
スケート・サーフカルチャーに根差し、B Corp認証と環境再生型素材で持続可能性を追求するCARIUMA。その製品価値と倫理性を両立させる戦略を分析する。
ブラジル発サステナブルシューズ「CARIUMA」が本格上陸 東京ポップアップの意義
ブラジル リオデジャネイロを拠点とするサステナブルシューズブランド「CARIUMA(カリウマ)」が、2025年11月下旬から12月にかけて、東京の原宿と有楽町に期間限定のポップアップストアを相次いで展開した。これは、同ブランドの日本市場における本格展開の狼煙と見なされる。
原宿の旗艦型ストア(11月29日~12月14日)では、ベストセラーの「OCA」や新作モデルが多数展開され、ブランドが持つファッション性とサステナブルな背景が訴求された。有楽町マルイ店(12月11日~12月24日)も含め、同社の製品ラインナップは、環境配慮とデザイン性を両立させたフットウェアに対する、日本の消費者からの需要の高まりを背景に注目を集めている。丸紅コンシューマーブランズによる展開は、国内のサステナブル消費市場における新たな動きとして、その戦略が分析されるべきだろう。
素材の革新と国際認証 CARIUMAが実現する倫理的消費と品質の両立
CARIUMAの競争優位性は、その事業の中核に環境配慮を統合している点にある。同社は、単に環境負荷を抑えるだけでなく、倫理的な選択を品質やスタイルを犠牲にすることなく実現するという点で、他ブランドと一線を画す。
具体的には、LWG認証レザー、GOTS認証オーガニックコットン、天然ゴムに加え、サトウキビ由来のバイオフォームEVAやコルクなど、環境再生型素材を積極的に採用している。製造プロセスにおける透明性と環境負荷低減を徹底する姿勢は、その真摯さを裏付ける。
さらに、シューズブランドとして先駆けてB Corp認証を取得している点は特筆に値する。これは、環境・社会に対する高い基準と説明責任を公的に担保するものであり、同社がサステナビリティを一時的なトレンドではなく、企業活動の根幹として捉えている証左である。加えて、製品1足の購入につき、ブラジルの熱帯雨林に2本の木を植樹する活動をコミットしており、購入行動が直接的な環境再生へとつながるポジティブな循環を構築している。
ファッション性と持続可能性の融合 時代に左右されない「タイムレスな価値」の創造
CARIUMAの製品開発哲学は、持続可能性の追求と製品価値の向上を同義とする点にある。彼らは、スケートやサーフカルチャーに根ざすことで、耐久性の高さと時代に左右されないタイムレスなデザインを追求してきた。
長期間愛用できる耐久性の高い製品は、結果的に大量生産 大量廃棄の消費サイクルから脱却するサステナブルなアプローチとなる。また、衝撃吸収性に優れた独自開発のバイオフォームとコルクのインソールは、履く人の心身の快適さを追求しており、環境配慮だけでなく、機能性においても妥協がない。
同社は、環境への配慮を付加的な要素ではなく、スタイルや快適性と並ぶ「選ばれるべき理由」として統合することで、現代の消費者が求める倫理的要請に応えつつ、市場での競争力を高めている。
CARIUMAモデルの競争優位性 サステナビリティを「選ばれる理由」に変える戦略
CARIUMAのビジネスモデルが示唆するのは、次世代の消費財ブランドにとって、サステナビリティがもはやCSR(企業の社会的責任)ではなく、CSV(共通価値の創造)の核心となるということだ。
同社は「環境再生型素材の利用」「B Corp認証による透明性の確保」「植樹による具体的な貢献」という一連の活動を通じて、消費者に対し、購入が「倫理的な行動」に直結するという明確なストーリーテリングを提供している。これは、特に環境意識の高いビジネスパーソン層にとって、価格やデザインを超えた決定的な動機づけとなる。
CARIUMAの成功は、企業のパーパス(目的)が、環境・社会への貢献と、製品の品質・デザインという市場競争力を同時に高める「Win-Winの循環」を生み出すことを証明している。今後、持続的成長を目指す企業は、同社のように事業活動と環境・社会への貢献を不可分に統合する戦略が不可欠となるだろう。



