八芳園グループは24年9月21日、北海道釧路市、徳島県松茂町と「食を通じた地域活性化に関する連携協定」を締結した。両市の食材を活用した商品開発や地域の魅力発信を通じ、都市部企業と地方自治体の連携による持続可能な地域活性化モデルを構築する。
連携の背景 – サステナビリティ実現に向けた課題解決
北海道釧路市では、近年の海水温の上昇により、サケやサンマの不漁が続く一方で、ブリの漁獲量が急増している。従来、釧路ではブリは一般的な魚ではなかったため、その価値は十分に認知されておらず、有効活用が課題となっていた。この状況は、環境変化への対応と新たな水産資源の活用という、サステナビリティにおける重要な課題を提起している。
一方、徳島県松茂町は、レンコンやサツマイモなどの特産品を有するものの、販路拡大やブランド化、農業従事者の高齢化などが課題として挙げられる。これは、地方が抱える典型的な社会課題であり、地域経済の活性化と持続可能な農業の実現が求められている。
このような中、八芳園グループが持つ都市部での販路や商品開発、PRなどのノウハウと、両市の資源を組み合わせることで、サステナビリティを推進しながら地域課題を解決できる可能性に着目し、今回の連携協定締結に至った。
具体的な取り組み – 商品開発と地域ブランド向上
連携協定に基づき、三者は以下の取り組みを実施する。第一弾として、釧路産のブリと松茂町の特産品であるレンコンやサツマイモなどを組み合わせた新たな商品開発に着手する。
具体的には、ブリ大根、ブリのコンフィ、ブリ丼などを開発し、八芳園が運営するレストランやイベントなどで提供する予定だ。商品は、食材のストーリーや地域の魅力を伝えるとともに、環境負荷を低減した持続可能な調達方法を採用する。
さらに、食イベントなどを共同開催し、都市部への情報発信を強化することで、観光客誘致や関係人口の増加につなげる。
八芳園は、これまで培ってきたノウハウやネットワークを活用し、商品開発、販路拡大、PR活動を包括的に支援する。ふるさと納税返礼品としての活用も視野に入れ、地域経済への貢献を目指す。
今後の展望 – ビジネスと社会課題解決の好循環を創出
今回の連携は、単なる地域産品の販売促進にとどまらず、新たなビジネスモデルを創出し、経済的価値と社会的価値を両立させるCSV(Creating Shared Value)の成功事例となる可能性を秘めている。
商品の付加価値向上やブランド化、雇用創出など、地域経済への波及効果も期待される。
また、食文化の継承と発展、都市部と地方の交流促進といった観点からも、その成果に注目が集まる。