
モリリン株式会社(愛知県一宮市)は6月24日、廃棄衣料を原料とした繊維リサイクルボード「PANECO® board M」について、2026年初旬から本格的な量産体制を構築する方針を発表した。実現すれば、年間約7,200トンの衣料廃棄物が建材として再生されることになり、国内の循環経済実装に向けた具体的な突破口として注目を集めている。
廃衣料51%、廃木材49%で構成 MDF製造ラインの活用で量産化に道筋
「PANECO® board」は、東京のワークスタジオが開発、大阪のホクシン株式会社が製造技術協力を行う共同プロジェクト。モリリンは本製品の販売を担い、これまで実験的に供給されていた「S規格」に対し、新たな「M規格」はMDF(中密度繊維板)製造ラインを活用することで、連続的な生産と供給体制の構築を可能にした。
巾最大1,240mm、長さ最大4,060mm、厚さ最大30mmと、実用的な寸法に対応。建材や什器素材として即時導入が可能な規格であり、現場の加工・輸送にも配慮された仕様が特徴となっている。
環境への本質的アプローチ 「出口問題」に答える選択肢に

世界で年間9,200万トン、日本国内でも年間約100万トンが廃棄される衣料。多くは焼却や埋立処理に回され、温室効果ガス排出や土壌汚染の一因となってきた。さらに、海外に寄付された衣類の多くも現地で余剰廃棄物化する実態がある。
そうした「出口のない消費」に対し、PANECO® boardは衣類の物性を活かしてボード素材として再生し、循環経済への現実的なルートを提示する。月産ベースで約600トンの廃衣料をアップサイクルできる新体制は、スケーラブルかつ実効性のある社会実装として期待が高まる。
経産省ガイドラインとも連動 アパレル業界の循環責任を支える基盤に
環境配慮型素材への転換は、企業のサステナビリティ戦略において急務となりつつある。経済産業省は2024年3月、「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」を公表。2026年をめどに、大手アパレル企業に対して回収衣料品の処分方法の開示を義務づける方針を示しており、「PANECO® board M」はこのガイドラインに準拠しうる循環素材として業界内外での活用が見込まれる。
今後は、サプライチェーン内での連携強化に加え、自治体や廃棄衣料を抱える企業・団体との連携による導入拡大も視野に入れているという。開発元であるワークスタジオは、インテリア什器や建材への展開のみならず、教育現場やイベント施設などでの導入事例をすでに複数手がけており、今後の展開は全国的な広がりを見せる可能性もある。

繊維リサイクルが拓く、新たな社会の設計図
特許技術(特許第7254401号)に基づく本プロダクトは、衣料品の「出口」問題に向き合う企業や生活者にとって、見逃せない選択肢となりうる。単なる素材開発にとどまらず、「衣服から建材へ」という文脈で、消費社会の構造転換にも一石を投じる構想がそこにある。
PANECO® board Mは、サステナブルな未来のために、私たちの消費と廃棄の在り方を問い直す“次の一歩”となりそうだ。