「威圧的通知」の混乱を乗り越え、株式併合案が承認 東証上場廃止へ

空港の電力・通信インフラを担う株式会社エージーピー(東証スタンダード:9377)は6月26日、都内で開催された定時株主総会において、日本航空(JAL)などが提案していた「株式併合による非公開化」議案を可決した。これによりAGP株は9月29日付で上場廃止となる見通しだ。
AGPの株式は、JAL、日本空港ビルデング、ANAホールディングスの大株主3社が合計で73%以上を保有しており、事実上の「三社連合」によるスクイーズアウト(少数株主の締め出し)が成立した形だ。10月1日には発行済株式約123万5700株を1株に併合し、1株未満となる少数株主の持ち株は会社側が買い取る。
“あれだけ騒いで結局可決” JAL監査役文書の一幕とは
この決議に至るまでの経緯は異例ずくめだった。AGPは6月25日、JALが派遣した監査役を含む3名の社外監査役が、AGP取締役に対し「損害賠償責任を追及する」といった強硬な文言を含む通知文書を送付した事実を公表。同文書は「Macquarieによる1株2,015円での公開買付提案」への取締役会の対応を非難する内容で、取締役に対する事実上の圧力と受け取られた。
AGP側はこれに猛反発し、「文書はJALの意向を反映したものであり、公正な意思決定プロセスを脅かす」として抗議。監査役3名は翌24日に文書を撤回し謝罪したものの、JAL側の「関与の疑い」は払拭できず、AGPは正式にJALへ事実関係の調査を要請する事態へと発展した。
結果的に、JAL提案の株式併合は可決されることになったが、ある株主は「よくあそこまで大株主に抵抗できた」と感慨をにじませる一方、「あれだけ大騒ぎしておいて、結局はあっけない幕切れだった」と冷ややかな視線も向けられている。
今後の焦点:買取価格と少数株主の反応
今回の株式併合により、大株主以外の少数株主は持株が1株未満の端数となり、会社法に基づき、裁判所の許可を経て会社側による強制買取が実施される。この際の買取価格が「JAL提案ベースの1,550円」で妥当とされるのか、それとも「Macquarie提案の2,015円」との乖離が問題視されるのか、今後の法的対応や少数株主の動きが注目される。
とくに、買取請求権を行使する少数株主が出た場合、買取価格が司法判断の対象となる可能性がある。市場価格と公開買付価格の差額に照らし、株主平等原則の観点から問題が提起される余地も残されている。
皮肉にも残る“結論ありき”の構図
AGPの今回の株主総会は、三大株主による圧倒的議決権を背景に可決されたという構図が否定できない一方で、取締役会は最後まで別提案への検討姿勢を貫いた。ある関係者は「非公開化の結論自体は避けがたかったが、少なくとも意思決定プロセスに一石を投じた」と語る。
皮肉にも、株主提案の可決によって、今後AGPは上場企業としての役割を終えることになる。だが、監査役の中立性や少数株主保護といったテーマを浮き彫りにした今回の騒動は、上場企業全体への問いかけとして、長く記憶に残るだろう。