社ナックは、3月17日に「PFAS規制強化時代における水の安全と選び方」と題したメディア向け説明会を開催した。
本説明会には、株式会社ナック 取締役専務執行役員 クリクラビジネスカンパニー代表の川上裕也氏と、同社 クリクラ商品部 部長の安斎太郎氏が登壇。川上氏がクリクラの事業概要や安心・安全への理念を語ったのち、安斎氏がPFASに関する現状と、これから消費者が知っておくべき「安全な水の選び方」について、独自の調査データや業界の裏事情も交えながら詳しく解説した。
本記事では、当日の説明会および座談会で語られた内容から、読者にとって有益となる水選びのポイントを深掘りしていく。
PFASとは何か? 世界有数の「水安全国」日本に潜むリスクと認知度の低さ
PFASは、炭素とフッ素の結合を持つ有機フッ素化合物の総称であり、その種類は1万種以上にも及ぶ。水や油をはじき、熱に強いという特性から、フライパンのコーティングや泡消火薬剤など、私たちの生活の身近なところで広く使用されてきた。しかし、自然界で分解されにくいため環境に残留しやすく、河川や土壌などに蓄積していくことから「永遠の化学物質」と呼ばれている。近年では、発がん性や免疫機能低下、甲状腺疾患などの健康被害リスクが指摘されており、国際的に規制強化が進められている。
日本でも2026年4月1日より水道法が改正され、代表的なPFASである「PFOS」と「PFOA」が水質基準項目へと格上げされた。これにより、合算で50ng/L(0.00005mg/L)以下という厳格な基準値が設けられ、水道事業者には概ね3カ月に1回以上の検査が義務付けられることとなった。
しかし、ナックが海外主要5カ国と日本を対象に実施した意識調査によると、日本におけるPFASの「未認知率(聞いたことがない)」は51.3%に上り、調査した6カ国中で最下位という結果になった。安斎氏は、日本では「水道水=安全でタダ」というイメージが先行しているため、リスクを理解しないまま水の基準が変わり、正しい情報に基づく水の選択がされない可能性があると警鐘を鳴らす。

特に注意が必要なのが、個人の住宅で利用されている「地下水」や「井戸水」だ。水道水については国の厳しい管理の下でPFASの検出件数は減少傾向にあるものの、環境省のデータでも全国242地点で基準値超過が確認されている。座談会でも言及されたが、地方では自宅の井戸から汲み上げた水を自家栽培の野菜に使い、それを家族で口にしているケースなどもあり、水道水以外の水を日常的に飲用している家庭はより一層の注意が必要となる。
水質と味の決め手:「一般の浄水器・浄水型サーバー」と「RO水」の決定的な違い
PFASという見えないリスクから身を守るための有効な手段の一つとして、説明会で紹介されたのが「RO(逆浸透膜)フィルター」だ。
近年、水道水を注ぐだけで手軽に使える定額制の「浄水型ウォーターサーバー」や、家庭用の「一般の浄水器」も人気を集めている。しかし、これらの浄水方法とクリクラが提供する「RO水」とでは、ろ過能力と「味」において明確な違いがあるという。 一般的な浄水器のフィルターは孔径が1ミクロン〜0.001ミクロン程度であることが多いが、クリクラが採用するROフィルターは0.0001ミクロンという極小の孔を持つ。この超微細なフィルターに圧力をかけて水を通すことで、PFASなどの不純物を徹底的にろ過し、限りなくピュアな水(H2O)を生成することができる。

消費者の声では、「浄水型サーバーは手軽だが、水道水を浄水するだけなので味が違い、美味しくないからとクリクラに戻ってくるお客様もいる」というリアルな意見もあるという。ROフィルターを通しただけの純水は真水に近く味がそっけなくなってしまうため、クリクラでは不純物を完全に取り除いた後、独自のバランスで良質なミネラル成分を配合しているとのこと。
当日の質疑応答において、「今回の法改正にあたり、クリクラ内で処理工程の変更はあったか」という問いに対し、安斎氏は「処理工程の変更はない。もともと我々は事業開始当初からROフィルターを使用しており、不純物を除去してミネラルを加えたお水をお届けしてきた」と回答した。
また、法改正前から自主的に全工場でPFASの検査を行い、未検出を確認してきたという先見性を明かし、今後も定められた基準・検査に則って引き続き徹底していく方針を示した。
なぜ他社は「完全メンテナンス」ができないのか? 宅配水業界の構造的裏話
説明会を通じて安斎氏がもう一つ強く訴えかけたのが、ウォーターサーバー本体の「メンテナンスの重要性」だ。どれだけ高性能なフィルターでPFASを除去し綺麗な水を作ったとしても、それを出力するサーバー本体が汚れていては全く意味がない。
長く使い続ければ、目に見えない内部や注ぎ口付近に汚れが蓄積し、「バイオフィルム」と呼ばれる細菌の塊が発生するリスクがある。
では、なぜウォーターサーバーのメンテナンスは各社で対応が大きく異なるのだろうか。その背景には、宅配水業界における「ワンウェイ方式」と「ツーウェイ方式」というビジネスモデルの根本的な違いが存在する。
現在の市場でシェア上位を占めているのは、天然水を提供する「ワンウェイ方式」の企業だ。この方式は、採水地でボトリングした水を一般的な宅配業者に委託して家庭へ届ける。使い終わった空ボトルは家庭で資源ゴミとして処分できるため手軽だが、配送や回収を外部業者に依存しているため、「サーバー本体を定期的に回収して自社工場でメンテナンスする」という作業には多大な往復コストと手間がかかってしまう。結果として、顧客自身による拭き取りキットの提供や、数年に一度の交換にとどまるケースが多くなっているのが実情だ。
一方、クリクラが採用している「ツーウェイ方式」は、自社の専任配送員が直接顧客へ水を届け、空になったボトルを回収して持ち帰るモデルだ。自社の配送ルートがすでに確立されているため、水のお届けついでにウォーターサーバー本体の回収もスムーズに行うことができる。
クリクラが「年に1回、必ず丸ごと完全メンテナンス済みのサーバーと交換する」という業界トップクラスの衛生管理を維持できるのは、この独自の配送網という構造的な強みがあるからこそなのだ。回収されたサーバーは自社工場に運ばれ、パーツごとに完全に分解される。徹底的な洗浄と殺菌が行われ、劣化した消耗部品はすべて新品に交換されたのち、再び顧客のもとへ届けられる。
防災(ローリングストック)とサステナビリティへの取り組み

水の安全性に加え、クリクラは防災とサステナビリティの分野でも独自の取り組みを進めている。
日常的に水を消費しながら備蓄も兼ねる「ローリングストック」の実践として、クリクラでは5年保存可能な5.8Lボトルの展開も開始し、長期備蓄用の需要に応えている。また、有事の際に優先的に飲料水を供給できるよう、現在全国20カ所の地方自治体と災害時の協定を結んでいる。
環境配慮の面では、ツーウェイ方式で回収した空ボトルの再利用を徹底している。さらに、長年の使用で劣化した廃棄ボトルをリサイクルし、定規やボールペンなどの文房具に生まれ変わらせる活動も行っている。リサイクルされた文房具は発展途上国や教育機関へ寄付されており、利益の追求だけでなく循環型社会の構築にも貢献する姿勢がうかがえる。
2026年の水道法改正により、日本の水を取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。「水はタダで安全」というこれまでの常識を一度見直し、見えないリスクに対して私たちがどう向き合っていくかが問われている。
飲料水を選ぶ際は、単に「価格の安さ」や「ボトルのデザイン」だけで決めるのではなく、「どのような浄水処理(ROフィルター等)が行われているか」「ウォーターサーバー本体のメンテナンス体制(年1回の完全交換など)はどうなっているか」という、本質的な安全性に目を向ける必要がある。
クリクラが提唱する徹底した水質・品質管理は、これからの時代における水の選び方のひとつの指標となるかもしれない。



