安く、早く、手軽に歯並びが治る

SNSを開けば、そんな甘い言葉で誘う矯正歯科の広告が溢れている。テクノロジーの進化により、マウスピース矯正は確かに身近なものになった。しかし、その裏側で「思っていた仕上がりにならなかった」「噛み合わせがおかしくなった」と悩み、再治療を余儀なくされる患者が増えている現実があることをご存知だろうか。
千葉駅直結のランドマーク、センシティタワーに拠点を構える「千葉センシティ矯正歯科」。院長の石川宗理(いしかわ・むねただ)氏は、そんな現代の矯正歯科ブームに静かに、しかし力強く警鐘を鳴らす。
「矯正治療は、美容室のように髪を切って終わりではありません。一生使う身体の機能を守るための『医療』です。だからこそ、私たちは耳障りの良い言葉ではなく、『医学的な正しさ』を追求しなければならない」
華やかな広告合戦とは一線を画し、愚直なまでに診断と技術に向き合う石川院長。彼が目指す「正しい矯正治療」とは何か。その根底にある哲学と、歯科医師としての矜持に迫った。
「ジブリ」に学ぶ、矯正治療の本質
「マウスピース矯正については、患者さんだけでなく、医療者側でも少し認識の違いがあるケースがあるんです」
石川院長は、独特の比喩を用いて矯正治療の仕組みを語り始めた。それが「ジブリ」の話だ。

石川院長
「インビザライン(マウスピース型矯正装置)というシステムは、非常に優秀です。しかし、あくまでツールに過ぎません。例えるなら、インビザライン社は『アニメーション制作会社』なんです。そして、私たち歯科医師は『映画監督』です。
監督が『こういう作品を作ろう』と絵コンテを描き、脚本を作り、指示を出して初めて、制作スタッフ(アライナー)が動く。つまり、監督の指示が間違っていたら、どんなに優秀なスタッフがいても作品はコケるんです」
スタジオジブリの作品が素晴らしいのは、宮崎駿監督という稀代の演出家が、明確なビジョンと緻密な設計図を描いているから。矯正治療も全く同じである。AIやデジタル技術が進化し、マウスピースが自動的に歯を動かしてくれるように錯覚しがちだが、実際に歯を動かすための設計図(治療計画)を引くのは、あくまで人間のドクターなのだ。
「骨格的に無理があるのに『抜歯なしで治ります』と指示を出せば、歯は並ぶかもしれないけれど、口元がゴリラのように突出してしまうかもしれない。あるいは、噛み合わせが崩壊してしまうかもしれない。それは映画で言えば、作画は綺麗だけどストーリーが破綻している駄作です。だからこそ、私たちは『診断』という脚本作りに命をかけなければならないのです」
石川院長のもとには、他院でのマウスピース矯正で失敗し、リカバリーを求めて来院する患者が後を絶たないという。それは「監督」の力量不足が招いた悲劇とも言える。
「正しさ」の追求と、医療倫理
千葉センシティ矯正歯科のウェブサイトには、「オーダーメイド治療で正しいマウスピース矯正を」という言葉が掲げられている。なぜあえて、「正しい」という言葉を選んだのか。そこには、昨今の矯正業界を取り巻く商業主義へのアンチテーゼが込められている。

「近年、『マウスピースだから安い』『手軽に始められる』といった、ファッション感覚の広告が目立ちます。もちろん、ハードルを下げることで矯正治療が普及すること自体は悪いことではありません。しかし、医療としての本質を置き去りにしたまま、メリットばかりを強調するのは不誠実だと感じています」
例えば、結婚式を控えた女性が来院したとする。式までに時間がない。本来であれば抜歯をして時間をかけて治すべき症例だが、患者は「式までに間に合わせたい」「歯は抜きたくない」と望む。ここで、患者の希望をそのまま鵜呑みにして、医学的に無理のある治療を請け負うのが優しさだろうか。
石川院長は首を横に振る。
「私の考える『オーダーメイド』とは、患者さんの言いなりになることではありません。医学的な限界、メリットとデメリットを包み隠さず伝え、その人のライフステージに合わせた最善の妥協点も含めて提案することです。
例えば、『式までは前歯の見た目だけを整えるワイヤー矯正を行い、式が終わってから抜歯をして本格的にマウスピースで治しましょう』といった提案です。できないことはできないと言う。リスクがあるなら伝える。それが医療者としての誠実さであり、『正しさ』だと考えています」
時には、「歯を抜きたくない」という患者に対し、「あなたの骨格で抜歯をせずに並べると、口元が出てしまい、将来的に歯茎が下がって歯を失うリスクがあります」と、厳しい現実を突きつけることもある。それは一見冷たく見えるかもしれないが、患者の未来を守るための愛ある診断なのだ。
「予防」としての矯正治療と、人生のインフラ整備

石川院長が矯正治療を重視するもう一つの理由に、予防という観点がある。矯正は単に見た目を良くするだけのものではない。彼はそれを「区画整理」と「地盤改良」に例える。
「歯並びが悪い状態というのは、無秩序に家が建ち並んでいる変形地のようなものです。そこに無理やり家を建てても(被せ物をしても)、長持ちしませんし、リフォームもしにくい。また、噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な力がかかり、将来的にその歯を失う『未病』の状態になります」
50代、60代になって歯を失い、インプラントや入れ歯を検討する段階になってから矯正を始めようとしても、歯周病が進行していたり、骨の代謝が落ちていたりと、制約が非常に多くなる。
「若いうちに矯正をしておくことは、人生という長い時間を過ごすための『インフラ整備』なんです。平城京のように碁盤の目に整備された土地なら、家を建てるのも、建て替えるのも容易です。将来、もし歯が悪くなっても、土台が整っていれば最良の治療が受けられる。矯正治療は、人生のQOL(生活の質)を支えるための、最強の予防医療だと確信しています」
デジタル技術は「サボるため」ではなく「質を高めるため」に
千葉センシティ矯正歯科の特徴の一つに、高度なデジタル設備の導入がある。しかし、それらは単なる最新機器のアピールではない。
例えば、遠隔モニタリングシステム「デンタルモニタリング」。患者は自宅でスマートフォンを使って口腔内をスキャンし、AIとドクターが治療の進捗をチェックする。これにより、通院回数を減らしながらも、細やかな経過観察が可能になる。
「マウスピース矯正は、患者さん自身が装置を交換して進めていく治療です。しかし、実は『ハマっているようでハマっていない』ということがよく起こる。それがズレの蓄積となり、最終的な失敗に繋がります。AIによるモニタリングは、そのズレを早期に発見し、軌道修正するために不可欠なんです」
また、全ての患者に対し、骨の形態を立体的に把握する「CBCT(歯科用CT)」撮影を行う。歯の根が骨の中にどう収まっているかを確認せずに歯を動かすことは、羅針盤を持たずに航海に出るようなものだからだ。
「デジタル技術を使うのは、我々が楽をするためではありません。診断の精度を高め、患者さんの安全を担保し、治療の成功率を1%でも上げるためです。そこへの投資は惜しみません」
完全個室の診療室へのこだわりも同様だ。コストや効率を考えれば、パーテーションで区切っただけの半個室の方が経営的には有利だ。しかし、プライバシーへの配慮はもちろん、空調管理や感染症対策といった見えない安全を優先し、壁で仕切られた完全個室を採用した。

「千葉県の一等地であるセンシティタワーを選んだのも、ステータスのためではありません。雨に濡れずに通えるアクセスの良さ、そしてビル自体の防災基準の高さや堅牢性が、患者さんの安心に繋がるからです。大手ゼネコンが施工したビルなので内装工事費は桁違いに高くなりましたが(笑)、そこは譲れないポイントでした」
ギタリストの魂を持つ「職人」として
石川院長のキャリアを紐解くと、意外な一面が見えてくる。中学時代からエレキギターに没頭し、スティーヴ・ヴァイなどの超絶技巧ギタリストに憧れたギター少年だったのだ。
「流行りの曲を弾くよりも、誰も弾けないような難しい曲を技術で攻略することに快感を覚えるタイプでした(笑)。その『オタク気質』は、今の仕事にも通じているかもしれません」
理工学部を中退して歯学部へ入り直した異色の経歴。しかし、その探究心は歯学部時代から遺憾なく発揮された。 3年生以降のすべての試験で学年1位の成績を収め続け、その類稀なる優秀さから、全歯学部生の中から年間でわずか2名しか選出されないという名誉あるPFA(ピエール・フォシャール・アカデミー)の名を冠した賞を授与されている。
その後、大学院では博士号を取得し、基礎研究に従事して論文の書き方やエビデンスの読み解き方を徹底的に学んだ。「A先生が言っているから正しい」ではなく、「データがこう示しているから正しい」という科学的な思考プロセスは、現在の診断学の基礎となっている。
「職人気質なんでしょうね。自分が目立ちたいとか、有名になりたいという欲求はあまりないんです。それよりも、治療の精度を極めたい。難しい症例を、いかに美しく、機能的に治すか。そこに喜びを感じます」
その姿勢は、クリニック名にも表れている。「石川矯正歯科」と自分の名前を冠しなかったのは、属人化を防ぎ、組織として永続的に医療を提供し続けるためだ。
「僕が倒れたら終わり、では責任ある医療機関とは言えません。だからこそ、非常勤を含めて優秀な歯科医師を採用し、誰が担当しても高い水準の治療が提供できる仕組みを作っています。自分が輝くことよりも、患者さんが輝くこと、そしてクリニックという『箱』が地域に貢献し続けることの方が重要ですから」
千葉の地で、世界水準の医療を
千葉で生まれ育ち、父と共に竣工時のセンシティタワーを訪れた記憶を持つ石川院長。彼にとって、この場所で開業することは運命のようなものだった。

「千葉の東側や南側にお住まいの方々は、高度な矯正治療を受けるためにわざわざ東京まで通うことも多いんです。でも、千葉駅という交通の要衝に、都内と変わらない、あるいはそれ以上のクオリティを提供するクリニックがあれば、地域の皆さんの負担を減らせる。それが、私を育ててくれた地元への恩返しだと思っています」
インタビューの最後、石川院長は年間400症例以上の実績を持つ医院にのみ与えられる「ブラックダイヤモンドプロバイダー」というインビザラインのステータスについて触れた際、少し照れくさそうにこう語った。
「症例数が多いことは一つの指標にはなりますが、それ自体が目的ではありません。大切なのは、その一症例一症例の裏側に、悩みから解放された患者さんの笑顔があるかどうか。安易なブームに流されず、これからも『正しい治療』を愚直に続けていきたいと思います」
商業化が進む歯科医療の世界において、石川院長のような「頑固な職人」の存在は、患者にとって一筋の光となるだろう。 美しさだけでなく、生涯の健康を見据えた正しさを求めるなら、千葉センシティ矯正歯科の扉を叩いてみてはいかがだろうか。
そこには、あなたの人生という物語を最高のものにしようと奮闘する、頼れる「監督」が待っている。



