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オムロン、iCARE完全子会社化と電子部品事業の分社化検討 事業転換の真意はどこにあるのか

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オムロン
提供:オムロン

オムロンが動きを加速させている。9月18日には、産業保健や健康経営ソリューションを手掛けるiCAREの全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。翌19日には、長年の主力事業である電子部品事業「デバイス&モジュールソリューションズビジネス(DMB)」の分社化を2026年4月をめどに検討すると公表した。2日連続のリリースは市場にも衝撃を与え、「明日はストップ高か」との声も漏れる。

 

iCARE山田CEOが語る「300万人」への決意

iCAREの山田洋太CEOはFacebookで「2030年に対象従業員数300万人に健康を届ける」という大きな目標を掲げ、その実現に向けて「強固なパートナーシップが不可欠」と語った。これまでの15年間に区切りをつけ、新たな成長への覚悟を示すコメントは、スタートアップが大企業の傘下に入ることへの期待と緊張をにじませる。

今回の買収は、複数のVCが保有していた株式をすべてオムロンが買い取り、iCAREが未上場スタートアップから上場企業子会社へと移る構図だ。iCAREは産業保健向けSaaS「Carely」を開発してきた企業で、2016年以降にシリーズA〜Eまでの複数ラウンドで累計40億円超を調達してきた。2024年7月にはオムロンが既存株主から30%を取得し資本業務提携を結び、それからわずか1年余りで残りの株式もすべてオムロンが取得し、完全子会社化に至った。

 

決算数値が示す「為替頼みの改善」

一方、オムロンの本業はどうか。直近の2025年3月期決算では、売上高は8,018億円と前年から2.1%減少した。だが営業利益は540億円(前年比+57.4%)、当期純利益は163億円(前年比+100.7%)と大幅に改善している。

利益改善の背景には、為替の円安効果に加え、売上総利益率の改善や固定費効率化も寄与しており、一時的要因と構造的改善が入り混じる。ただし、利益の質が盤石というわけではない。

 

電子部品事業の急失速と分社化の狙い

事業別に見ると、ヘルスケア部門は売上規模を保ちながら利益率は横ばいにとどまり、電子部品事業(DMB)は利益率が急落し、2025年度には営業利益率がわずか0.3%にまで落ち込んだ。分社化検討の背景には、この事業の立て直しという現実的な課題がある。

市場関係者はこう語る。

「今回の完全子会社化は、オムロンとしてもiCAREの成長性や保有する健康データの資産価値を勘案すれば、それ相応の金額を投じたのだろう。ただし、過去にVCが高いバリュエーションで出資してきた経緯を考えると、オムロンが“高値掴み”していないかという見方も残る。IPO環境が厳しさを増すなかでのM&Aであり、投資家の出口戦略の事情も絡んでいる。市場からは『戦略的に理にかなっているが、投資回収に時間がかかる案件になるかもしれない』との声も聞かれる。」

沈みゆくJTCと揶揄されることもある日本企業だが、オムロンは次々と手を打ち、変化を選んでいる。iCAREの完全子会社化とDMBの分社化検討。相次ぐ決断は、沈みゆくJTCではなく、変化に賭けるオムロンの姿勢を映す。だが為替に左右される業績、収益の柱の弱体化といったリスクはなお残り、今回の勝負が市場の期待どおりに実を結ぶかどうかは、これからの事業展開にかかっている。

 

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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