コンビニやレストラン、介護、建設現場……。近年、日々の中で外国籍の方々が働く姿を見かける機会が増えているのではないだろうか。今や多くの外国籍人財が様々な場所で活躍し、日本の経済や社会を支える一端を担っているのだ。そうした中、Adeccoは「特定技能外国人財紹介サービス」を通じて外国籍人財の受け入れサポートから人財の紹介、就業開始以降のサポートまで幅広くカバーしている。今回は、その取り組みやAdeccoならではの価値について、同サービスの責任者を務めるアデコ株式会社 外国人雇用推進部長の木村文幸さんに伺った。
Adeccoだからこそできること
はじめに、御社が行っている「特定技能外国人財紹介サービス」について教えてください。
2022年10月に開始した、企業による特定技能外国人の採用支援と、特定技能外国籍人財の就業や生活を支援するサービスです。
「特定技能」とは2019年に新設された在留資格です。人財を確保することが難しい状況にある介護や宿泊、農業、外食など12の産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れるために作られました。
2022年のサービス立ち上げからこれまでに特定技能外国人受け入れた企業の領域や就業した人財の傾向を教えてください。
受け入れ企業で一番多いのは介護分野で、中でも医療法人や社会福祉法人が多いです。サービス開始当初は技能実習の経験者を採用いただくことが多かったですが、今年に入ってからは実務経験の無い外国籍人財の採用も増えてきている傾向にあります。
外国籍人財からは介護分野以外にも外食分野や飲食料品製造分野がとりわけ人気があります。日本の食文化や高い衛生環境が主な理由です。また、国籍の傾向としては、採用された外国籍人財の約5割をベトナム国籍の方が占めています。ただ、ここ1年でミャンマー国籍の方が大きく増えていて、当社では介護分野で就労している特定技能外国籍人財の約4割がミャンマー国籍です。
ミャンマー出身の人財は傾向としてお年寄りに優しく接することができることが多く、介護の現場では受け入れ企業だけでなく、入居者の方々からも高い評価を得ています。また、現在、日本は円安の状況ですが、ミャンマーは母国通貨であるチャット(Kyat)の価値が下落しています。そのためミャンマーから見る円の価値は相対的に上がっているとも言えるのです。さらに、クーデターの影響でミャンマー国内の内需が冷え込み、海外移住労働を希望する人が全国民の2割とのデータもあります。その選択肢の一つとして、安全な国である印象の日本は人気があり、いま現地では日本語学習がブームになっています。
御社が外国籍人財の人財紹介サービスを提供する意義をどのように捉えていますか。
年々どの業界でも人手不足が深刻化している一方で、外国籍人財に目を向けると、特に若い世代で「日本で働きたい」と思っている方が大勢います。そういった方々と企業を結びつけることに、弊社が介在する価値があると考えています。
ただ、サービス立ち上げ当時、技能実習生の就労に関する人権問題やコンプライアンス違反が連日報道されるなど、外国籍人財の就労環境は決して良好とは言い難い状態でした。
そこで、「人財躍動化」をビジョンに掲げ、キャリア開発に関する豊富な実績を持つ当社が参入することで、市場全体の透明性や健全性を高めていくことができると考えました。当社は、外国籍人財と企業の両者の安心感を醸成していくことが何よりも大切だと考えています。「人手不足で外国籍人財の採用に興味があるけれど、どうやって受け入れたら良いかわからない」「受け入れたあと、職場に馴染んで定着するかどうか心配だ」といったような不安を持つ企業に「Adeccoがサポートしてくれるなら大丈夫」と感じていただき、最初の一歩を踏み出してもらったり、採用枠を増やしてもらったりすることが、当社の介在価値だと考えています。
企業が人財を育て、定着できるようにするための独自支援
受け入れ先企業向けに御社が取り組んでいることを教えてください。
外国籍人財を雇用するために必要な手続きや、外国籍人財の住居手配等、あらゆる付帯事項を、分かりやすく的確に、かつ迅速にサポートしています。また、受け入れが初めての企業には、人財の出身国の歴史や宗教観、働くことに対する価値観を学んでいただき、「日本人との違いを知る」ことに重きを置くダイバーシティ研修を標準サービスとして実装しています。
また、特定技能には1号と2号があるのですが、1号だと最長5年間しか滞在できません。一方で2号は、然るべき実務要件のある一段高度な在留資格であり、無期限で日本に滞在できるようになるのです。当社では、この「特定技能2号」認定に向けた育成プログラムを独自開発し、「特定技能2号」を志す外国籍人財および企業の支援を開始しております。
せっかく経験を積んだ優秀な外国籍人財が1号のまま5年で満期を迎えて帰国してしまっては、企業の人手不足における根本的な解決にはなりません。そのため当社は、企業の中核人財や幹部候補になれるような人財に育成することを最優先事項に据えた登録支援サービスを提供しています。
受け入れから、働き続けることまで見越してサポートをされているのですね。対して特定技能人財に向けてはどういったサポートを行っているのでしょうか。
就業開始後、独自に行っている支援が「日本語教育の機会」と「イベントを通じた交流」です。
まず日本語教育の機会については、日本語能力試験(JLPT)のN2までレベルアップしてもらうための日本語講座を開講し、授業料は全て無料にしています。
ビジネスレベルと言われるN2レベルまで育成するのは簡単なことではありません。当社が用意した講座を受講してもらうだけで達成できるほど甘いものではないため、当社では一人ひとりの特定技能外国籍人財にパーソナルコーチがつき、授業の予習・復習状況のチェックやコーチングを行っています。日本語学習の習慣が身に付くまでコーチが伴走することで、離脱することなく限られた期間でのレベルアップが可能になるのです。こういったパーソナルコーチのサービスをすべて無料で提供しています。
私たちがN2にこだわっているのは、それが専門職や管理職相当の実務をこなすために必要なレベルであると考えているからです。分野によって違いはありますが、特定技能2号に認定されるためは2年以上の指導や作業工程管理経験等が必要な分野もあります。時には、日本人従業員と外国籍従業員との仲介役にならなければならないケースも発生するため、業務において通訳がこなせるくらいの日本語レベルが必要ですし、日本で自立して長く暮らしていくために必要なレベルであるとも考えています。
次に、イベントを通じた交流についてです。ほぼ毎月対面や非対面のイベントを企画し、開催しています。日頃学んでいる日本語をアウトプットする実践の機会や、外国籍人財同士の横の繋がりを作る機会にもなっており、日本で働くことへの愛着心を持ってもらうために大切な場と位置付けています。
イベントには、全国各地からいろいろな企業に所属している特定技能外国籍人財が集まります。そして、同じ国の出身者だけで固まらないように、日本人も含めた多国籍のチーム分けをしてお喋りしたりゲームをしたりします。
初めて会った外国籍人財同士がすぐに意気投合し友達になれるため、日本で暮らす孤独感の解消にも繋がっているという嬉しい声ももらっています。こういったイベントを通じて、より一層このまま日本で頑張りたいという気持ちにつながり、目の前の仕事や日本語学習のモチベーションとなる好循環サイクルを生み出せていけたらと考えています。
外国籍人財の採用・就労支援で社会課題の解決へ
特定技能外国人財紹介事業では2026年までの中期ビジョンとして「外国人雇用があたりまえの世の中をつくる。」を掲げ、そのフェーズを3段階に分けています。
まずは「労働環境のあたりまえ化」です。今後、他国との人財獲得競争はより一層激しくなっていきます。そうした中で、これからの日本は、外国籍人財から選ばれる国になっていく必要があります。日本で働くことを選んでもらうため、安心・安全な労働環境を整える、分かりやすく魅力的な職務制度や評価制度を構築する、差別をなくすなど、日本人従業員と隔たりのないことが「あたりまえ」になることを実現するべく、日々取り組んでいます。
事業ローンチから2年経過した今は、次のフェーズである「外国籍人財の躍動化」に取り組み始めています。前述の通り、一定要件を満たせば永続的に日本に在住することができます。しかし、その要件ハードルは高いため、外国籍人財が自力で越えるには難易度が高く、受け入れ企業や登録支援会社によるサポートが必要不可欠です。当社は、人財派遣事業で長年蓄積してきたキャリア開発のメソッドやノウハウを活かし、外国籍人財がそれぞれのポテンシャルを発揮できるようサポートしていきます。
そして、この中期ビジョンでは最終的に「外国籍人財と共に取り組む社会課題の解決」の実現を目指しています。日本に根付いて働く外国籍人財を増やし、日本の社会課題を一緒に解決していきたいと考えています。
定量的な目標としては、2026年までに3,500人の特定技能外国籍人財の就労を支援することを目指しています。簡単な目標ではありませんが、ここまでは着実に歩んできておりますので、これからも全力で取り組んでいきます。
◎会社情報
社名:アデコ株式会社
代表取締役社長:平野 健二
設立:1985年7月29日
本社所在地:東京都千代田区霞が関3-7-1 霞が関東急ビル
資本金:55億6,000万円
従業員数:37,200名
※ 当社に所属するすべての雇用形態の従業員の合計
◎プロフィール
木村 文幸
アデコ株式会社 外国人雇用推進部 部長
2005年に新卒として入社。人財派遣部門の営業職としてトップセールスを記録し、早い段階からマネジメント業務に従事。大手企業を顧客に持つ営業部長を経て、2022年に新規事業のプロデューサーとなり、特定技能外国人の人財紹介および育成支援サービスを立ち上げる。2023年より現職。Adeccoにおける外国人雇用の責任者として主に特定技能領域のビジネス拡大、多国籍・多文化の共生社会の実現に取り組んでいる。