高砂電気工業は、流体制御の課題解決カンパニーとして60年以上にわたる実績を誇ります。
高度な専門性とノウハウを有する同社は、さらなる技術革新とイノベーションに挑むべく、2020年、社内カンパニー制を導入。これを機に、新事業の展開を推進する「未来創造カンパニー」が立ち上がりました。
その「未来創造カンパニー」と共に、電解水「ONETENTH IELU(ワンテンス イエル)」を世の中に浸透させ、SDGsに貢献するべく奮闘しているのが、株式会社ワンテンスです。
ウイルスや細菌に対して高い有効性が実証され、医療分野などでの25年のエビデンスの蓄積がある『IELU』。「この電解水を家庭や施設で当たり前に使えるようにするには、『IELU』製造装置の小型化とメンテナンス性の向上が必須。
装置のプロダクト開発を担う高砂電気工業は、電解水で世の中を変えていくのに不可欠な存在」と語るワンテンスの片山貴嗣COOと永田寛明CEOに、両社の協働と今後の展望について伺いました。
高砂電気工業とワンテンスは「『IELU』のある暮らし」を実現するパートナー
永田
弊社は、「3室ダブルイン型電気分解技術」という特許技術を持つ技術ベンチャーです。この技術を生かして、電解水「IELU(イエル)」の研究・開発を行っています。
「IELU」は、さまざまなウイルスや細菌に対して高い有効性が実証された、飲めるほど安全で、しかも創傷治癒・肌荒れ改善効果まで期待できる電解水です。
将来的には、高砂電気工業株式会社(以下、高砂電気工業)さんの力を借りて開発を進めている「IELU」製造装置を一般家庭にも普及させ、日常の様々なシーンに当たり前に「IELU」がある、「『IELU』のある暮らし」を実現することを目指しています。
新規開発部門のような関係、「一緒に世の中を変えていきたい」
高砂電気工業の平谷社長からメッセージをいただいています。代読いたしますね。
株式会社ワンテンス代表取締役CEO永田寛明さん、COO片山貴嗣さんへ
「我々が組めば最強なのでまずは日本市場を開拓していきますが、将来的に海外市場で事業拡大する際には、私が切り込み隊長として飛び込んでいきます」
なんだが含みのあるメッセージです。「組めば最強」とのお言葉にあるように、単に機械の製造委託をする以上の深い関係性を築かれているようですね。
永田
はい。「高砂電気工業さんと一緒に世の中を変えていきたい」と、本気で思っています。現在、形式的には業務委託のような関係ですが、我々にとっては、いわば「新規開発部門」のような、一体として事業に取り組んでいるような気持ちです。
平谷社長にも実現したいビジョンや思いを共有してもらったうえで、弊社の事業に携わるメンバーを募っていただいているので、素晴らしいメンバーを紹介していただきました。本当に皆さん、素晴らしい方々です。
高砂電気工業と共に「IELU」の社会実装を推進
とても心強いですね。具体的には、どういった部分で高砂電気工業さんと協働されているのですか。
片山
我々は、「IELU」の心臓部にあたる電解水の研究・開発を進め、25年間ひたすらエビデンスを集めてきました。
エビデンスを集める25年間が第1ステージだとすると、これを装置に実装して世の中にお届けしていくのが第2ステージになります。最初のステージから次のステージに進むことができたのは、ひとえに高砂電気工業さんとの協働のおかげです。
研究・開発してきた「IELU」を世の中に広めるには、「IELU」を製造するための装置の筐体(きょうたい)を用意し、技術を実装しなくてはなりません。
さらに、ボタンひとつで簡単に操作できる操作性を考慮し、安全性などの運転テストも実施するなど、製品化のプロセスが欠かせません。これらを全て、高砂電気工業さんに担っていただいております。
高砂電気工業さんは、流体制御技術だけでなく、利便性やメンテナンス性を考慮した製品の小型化のノウハウを豊富にお持ちです。世の中の施設や家庭において「『IELU』のある暮らし」を実現するうえで、高砂電気工業さんとの協働が不可欠でした。
もう本当に、感謝しかないです。足を向けて寝られません(笑)
1,000拠点を越える医療・介護・教育・自治体・研究分野の施設、美容院・エステサロンでも導入
「IELU」製造装置の導入実績をお伺いできますか?
永田
「IELU」製造装置は、すでに約260の医療・介護施設、約50の保育園、約40の自治体施設、約20の教育・研究施設、約1,000の美容院・エステサロンに導入されています。
利用されているお客様の反響も大きく、とある介護施設からは、「入居者様のうがい・手洗いなど日々の衛生管理や、希釈風呂で肌補修を促すといった使い方をしています」「『床ずれ(褥瘡)が良くなった』『肌がツルツルになる』などと喜ばれています」「導入して2年経過しますが、施設内インフルエンザ感染者、誤嚥性肺炎での死者ともに抑えることができています」といった声も届いております。
海外展開も視野に。信頼関係に基づく心強いパートナー
着々とビジョンの実現に近付いておられますね。先ほどの平谷社長のメッセージに、海外市場で事業拡大する際には「私が切り込み隊長として飛び込んでいきます」とのお言葉がありました。
片山
そのメッセージについてお話するには、平谷社長とのご縁が生まれた2005年頃まで遡る必要がありますね。まだ今のように、「IELU」のもととなる技術のエビデンスの蓄積もなかった当時の話です。
私(片山COO)の父は、弊社の前身である株式会社レドックスという会社を立ち上げて、「IELU」のもととなる電解技術の研究をしていたのですが、その研究を、早くも2005年から「おもしろい!」と言って応援し続けてくれていたのが、平谷社長だったのです。
当時、平谷社長は大手コンタクトレンズメーカーに勤務されていたのですが、2013年からフランス支社長として渡仏されることになりました。私はそのときには、父の会社を引き継ごうと決めていましたので、平谷社長がフランスに行かれる前、父を介して私も初めてお目にかかりました。
こうして赴任した先のフランスで、なんと平谷社長は、弊社の製品を現地で広めようとしてくださっていたようで。
それで、後に私がレドックスを引き継ぎ、株式会社ワンテンス(以下、ワンテンス)として「IELU」を国内で広めようと始動したときに、「じゃあ世界では私が広めるよ。ヨーロッパの中心はやっぱりフランスだから」と、励ましてくださいました。
平谷さんが仰るには、「フランス人は気品が高いから、入り込むのが難しい」のだそうです。「そこは任しとけ」と仰っていました(笑)。そんなわけで、「海外は私が切り込み隊長」と、言ってくださっているのだと思います。
実務的な面では、海外で「IELU」の製造装置を展開するうえでメンテナンスが不可欠になります。ところが守秘義務的な観点からも、メンテナンスを誰にでも頼めるわけではありません。
その点、しっかりとした信頼関係も構築できている高砂電気工業さんの工場にお任せできれば、安心です。そういった意味でも、「任せて」とのお言葉をくださったのではないかと思っています。
「この電解装置が世の中の感染症を救うはず」、社会貢献の夢に賛同
平谷社長とは、片山COOのお父様の代から17年来のご縁なのですね。その後、御社と高砂電気工業さんとは、どのように連携が始まったのですか。
片山
私自身が父の会社を引き継いでワンテンスを立ち上げた当初、高砂電気工業さんもカンパニー制をスタートされたところでした。
「未来創造カンパニー」の社長に就任された平谷社長としては、「新しい空気を入れたい」「社員にいろいろな経験をさせたい」「世に出ていくために多様性を」といった思いを持たれていたようで、弊社との化学反応に期待してくださったのだと思います。
弊社は、25年にわたるエビデンスの蓄積をもつメーカーでありながら、若い二人が立ち上げたスタートアップのベンチャーのような、世の中にあまりないタイプの会社です。
それで、平谷社長自ら、「いずれ高砂電気工業のメンバーがワンテンスの仕事も並行してできるくらいの部署を作ろう。まずは下積みとして、チームを組成するよ」と、メンバーを募ってくださいました。
なるほど。御社と高砂電気工業さんが組めば、「IELU」で世界を変えることも夢ではないと考えたのですね。社会に貢献するような技術で「世の中を変えていきたい」という発想は、どのようにして生まれたのですか。
片山
社会公器性、SDGsという観点では、2005年から父と話をしていました。父は医療の場で研究をしており、当時からすでに地球温暖化、そして感染症への懸念を抱いていました。
温暖化が進むにつれ、赤道付近の熱帯雨林などでまん延している感染症が、亜熱帯、温帯へと広がっていくだろうと。
父は、「絶対にこの電解装置が世の中の感染症を救うはずだ」と信じていて、「いずれ世界規模のパンデミックがくるかもしれない。そのときに『IELU』がある世界を作っていこう」というビジョンを語っていました。
当時からやはり、社会貢献、社会性という部分は意識していて、そのビジョンを応援し、賛同してくれたのが、平谷社長でした。
一般家庭で水のように「IELU」 を使える世の中を、ニューノーマルにしたい
最後に、今後、高砂電気工業さんとの関係をどのように発展させていきたいとお考えですか?課題も含めてお聞かせください。
永田
一般家庭で蛇口をひねったら浄水が出るように、「IELU」が出る、出てきた「IELU」を空間除菌に使うのもよし、肌を治すために使うのもよし、アトピーを治癒する風呂に使うのもよし、いろいろな使い方ができる、
そんな暮らしをニューノーマルにしたいと思っています。これを実現するには、どう考えても装置開発がマスト。つまり、高砂電気工業さんの存在が欠かせません。
課題はいくつかありますが、ひとつは、当社が所有する工場の固定費なども含め、研究・開発費がかさむことです。次のステージとして、まずは「IELU」を工場用水などのB2Bで展開し、収益性を確保するとともに、B2Cのマーケットの開拓も進めていきたいと考えています。
「IELU」が必要不可欠なインフラになる世の中に、期待が膨らみます。本日はありがとうございました。
◎企業概要
・会社名:株式会社 ワンテンス(One Tenth CO.,Ltd)
・本社:〒107-0052東京都港区赤坂8-5-40ペガサス青山B棟 7F
TEL : 03-5843-1426
・URL: https://www.onetenth.co.jp/
・設立日:2019年2月1日
・代表者:代表取締役CEO 永田 寛明
・事業内容:
-医薬品、医薬部外品、化粧品、美容品、食品、飲料の企画、製造、販売
-経営コンサルティング
-広告、宣伝、販売促進、マーケティングに関する業務
◎プロフィール
永田寛明CEO
片山貴嗣COO
◎執筆者名 Erina Avril