
「助けてください」と涙目で訴えるおにぎりや弁当。ファミリーマートがこのユニークな「涙目シール」を全国展開する。食品ロス削減を目指したこの取り組みは、消費者の心を動かし、購入率の向上にもつながっている。感情に訴えかけるこのシールの効果と今後の展望に迫る。
涙目シールとは?感情に訴えかけるデザインの秘密
ファミリーマートが全国の店舗で導入する「涙目シール」は、消費期限が迫ったおにぎりや弁当、サンドイッチなどに貼られる特別な値引きシールだ。これまでの「値引き」を前面に打ち出したデザインから一新し、涙目の表情を浮かべたキャラクターと「助けてください」というメッセージを添えた。
このデザインは「商品に共感を抱き、思わず手に取ってしまう」という効果を狙ったもの。感情に訴えかけることで、廃棄される食品の数を減らす狙いがある。

東海地方での実証実験で効果を確認
この「涙目シール」は、2024年10月から東海地方(愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の一部)で先行導入された。試験導入の結果、シールを貼った値引き商品の購入率が5ポイント上昇したという。購入した消費者からは「思わず助けたくなった」「可愛くてつい手に取った」といった声が寄せられたようだ。こうした効果の高さが評価され、全国展開が決定した。
全国展開で目指す食品ロス3000トン削減
「涙目シール」は、10円から150円まで7種類の割引額に対応。店舗の状況に応じて使い分けられ、販売機会の損失を抑えつつ、消費者の購買意欲を引き出す仕組みとなっている。全国展開後は、年間約3000トンの食品ロス削減が見込まれており、これは東京都民が1日で排出する食品廃棄物の量に匹敵する規模というのだから驚きだ。
消費者の共感が鍵に
涙目シールが注目される理由は、消費者の「共感」を引き出すデザインにある。従来の「割引」だけを強調したシールでは、「安いが古い」という印象を持たれやすかった。しかし、涙目シールは「まだ食べられるのに捨てられそう」という食品の声を代弁することで、消費者が「買って助けよう」という気持ちを抱くようになった。
こうした「共感マーケティング」は、近年の消費者の購買行動の変化を反映している。
加盟店からも期待の声
涙目シールの導入は、フランチャイズ加盟店にとっても歓迎されている。値引きシールを活用することで、廃棄されるはずだった商品が売れるチャンスが増えるため、利益確保にもつながるからだ。導入説明会では、「いつから始まるのか」「どのくらい効果があるのか」といった期待の声が多く寄せられたという。店舗の裁量でシールの種類を選べる点も、加盟店の負担軽減につながる。
食品ロス対策の一環としての取り組み
ファミリーマートは「ファミマ eco ビジョン 2050」を掲げ、食品ロス削減に向けた様々な取り組みを展開している。これまでにも発注精度の向上や「てまえどり」の推奨、消費期限の迫った商品の値引き販売などを実施してきた。2023年度には、食品ロス削減率が2018年度比で28.9%となり、計画を上回る成果を達成した。
さらに、2024年3月4日からは、米飯商品約70品目の消費期限を2時間延長する施策も開始。製造工程の見直しにより、品質を維持しつつ販売機会を拡大する狙いがある。
これにより、さらに多くの商品が廃棄を免れ、年間約3000トンの食品ロス削減が可能になると見込まれている。
今後の展望と課題
涙目シールは、当面は有人レジのみ対応となるが、今後はセルフレジ対応の検討も進めていく予定だ。利便性向上を図ることで、さらなる利用促進を目指している。
ファミリーマートは今後も「感情に訴えるデザイン」を活用し、消費者の意識改革と行動変容を促していく方針だ。涙目シールの全国展開が成功すれば、食品ロス問題の解決に向けた大きな一歩となるだろう。
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