東京・紀尾井町という都心にあり、1,479室の客室、37のレストラン、33の宴会場、100を超える店舗、そして1万坪の日本庭園を備えるホテル ニューオータニ東京。ホテルニューオータニ東京では、 このコミュニティを都市の小モデル(集約された地球環境)と捉え、循環型社会を実現すべく環境対策に取り組んできたそうです。今回は、ホテルニューオータニ東京のサステナビリティへの取り組みについて見てみましょう。
食品ロス実質ゼロ・厨房排水を100%リサイクル
ホテルニューオータニ東京には、37店舗のレストラン&バーがあります。そこから 排出される食品残渣は約5トン。それらを廃棄せずに、館内地下に備えた 「コンポストプラント」 で有機堆肥へと変えることで生ごみを100%リサイクルしていることをご存じでしょうか?
産地からこだわった食事に定評があるニューオータニには、全国に数多くの契約農家があります。コンポストプラントで作られた堆肥は契約農家の方々へと渡り、新たに美味しい作物を作るのに使われているのです。さらに、敷地内の日本庭園の植物を育てるのにも役立っています。循環型リサイクルシステムを構築しているのです。
また、それだけレストランがあれば、1日に出る排水も大量。その量は約1000トンにものぼります。ホテルニューオータニでは、排水も自社にて「中水造水プラント」を設けて中水化。トイレや植物用の水として使用しているのです。
この2つの取り組みは決してSDGsが注目されてから始まったわけではありません。コンポストプラントについては1999年、中水造水プラントに至っては1991年と、すでに20~30年に渡る取り組みなのです。以前から環境に対して高い関心を持っていることがわかります。
都市の緑化推進
加藤清正公の下屋敷、井伊家中屋敷、伏見野宮邸の庭園として400年余りの歴史を有しているホテルニューオータニ東京。敷地内にはその歴史を思わせる池や滝を擁した1万坪の日本庭園があります。夏でも木陰が涼しい日本庭園は、まさに都市のオアシスです。
この日本庭園は、滞在するお客様に都会の喧騒を忘れさせるひと時を過ごしてもらうだけでなく、自然保全、CO2削減とヒートアイランド現象の軽減という目的もあります。敷地内の植物を育てるために使われているのは、前述の食品残渣のコンポストと排水を循環させた中水。さらに、敷地内にあるベンチやテーブルなどは、倒木や落とした枝から自作したものです。
近年では建物や屋上の緑化も推進。太陽光から建物を守りつつ、光合成によってCO2を削減しています。注目は、3万輪の赤いバラが咲き誇る「レッドローズガーデン」。見た目にも美しい空間は、環境保護とおもてなしを両立させた好事例といえるでしょう。
美味しさ・健康・環境への優しさを兼ね備えたSDGsメニュー
レストランの美味しさでも定評のあるホテルニューオータニでは、企業やお店とコラボレーションした新メニューの開発が盛んに行われています。
最近では、ニューオータニ所属の世界チャンピオンバーテンダーが、カクテルを通してSDGsに取り組む『サステナブルカクテルシリーズ』も発表されました。新作カクテル『Re.Sprout』では、1杯につきほうれん草を丸ごと一株使用するのですが、このほうれん草も前述のコンポストプラントから作られた堆肥を使用して栽培されています。
さらに、新素材を用いたSDGsメニューも注目です。
例えば、コーヒーショップ「SATSUKI」では、大豆ミートを使った「SATSUKI新東京バーガー」や、「植物を丸ごと使いきる」ことをコンセプトに開発された新食材「ZENBシリーズ」を用いた「ZENBヌードル」「ZENBうに、海鮮マメロニグラタン」など、新たな素材を用いたメニューも発表されました。いずれも、食肉やこれまでは廃棄されていた素材について、美味しくいただきながら考えられるメニューになっています。
おもてなしの質を追求しつつ、環境にも配慮したハイブリッドな取り組みを続けるホテルニューオータニ。飲食店やホテル経営におけるサステナビリティを考えるうえで、大変参考になる事例といえるでしょう。
【参照】
ホテルニューオータニサステナビリティコミットメント
SATSUKI ZENBコラボレーションメニュー
環境問題に積極的に取り組む企業事例
cokiは、法人のサステナビリティ情報を開示するサステナブルメディアです。環境問題にも積極的に取り組む企業様を多く取り上げています。今回はその中から一部をピックアップしてご紹介しましょう。
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