
BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotelは、館内を彩った桜をアップサイクルし、伝統工芸の技と融合させた扇子を50本限定で販売する。また、レストランでは桜の枝を活用した特別メニューを提供し、持続可能な資源活用を推進する。
桜の美しさを未来へ
BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel(東京都新宿区)は、昨年春に館内を彩った桜を再利用し、『ホテルを彩った桜で糸を染めた扇子』を制作した。50本限定で2025年3月7日から販売するほか、館内レストラン「Restaurant Bellustar」では、桜の枝を用いた特別メニューを3月9日から4月30日まで提供する。
同ホテルは、日本の春の象徴である桜を年間の観光資源とするだけでなく、環境配慮の観点から装飾後の桜を再活用する方法を模索し、循環型プロジェクトを始動させた。単なる観光資源として消費するのではなく、新たな価値を生み出す点に特徴がある。
職人技と融合したアップサイクル
本プロジェクトでは、日本の伝統工芸の技が随所に取り入れられている。扇子の素材となる麻糸は、環境負荷が少なく、日本の生活文化と深い関わりを持つトスコ株式会社の製品を採用。染色は草木染めの技術を持つマイトデザインワークスが手がけ、桜の枝から淡い色合いを抽出した。その後、山梨県富士吉田市の織物職人が織り上げ、最終的な扇子の仕立ては京都の扇子専門メーカー舞扇堂が担当した。
このプロジェクトの特徴は、日本各地の職人の技術を結集させ、「もったいない」精神と美意識を融合させた点にある。桜の持つはかなさを活かし、長く使い続けられる製品へと昇華させた。
桜を味わう、特別メニュー
桜の再利用は扇子にとどまらない。ホテル内のレストラン「Restaurant Bellustar」では、桜の枝をスモーク材として活用した「雪降り和牛の炭火焼 桜のスモーク ソース・ヴェルジュ じゃがいものニョッキ」や、桜の葉と枝で蒸し上げた「グリーンアスパラ 桜海老 蛍烏賊のタプナード」など、桜の風味を楽しめる特別メニューを提供する。
これらの料理は、単なる季節の演出にとどまらず、資源の循環と地域の食文化を融合させる試みだ。桜の持つ香りや味わいを活かしながら、持続可能な食文化の形成を目指している。
学べること:資源循環と文化の融合
東急ホテルズの試みは、観光業における資源の活用方法に新たな視点を提供する。桜の装飾が単なる一時的な美観ではなく、その後の利用価値まで考えられたサイクルの中に組み込まれることで、無駄を減らし、地域産業との協力も生まれる。
観光業界において、持続可能性の実現は重要な課題であり、本プロジェクトは一つの解決策として示唆に富む。企業のブランディングだけでなく、環境負荷の低減と伝統技術の継承を両立させるモデルとして、今後の展開が期待される。