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グレタ・トゥンベリ、オスロ中心部で「石油廃止」を要求 なぜ、ノルウェー最大の銀行DNB旗艦店前を封鎖?

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グレタさん、ノルウェー最大の銀行を封鎖

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが8月21日、ノルウェー・オスロ中心部のカール・ヨハン通りで「絶滅への反逆(Extinction Rebellion)」らと抗議行動を行い、同国最大の金融会社DNBの旗艦店前を封鎖した。警察は現場を監視し、店内に入った活動家16人に退去を求めた。逮捕者は当初確認されていなかったが、後に16人が通報(書類送致相当)されたと地元紙VGなどが伝えた。

AFPによると、今回の行動は南西部にある国内最大の石油精製所を36時間封鎖した抗議に続くものだ。活動家側は「DNBはスカンジナビアで化石燃料拡大に最も資金を投じている銀行だ」と批判し、ノルウェーの石油・ガス産業の段階的廃止を求めた。

 

銀行と通りを同時に標的化 「施設から金融へ」の焦点移動

今回の特徴は、物理インフラ(精製所)に加え、資金の供給源である金融機関を同時に標的とした点にある。18日には約200人がエクイノールのモングスタッド精製所の入り口や港湾を座り込みや小型船で封鎖し、トゥンベリさんは「化石燃料に未来はない」と訴えた。

翌21日は国会そばの目抜き通りでDNB前を塞ぎ、資金循環の遮断を掲げた。「まずは化石インフラを止め、次にそれを支える金融へ焦点を移す」という運動の戦略を可視化した格好だ。

 

現場で何が起きていたか

オスロ警察のアンダース・アース氏は正午過ぎ、「DNB旗艦店前に100人超がいる。16人が行内に入り、退去を求めた」とAFPに説明した。現場の混乱は抑制的に管理され、当初は逮捕者なしとされたが、その後、店内に居座った16人が通報(anmeldes)されたとVG、地元メディアが報じた。

DNB広報は「非暴力かつ合法の範囲での表現は尊重するが、顧客や従業員を妨げる行為には対応する」と述べている。

 

「石油大国ノルウェー」のパラドックス 経済と政策の実像

西欧最大の産油・産ガス国であるノルウェーは、国内の環境政策が進んでいる一方で、原油・ガス輸出が国家財政と対外収支の屋台骨を支える現実を抱える。政府の石油産業からの2025年の純キャッシュフロー見積りは6,980億ノルウェークローネ(NOK)規模に上る。

統計庁によれば、2023年の政府剰余金はGDPの16%に達した。これらの収益は世界最大の政府系ファンド(政府年金基金グローバル、いわゆるオイルマネー)に積み立てられ、2025年上期末のファンド残高は約1兆9,586億NOKに達した。

一方で、ノルウェーは新車販売に占める純EVの比率が2024年に88.9%に達し、世界でも突出した電動化が進む。政府は雇用・技術基盤を支える石油産業の重要性と、欧州への安定供給確保を強調しつつ、国内では高速に脱炭素の実装を進めるという二面性がある。

 

「DNBは化石拡大の最大出資者」主張の根拠

活動家が名指ししたDNBはノルウェー最大の金融グループで、エネルギー・海運向け融資に強い。北欧の銀行による化石燃料向け融資・投資を追跡する「Banking on Thin Ice 3」(2025年1月、Fair Finance Guide/Profundo)は、DNBやSEB、Nordeaが化石燃料企業への主要な資金提供者であると指摘する。国際共同レポート「Banking on Climate Chaos 2025」でも、世界の化石燃料金融が2024年に急増したとされる。

もっとも、各報告書は領域や定義が異なり、資金額のランキングは評価方法で差が出る。従って「スカンジナビアで最も」という断定は、活動家の主張として位置付け、複数レポートの文脈で検証する必要がある。

 

欧州各地でのトゥンベリ氏の抗議と「戦術の更新」

トゥンベリ氏はこれまでも欧州で道路や幹線の封鎖に参加し、オランダ・ハーグではA12高速の抗議で一時身柄を拘束された。今回は精製所と銀行を連続して標的化し、物理的サプライチェーンから資金チェーンへと抗議の焦点を広げた構図が際立つ。

「逆効果」論争 緊急車両の遅延や司法対応は何を示すか

強い抗議は社会の注意を喚起する半面、支持の拡大を妨げるリスクも抱える。英国では道路封鎖の最中に救急車や消防車の到着が遅れた事例が報じられ、公共の反発を招いた。

さらにロンドンの環状道路M25の大規模封鎖を主導した活動家らが有罪判決・収監となるなど、欧州各国で強制力の発動が相次いだ。これらは「直接行動」が世論喚起と反発の狭間にあることを物語る。

 

現場の温度差と、次の焦点

オスロでは、中心街の封鎖で通行や業務に一時的な支障が出た一方、参加者は「化石燃料産業が日々もたらす暴力を可視化する」と訴えた。DNBは「対話の意思」を示しつつも、顧客・従業員への妨害には対応する姿勢を崩さない。

エネルギー安全保障、雇用、財政と、緊急性の高い脱炭素という要請が真正面からぶつかるのがノルウェーであり、今後は金融機関の投融資方針や、政府年金基金のエシカル投資の運用も焦点化するだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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