
ワイン醸造の過程で生じ、その多くが捨てられてきた「搾りかす」。クランド株式会社はこの未利用資源に、至高の香りを宿すという新たな価値を吹き込んだ。
常識を覆す「香りの限界」への挑戦
オンライン酒屋「クランド」を運営するKURAND株式会社が、驚くべき新商品を世に送り出した。その名は「VINE-YARD 12」。
わずか350本限定で先行販売されるこの国産ブランデーは、これまでの酒造りの常識に一石を投じる存在だ。原材料に選ばれたのは、ワイナリーでワインを醸造した後に残るぶどうの果皮や種である。
本来、主役の座を降りて廃棄されるはずだった素材が、熟練の技術によって、芳醇な香りを放つ至高の一滴へと生まれ変わった。
37度の低温が導き出した「嘘みたいな香り」
このブランデーが他と一線を画す最大の要因は、徹底した「香りの抽出」へのこだわりにある。特筆すべきは、超低温で行われる減圧蒸留だ。
一般的な蒸留が40度から55度で行われるのに対し、本作はわずか37度という体温に近い温度で蒸留を敢行した。これにより、熱による香りの変質を極限まで抑え、ぶどうが持つみずみずしいアロマをそのまま瓶の中に閉じ込めることに成功している。
イタリアのグラッパやフランスのマールといった伝統製法を日本で再現しつつ、最新の精密な温度管理を掛け合わせた、極めて稀有なプロダクトといえる。
捨てられる運命を「価値」へ変える哲学
背景にあるのは、単なる新商品開発に留まらない「アップサイクル」への強い信念だ。1本のブランデーを造るために、約10キロものぶどうの搾りかすを贅沢に使用する。
そこには、豊富な栄養素と香りが詰まっていながら、使い道がないとされてきた素材のポテンシャルを信じる作り手の眼差しがある。「美味しさが詰まった部分だけを贅沢に使い、丁寧に濃縮した」と語る同社の姿勢は、効率を重視する現代の大量生産モデルに対する、静かなアンチテーゼのようにも映る。
循環型ビジネスが示す「嗜好品」の未来
「VINE-YARD 12」から我々が学ぶべきは、資源の価値は「見方」ひとつで劇的に変わるという事実だ。サステナビリティという言葉が叫ばれて久しいが、それを義務ではなく、圧倒的な「旨さ」や「希少性」へと昇華させた点に同社の卓越したセンスが光る。
環境への配慮が、結果として消費者の満足度を最大化させる。この循環こそが、これからのものづくりにおける正解のひとつではないだろうか。



