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一般社団法人FASHION BANK

https://fashionbank.or.jp/

〒150-0034東京都渋谷区代官山町2-7-5階

アパレル企業の余剰在庫を生活困窮者へ届ける「FASHION BANK」

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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一般社団法人FASHION BANK 代表理事の菅野充さん

日本では新しい洋服が年間81.9万トン供給されているのに対し、その約9割に相当する計78.7万トンが事業所と家庭から使用後に手放されると推計されています。

衣料店で売れ残り、一回も着られずに余儀なく破棄されてしまうケースもあります。(※1)
一方で日本では相対的貧困と呼ばれる世帯収入127万円以下で暮らす世帯が全体の約15%を占めます。

相対的貧困の世帯(※2)では生活に困窮し、洋服にまで手が回らないという状況が見受けられます。社会全体で見ると洋服は「足りているけど、足りていない」状況と言えるでしょう。

アパレル産業の「ミスマッチ」に目を向け、関わる人すべてに喜びをもたらすサービスが「FASHION BANK」(以下、ファッションバンク)です。

一般社団法人FASHION BANK代表理事の菅野充(かんのみつる)さんにファッションバンクの仕組みや思いをお伺いしました。

※1 環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務
※2 厚生労働省「各種世帯の所得等の状況」

市場で余った洋服を回収、生活困窮者に配布するファッションバンク

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ファッションバンクの事業内容を教えていただけますか。

菅野

ファッションバンクは市場で余った洋服を回収し、日本の生活困窮者に配布するサービスです。
アパレル企業は洋服を製造した後、店舗などで販売し、売れ残りはセール価格で販売します。

その後はアウトレットで売ったり、関係者向けのファミリーセールで売ったりします。それでも商品の一部は残ってしまいます。

新しいシーズンが来れば新しい洋服を作って売らないといけないし、余剰在庫を置いておくのにもお金がかかります。在庫問題はどのアパレル企業も頭を抱えている非常に難しい問題です。

そこで私たちは市場で余った洋服を回収し、生活困窮者に配布しています。

どのように洋服を配布していますか?

菅野

私たちは地方自治体・社会福祉協議会・養護施設・フードバンクなどにお届けし、生活困窮者に配布してもらっています。

現在の具体的なお届け先としては、埼玉県の三芳町社会福祉協議会、認定NPO法人キッズドア、フードバンク北九州ライブアゲイン、一般財団法人メルディアなどです。

洋服の寄付のミスマッチを無くす

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ファッションバンクは、生活困窮者に食品を配布するフードバンクから着想を得た。

洋服の寄付と言えば、アフリカなどの貧しい地域へのチャリティを思い浮かべます。

菅野

実はアフリカに送られている洋服の約半分は捨てられています。例えば暖かい地域に厚手のニットやコートが送られてきても誰も着られないですよね。私たちはそんな洋服の寄付のミスマッチに目を付けました。

日本に目を向けると、相対的貧困が存在し、人口の15%(約6人に1人)が世帯収入127万円以下で暮らしています。(※3)その半分以上を占めているのがシングルマザーの世帯です。

相対的貧困の世帯は家賃や日用品が優先で、洋服にまで手が回らないことがあります。

子供が1週間同じ洋服を着て、穴があいていても着続け、それがいじめの原因になるなんてことも。そう言ったシングルマザー世帯には、社会全体でサポートを行うことが必要不可欠になっています。

そう言った現状を知り、ファッションイベントを主催している私たちに何かできることはないかと考え「市場で余った洋服を日本の生活困窮者に届けたい」と、ファッションバンクを立ち上げました。

「洋服を配ってしまったら、洋服が売れなくなるのでは?」という声がありますが、そんなことはありません。

洋服を寄付された子供たちは、社会に出た後に助けてくれたブランドを覚えていて、ブランドのファンになってくれる可能性があります。

長期的に見て、洋服の寄付はブランドのプロモーションにもなり得ると考えています。

※3 厚生労働省「各種世帯の所得等の状況」

サステナブルファッションを体現するプロジェクト「THAT’S FASHION WEEKEND」

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人気アパレルが20ブランド以上集まるチャリティファミリーセール。

「THAT’S FASHION WEEKEND(以下、ザッツファッションウィークエンド)」について教えていただけますか。

菅野

ザッツファッションウィークエンドはSDGsを体現するファッションイベントです。

人気のアパレルブランドが参加するチャリティファミリーセールや、人気のタレントがクローゼットに眠っている私物を出品するチャリティフリーマーケットなどを行っています。

学生が余った洋服をアップサイクルした作品を販売するプロジェクトも行いました。
始まりは大手のアパレル企業の役員の方から洋服の在庫問題について相談されたことです。

多くのアパレルブランドが同じような悩みを抱えていることを知っていたので、他のブランドも巻き込む事でお客様が喜ぶ形を作れないかと考えました。

そこで多くのブランドが一堂に集まる合同ファミリーセールを行えば、ファッションロスが減りアパレル企業は嬉しいし、お客様にとっても人気のブランドの洋服が安く買えて嬉しいのではと思いついたのです。

さらにイベントでサステナブルファッションに触れることで「地球に優しい生き方」の提案になればというメッセージを込めました。

チャリティファミリーセールではユナイテッドアローズ、カルバンクライン、トミーヒルフィガー、エストネーションなど有名ブランドに多数参加いただいてます。

今まで渋谷区・中央区・北九州市・札幌市で開催し、延べ20,000名以上にご来場いただきました。経済産業省や環境省にもご協力いただいてます。

社会課題の解決に挑む両親と、作曲家の兄からの影響

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一般社団法人FASHION BANK 代表理事の菅野充さん

魅力的なプロジェクトを生み出されている菅野さんのお人柄についてお伺いできたらと思います。サステナブルなイベントを企画するまでの経緯を教えていただけますか。

菅野

実は35歳まで何をしていいのか見つからず、フラフラしていました。

ファッションデザイナー、営業、小説の執筆、動画の制作、華道。ありとあらゆるチャレンジをしている中で、イベントのプロデュースがしっくりきました。

自分は「こういうモノがあったらいいな。」とゼロイチで考えることが得意。例えば小説だったら、実際に小説を書くのではなく、原作のネタやストーリーを考えるのが向いているなと。

それがザッツファッションウィークエンドにもつながっていて、「多くのアパレル企業が在庫問題で困っているなら、合同でファミリーセールをしたら、企業もお客様も喜ぶのでは?」と考えました。

ゼロイチでの創造が私にとっての天職です。

ご家族の影響はありますか。

菅野

原体験で言うと、両親が介護施設を経営しています。

私が中学生の時に家族で栃木県に引越した際に、「この地域は高齢化が進んでいるけど、介護サービスが足りていない」と言い出して、母親が介護施設を立ち上げ現在は両親が一緒に経営しています。

学生時代から利益よりも社会課題を解決しようという両親の姿勢を見ていたんです。だから私もビジネスで「ただ儲かればいい」という発想にはなりませんでした。

それに兄が作曲家として活躍していて、その姿にも触発されていました。(※4)兄が売れ出した時、私は20代前半だったので若い時から影響を受けていましたね。

両親や兄の背中を見て、「同じDNAを持っている人間として自分にも何かできるんじゃないか」と思っていました。だから35歳までフラフラしていた間、自分に対して希望を捨てなかったのだと思います。

読者へメッセージをお願いします。

菅野

ファッションバンクはこれから47都道府県に活動を広めていきたいと考えています。

洋服の受け取りを希望される、地方自治体・養護施設・社会福祉協議会・フードバンクなど生活困窮者を支援されている団体の方々にはぜひ手を挙げていただきたいです。

 ※4 菅野さんの兄は、作曲家・菅野祐悟さん。

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◎企業情報
一般社団法人FASHION BANK
住所:東京都渋谷区代官山町2-7-5階
設立:2023年7月
代表理事:菅野充
理事:藤村雄志
理事:加藤倫之
公式サイト:http://fashionbank.or.jp

◎プロフィール
菅野充
一般社団法人FASHION BANK 代表理事
バンタンデザイン研究所卒業後、1年間ロンドンに留学。帰国後アパレル繊維卸業社に就職。1年半後に退職し、様々なビジネスにチャレンジする。35歳の時にやっと自分に向いている職業に出会い38歳で企画プロデュース会社、株式会社Banksyを設立。「社会課題をエンターテイメントで解決する」をテーマに様々な事業を展開中。

ディスクリプション:ファッションバンクは市場で余った洋服を回収し、生活困窮者に配布するサービス。多くのアパレル企業から発生するファッションロス。一方で生活困窮者は洋服の購入にまで手が回っていません。このミスマッチを解消するファッションバンクを深掘りします。

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ライター:

ライター・取材ライター。大学卒業後、南米エクアドルで女性の自立支援を行うNGOへ訪問し、現地の女性たちとの交流をきっかけに「フェアトレードを仕事にする」と決意。帰国後、フェアトレード商品を生産販売するアパレルブランドで勤務し、店長を経験する。「フェアトレードを広める」をモットーに、店舗業務以外にもエシカルなイベントを定期的に企画・主催した。店舗でできることに限界を感じ、退職。現在は活動の幅を広げ、執筆を通して企業や個人の取り組み・想い・魅力を届けることに注力している。

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