
日本の大手SIer(システムインテグレーター)が、シリコンバレーの風をまとい、サステナビリティの最前線で評価を受けた。 日立ソリューションズは15日、同社の「スタートアップ創出制度」から生まれたスマートフォン向けアプリケーションの試作品が、ドイツの国際的なデザイン賞「Green Product Award 2026」の「Consumer Goods(消費財)」部門において、最終候補(ファイナリスト)に選出されたと発表した。
バーコードをかざすだけで、その商品の環境負荷が可視化される──。消費者の意識変容を促すこのツールは、単なる技術の実証にとどまらず、日本企業が模索する「イノベーション創出」のひとつの解としても注目に値する。
45カ国1000件以上の激戦を突破 消費者の「責任ある行動」を後押し
日立ソリューションズの発表によると、「Green Product Award」は2012年に設立された国際的に権威あるアワードであり、デザイン性、革新性、そして持続可能性を評価基準としている。2026年の今回は、世界45カ国から1000件を超える応募があり、その中から150件がファイナリストとして選出された。今後、一般投票と審査員による最終審査を経て、最優秀作品が決定されるという。

今回選出されたアプリは、消費者が店頭などで製品のバーコードをスマートフォンのカメラでスキャンすると、その製品やサービスが環境に与えるインパクトをESGスコアとして表示するものだ。 「エシカル消費※」という言葉が定着しつつある昨今だが、実際にどの商品が環境に優しいのかを店頭で瞬時に判断するのは容易ではない。このアプリは、複雑な環境データを直感的な指標として提示することで、消費者が「責任ある選択」をしやすくする狙いがある。
※エシカル(倫理的・道徳的)消費とは、地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のことです。
私たち一人一人が、社会的な課題に気付き、日々のお買物を通して、その課題の解決のために、自分は何ができるのかを考えてみること、これが、エシカル消費の第一歩です。2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、特にゴール12に関連する取組です。(消費者庁HPより)
同賞のディレクターであるNils Bader氏は、今年のファイナリストについて次のように評価している。 「今年のファイナリストは、サステナビリティにおける国際的な勢いを体現しています。彼らの貢献は、創造的思考と責任ある行動が結びついた時に何が可能になるかを示しています」
シリコンバレーで武者修行 日立ソリューションズが進める「野心的な」人財育成
このアプリが興味深いのは、通常の大企業の製品開発プロセスとは異なるルートで誕生した点だ。 日立ソリューションズによると、同社は2022年から「スタートアップ創出制度」を導入している。これは社員が2名1組でチームを組み、シリコンバレーに渡って、自らのアイデアで社会課題解決型の起業に挑戦するという、極めて野心的なプログラムだ。
グローバル化とデジタル化が加速する中、既存の組織論理にとらわれず、現地のスタートアップ・エコシステムの中で揉まれながらスピーディに事業化を目指す。今回のアプリは、まさにその「武者修行」の成果と言えるだろう。2025年からは日立製作所やグループ会社とも連携を深めており、組織全体でイノベーションの種を育てる土壌作りが進んでいるようだ。
日立ソリューションズは今後、今回の評価を弾みに、アプリの実用化に向けた検証を進めるとしている。 伝統ある日本企業の技術力と、シリコンバレーの起業家精神が融合した先に、どのようなサステナブルな未来が描かれるのか。ファイナリスト選出という吉報は、その可能性を確かに示している。



