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住商リアルティ「鑑定価格つり上げ疑惑」 親会社の意向を満たす“出来レース” REIT投資家の悲嘆

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住商リアルティに行政処分勧告 REIT業界を揺るがす“鑑定価格操作”の深層

住商リアルティ・マネジメントのプレスリリース
住商リアルティ・マネジメントのプレスリリースより

REITに投資する個人投資家の間に、静かなざわめきが広がっている。証券取引等監視委員会は11月11日、住友商事の完全子会社である住商リアルティ・マネジメント株式会社に対し、金融庁による行政処分を勧告した。

理由は、不動産鑑定における「不適切な働きかけ」だ。親会社が保有する物件を私募REITに売却する際、鑑定額が親会社の希望価格に近づくよう、鑑定プロセスそのものをゆがめたと監視委は認定した。

本来、鑑定額は投資家を守る最後の砦であるはずだ。その砦を内側から崩したとすれば、問題は深刻である。

 

鑑定業者は最初から“決まっていた”のか

監視委の調査は冷徹だ。住商リアルティは物件取得にあたり、まず複数の鑑定業者に「利回り感」や「更地価格」をヒアリングしていた。しかし、この段階で判明した自己査定額は、親会社が提示する希望価格に届かなかった。

そこで同社は、正式な社内稟議より前に、別の業者へ物件情報を提供し、非公式の概算鑑定額を聴取した。その金額が「親会社の意向に近い」と分かると、あらためてその業者を選ぶかたちで稟議を整えた。

監視委は、この選定を「目的ありきの不適切なプロセス」と断じている。内部資料のフロー図を読み解くと、まるで“鑑定業者探し”ではなく“鑑定額探し”だったかのような構図が浮かび上がる。

 

用途を“書き換えた”図面で鑑定額を押し上げ

問題はさらに踏み込む。

住商リアルティは、将来の使用方法について現況と異なる用途の図面を作成し、鑑定業者に提供していた。監視委はこれを「恣意的」「容認されない働きかけ」と指摘する。現実には存在しない前提を示し、鑑定額を押し上げる方向に誘導したというわけだ。

監視委の公表資料に添付された概要図では、親会社の提示価格と鑑定額の関係が矢印で示されている。親会社の希望水準を満たすために鑑定額を引き上げようとした経緯が、図のなかで視覚的に整理されている。

本来、鑑定額は投資家の利益保護のためにブレーキをかける機能を担う。今回は、そのブレーキが加速装置として使われた格好だ。

 

背景にある“利益相反”の構造

住商リアルティは私募REITのSCリアルティプライベート投資法人、そして上場REITのSOSILA REITの資産運用会社だ。

監視委は、今回の問題の根底にあるものとして「利益相反管理態勢の欠如」を挙げる。資産運用会社の役員は親会社からの出向者で占められ、コンプライアンス室のけん制機能も十分に発揮されていなかった。

親会社が売り手、投資法人が買い手という構図のなかで、親会社に有利な価格を生み出そうとする力学が働いた。結果として、投資法人のために忠実に業務を行うべき「忠実義務」に違反すると判断された。

 

揺らぐ「大手スポンサーだから安心」という思い込み

SNS上では、個人投資家の率直な声も目立つ。

「REITはゴミ箱だと思ってたけど、ここまであからさまだとさすがに引くわ…」

高配当だから安全、不動産だから堅い、そして大手商社がスポンサーだから安心、そんな“お約束のフレーズ”が、今回の勧告で色あせて見える投資家も少なくないはずだ。

REIT市場には、スポンサーと投資法人の間に利益相反が生じうる構造がある。今回はその典型例であり、表面化したのは一件にすぎない、という見方もできる。

 

監視委が投げかけた警告

監視委の勧告文は、淡々としながらも危機感に満ちている。利害関係者ではない鑑定業者による評価を通じて利益相反の弊害を排除し、投資家を守る。本来の仕組みの趣旨が踏みにじられたと指摘した。

今後、金融庁は行政処分の内容を検討する。鑑定業者の選定と情報提供はどこまで透明でなければならないのか。REIT運用会社に突きつけられた問いは重い。

今回の勧告は、単なる一社の問題にとどまらず、「スポンサー主導」で回ってきた日本のREITビジネスに、改めてガバナンスの再点検を迫るものになりそうだ。

 

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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